救国の巫女姫、誕生史

ぺきぺき

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75 巫女姫、常磐家に乗り込む

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「に、二乃子殿、アズ、本当にこれで俺は見えないんですか?」

「見えてないよ。大丈夫。でも、しゃべると声が聞こえるし、実体が消えるわけじゃないからどこかにぶつかると音になるよ。」

「東雲の満殿なら大丈夫でしょう。気配を消して、ついてきてください。」

「問題はカナ兄かな。十中八九気づくと思うけど、多分黙っていてくれると思う。」

「さあ。行きましょう!」


ーーーー


二乃子と篤は昔育った常磐家の離れにやってきた。

「二ノ、アズ。」

前に会った時よりも大分浮かない顔をした奏が出迎えた。

「師匠が奥で待ってるよ。僕も相席して大丈夫かな?」

「もちろん。」

「カナ兄、大丈夫?顔色が悪いけど?」

「そりゃ、あんな話を聞いたらね。」

前回の奏と話した時に、師匠の精神操作の影響を自分たちも受けている可能性を話した。自分のことだけだったら信じなかったが、里奈が羽月に自分との妖刀を作ってあげた話を聞いた後だったから、考えた末に信じて、精神操作をはね除ける術を自分と篤にかけてくれた。

…そういえば言ってなかったけど、リナ姉はカナ兄のガールフレンドだ。師匠も知らないかもしれない。

「二乃子、篤、よく来たな。」

涼夜は離れの一室で、待っていた。

「お久しぶりです。師匠。」

「聞きたいことがあると聞いたが?」

「はい。」

三人は席に着いた。

「九条将軍のことです。」

「…あいつがどうした?」

「行方不明になりました。アズが予知しても見つけられません。…ここにいるのではないですか?」

最初はこの質問から行くと、篤・満と相談して決めていた。

「ああ。いる。」

ーあっさり認めた!?

「なぜ?息子さんたちと会う約束をしていたはずが、急にいなくなったと聞きましたよ?もしかして、誘拐したんですか?」

「子供たちと会う約束をしているとは。ちょっと一杯飲まないか、と誘ってその後滞在している。」

「それはさぞ、積もる話があるのでしょうけども。いつまでこちらに?」

「今年いっぱいは滞在したいと。」

言わせたんだろう、クソジジイ。声にださなかった私、偉い。

「では、息子さんたちが心配していると伝えてもらえますか?」

「わかった。」

今年いっぱいの滞在、ということは大晦日に行う術に将軍が必要なのだろうか?邪魔なら北西州にでも行かせればいいのだから。

「巫覡院はどうだ?先の地震の調査はどれくらい進んでいる?」

今度は涼夜の方が探りをいれてきた。

「犯人と、その目的とやろうとしていることは察しています。動機がわかりませんが。」

二乃子と涼夜の言葉遊びにしびれを切らしたのは、奏だった。

「師匠が、全部仕組んだんですか?里奈が羽月に妖刀をあげるのも意味が分からないし、僕が羽月の転移を補助したのも今思えば意味が分からない!」

…リナ姉、羽月嫌いだしね。リナ姉に嫌われないように、カナ兄も羽月とは距離を置いていた。

「そうだと言ったらどうする?」

「え?」

「二乃子、お前はもう察していると言ったな?俺が犯人だと考えて、今日ここに来たんだろう?」


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