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56 巫女姫、まだ議論する
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リナ姉が羽月に刀を作ってあげたことにも驚きだが、羽月が結界を破ろうとしたことにも驚きだ。
もしかして、二人とも誰かに頼まれたのでは?二人が素直に頼みをきいて、それを隠すだなんて、一人しか考えられない。
二乃子はちらりと涼夜を見る。…不変だな。
「霊脈に接触したのって…巫覡でしかありえないよね?候補者も、少ないよ。」
篤が少し不安そうな顔で言った。
「どういうことですか?」
「ミッチーは最近巫覡の勉強してるけど、これはまだ未収得?自分の外の霊力を使う術は”念力”、”念動”、その応用の”妖術”だけなんだ。今のところ。」
「つまり?」
「霊脈に接触してその力を使おうとするなんて、外部の霊力を使える巫覡だけ、つまり、念力・念動・妖術を使える巫覡だけなんだ。」
「特に応用の妖術を使える巫覡は少ないです。容疑者は絞られましたね。」
そして、この場にいる4人の巫覡の内、三人が妖術を使える。
…これ、状況証拠的に師匠しか考えられない。嫌だな。なにこれ。何やってんの、師匠。師匠の後始末を私にしろって?これが運命の年?
二乃子の体内でメラメラと怒りが燃えて少し外に漏れ出る。
「あー、二ノ、落ち着いて。山籠もりで短気が治ったんじゃなかったの?」
「やばい、二ノ、僕見えないけど、すごいビシビシする。」
「三人で瞑想でもするか?滝行する?」
二乃子はひゅーっと息を吐いてメラメラしていたものをひっこめる。
「滝がいい。」
ーーーー
そうして、二乃子と満は巫覡院に帰ってきた。
「二乃子殿、肩の霊力タンクですが、長くそのままでは体に毒なのでは?」
満は忘れていなかった。ちょっと確認してもいいですか?と左の首筋に手をあてる。
「やっぱり、熱いですね…。脈打っていたし、痛いんじゃないですか?」
「そうだとは思うのですが、城下でこのタンク使おうとすると、霊脈が昇ってくるんです。」
満は考えるように顎に手をやった。
「では、霊脈の影響が薄いところに行かなければなりませんね…。都から離れれば大丈夫ですか?」
「はい。多分。」
「今度の休日は遠くに出かけましょうか。お弁当を持って。馬を出しますよ。」
「遠くに…。」
楽しそうだ。
「実は、霊脈の活性化がどの範囲まで広がっているのか調べたいのです。」
「仕事に結びつける必要もないかと思いますが…では北東州の玄関都市まで行って、一泊しましょうか。」
え、一緒に泊まるの?さすがに部屋は別だよね?…おかんのことだから一緒かもしれない。まあ、いっか。
「北東州、行ったことないです。行きたいです。」
満が笑って頷いた。
もしかして、二人とも誰かに頼まれたのでは?二人が素直に頼みをきいて、それを隠すだなんて、一人しか考えられない。
二乃子はちらりと涼夜を見る。…不変だな。
「霊脈に接触したのって…巫覡でしかありえないよね?候補者も、少ないよ。」
篤が少し不安そうな顔で言った。
「どういうことですか?」
「ミッチーは最近巫覡の勉強してるけど、これはまだ未収得?自分の外の霊力を使う術は”念力”、”念動”、その応用の”妖術”だけなんだ。今のところ。」
「つまり?」
「霊脈に接触してその力を使おうとするなんて、外部の霊力を使える巫覡だけ、つまり、念力・念動・妖術を使える巫覡だけなんだ。」
「特に応用の妖術を使える巫覡は少ないです。容疑者は絞られましたね。」
そして、この場にいる4人の巫覡の内、三人が妖術を使える。
…これ、状況証拠的に師匠しか考えられない。嫌だな。なにこれ。何やってんの、師匠。師匠の後始末を私にしろって?これが運命の年?
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「あー、二ノ、落ち着いて。山籠もりで短気が治ったんじゃなかったの?」
「やばい、二ノ、僕見えないけど、すごいビシビシする。」
「三人で瞑想でもするか?滝行する?」
二乃子はひゅーっと息を吐いてメラメラしていたものをひっこめる。
「滝がいい。」
ーーーー
そうして、二乃子と満は巫覡院に帰ってきた。
「二乃子殿、肩の霊力タンクですが、長くそのままでは体に毒なのでは?」
満は忘れていなかった。ちょっと確認してもいいですか?と左の首筋に手をあてる。
「やっぱり、熱いですね…。脈打っていたし、痛いんじゃないですか?」
「そうだとは思うのですが、城下でこのタンク使おうとすると、霊脈が昇ってくるんです。」
満は考えるように顎に手をやった。
「では、霊脈の影響が薄いところに行かなければなりませんね…。都から離れれば大丈夫ですか?」
「はい。多分。」
「今度の休日は遠くに出かけましょうか。お弁当を持って。馬を出しますよ。」
「遠くに…。」
楽しそうだ。
「実は、霊脈の活性化がどの範囲まで広がっているのか調べたいのです。」
「仕事に結びつける必要もないかと思いますが…では北東州の玄関都市まで行って、一泊しましょうか。」
え、一緒に泊まるの?さすがに部屋は別だよね?…おかんのことだから一緒かもしれない。まあ、いっか。
「北東州、行ったことないです。行きたいです。」
満が笑って頷いた。
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