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52 巫女姫、思い悩む
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二の姫が九条家に到着したのはそれから一月後だった。そして二乃子が二の姫に会えたのは夏のことだった。
「お初にお目にかかります。九条家でお世話になっております、常磐二乃子と申します。」
「初めまして、九条月と申します。」
おおー。なんというキラキラネーム。”月”と書いて”るな”と読むのか。にしても、この二の姫…。
二乃子はまじまじと月を観察した。
…なんか、霊脈に好かれてる?地面から立ちのぼる霊脈の力が月にまとわりついているのがしかと見えた。もしかして、巫覡の才能がある?
だとしたら彼女は二乃子と同じ孫巫覡だ。九条家で暮らすことは危険だし、常磐家に預けられていただろう。
そこでふと、二乃子は先日の篤の問題発言を思い出し、深くため息をついた。
ーーーー
「二乃子殿は予知はできるけど、アズほど細かく未来は見えないということであってますか。」
満は最近、どん欲に巫覡の技についてきいてくる。いやだな…まあ、巫覡について知らないからできることなんだけど。
篤は得意げに胸を張る。
「二ノはたとえ僕から予知を妨害しようとしても看破できるよ。」
「でもこの前、実力が未知数すぎて予知が効かないって。」
「秘密主義だからね。まあ二ノに限ったことじゃないけど。うちの師匠もいつも言ってるよ。『巫覡は秘密を使って強くなる』って。」
そう。だからその秘密をほじほじしようとしている満の行動は正直、マナー違反だ。
「アズは雷を使ってたよね?ほら羽月の暗殺の時。あれはもしかして”妖術”なの?」
「そう。よく勉強してるね。妖術を使える巫覡は本当に少ないんだけど、僕とあと二ノもできるよ。」
「別に予知特化ってわけじゃないんだ。」
「うん。一応治癒もできる。」
「二乃子殿は、全部できるんですよね。」
と、満は巫覡の術大辞典を示す。
「祖母殿に教えていただいたということですが、祖母殿もオールラウンダー巫覡だったのですか?」
その話は篤の前でしてほしくないな…。まあ、潮時なのかもしれないけど。
「ずっと気になってたんだけど、祖母殿って何?僕ら捨て子じゃん。祖母なんていないよ?」
「え?」
「僕たちは三つの時に常磐家からの迎えが来て、それ以来親には一度も会っていないよ。そこで縁を切られたんだ。手紙もなし。あ、もしかして、巫覡の目でおばあちゃんに会ったの?」
「二乃子殿は山中の家で、祖母殿と、4年間、修行していたんですよね?」
「違うよ。二乃子は山で、一人で修行していたんだ。『巫覡は孤独で強くなる』って師匠に言われて、ブチギレて常磐の離れを一つ半壊させたじゃないか!忘れたの?」
「アズ…。」
私の黒歴史を…。満も驚いて二乃子と篤を見比べている。
「どちらも、正しいです。私の祖母は故人です。」
「つまり…?」
「幽霊に習いました。祖母に会うまで、自分の家族のことは何一つ知らずに育ちました。」
ーーーー
「二乃子殿、ため息をつくと幸せは逃げるわよ。」
月に言われて、はっと顔をあげる。見ればよく見た笑顔で笑っている。
「おばあさま?」
「やだ、私たち、同い年よ?」
月はあははと笑っていた。
「お初にお目にかかります。九条家でお世話になっております、常磐二乃子と申します。」
「初めまして、九条月と申します。」
おおー。なんというキラキラネーム。”月”と書いて”るな”と読むのか。にしても、この二の姫…。
二乃子はまじまじと月を観察した。
…なんか、霊脈に好かれてる?地面から立ちのぼる霊脈の力が月にまとわりついているのがしかと見えた。もしかして、巫覡の才能がある?
だとしたら彼女は二乃子と同じ孫巫覡だ。九条家で暮らすことは危険だし、常磐家に預けられていただろう。
そこでふと、二乃子は先日の篤の問題発言を思い出し、深くため息をついた。
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満は最近、どん欲に巫覡の技についてきいてくる。いやだな…まあ、巫覡について知らないからできることなんだけど。
篤は得意げに胸を張る。
「二ノはたとえ僕から予知を妨害しようとしても看破できるよ。」
「でもこの前、実力が未知数すぎて予知が効かないって。」
「秘密主義だからね。まあ二ノに限ったことじゃないけど。うちの師匠もいつも言ってるよ。『巫覡は秘密を使って強くなる』って。」
そう。だからその秘密をほじほじしようとしている満の行動は正直、マナー違反だ。
「アズは雷を使ってたよね?ほら羽月の暗殺の時。あれはもしかして”妖術”なの?」
「そう。よく勉強してるね。妖術を使える巫覡は本当に少ないんだけど、僕とあと二ノもできるよ。」
「別に予知特化ってわけじゃないんだ。」
「うん。一応治癒もできる。」
「二乃子殿は、全部できるんですよね。」
と、満は巫覡の術大辞典を示す。
「祖母殿に教えていただいたということですが、祖母殿もオールラウンダー巫覡だったのですか?」
その話は篤の前でしてほしくないな…。まあ、潮時なのかもしれないけど。
「ずっと気になってたんだけど、祖母殿って何?僕ら捨て子じゃん。祖母なんていないよ?」
「え?」
「僕たちは三つの時に常磐家からの迎えが来て、それ以来親には一度も会っていないよ。そこで縁を切られたんだ。手紙もなし。あ、もしかして、巫覡の目でおばあちゃんに会ったの?」
「二乃子殿は山中の家で、祖母殿と、4年間、修行していたんですよね?」
「違うよ。二乃子は山で、一人で修行していたんだ。『巫覡は孤独で強くなる』って師匠に言われて、ブチギレて常磐の離れを一つ半壊させたじゃないか!忘れたの?」
「アズ…。」
私の黒歴史を…。満も驚いて二乃子と篤を見比べている。
「どちらも、正しいです。私の祖母は故人です。」
「つまり…?」
「幽霊に習いました。祖母に会うまで、自分の家族のことは何一つ知らずに育ちました。」
ーーーー
「二乃子殿、ため息をつくと幸せは逃げるわよ。」
月に言われて、はっと顔をあげる。見ればよく見た笑顔で笑っている。
「おばあさま?」
「やだ、私たち、同い年よ?」
月はあははと笑っていた。
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