59 / 115
51 助手、焦る
しおりを挟む
「ごめんください。」
制服の試着が終わって、ひと段落し休憩していたところに芽以はやってきた。
「芽以殿。二乃子殿、先ほどお話しした…。」
「満様のお客様ですね。どうぞ。」
芽以殿をあげてお茶を出す。三兄が、女の人を!?と彩葉の目が輝いている。…だから違うって。
「それで、お話とは。」
「実は、兄のことなのです。」
…兄?なんか嫌な予感がする。
「朝比奈博臣です。以前巫覡院に来たことがあると聞いていますが。」
あっという声が聞こえたような気がした。目の端で二乃子が目をそらすのが見えた、気がした。
博臣は以前、羽月に意識操作されて二乃子を襲い、近衛兵に捕らえられた。意識操作の疑いがあったことから、その所業は公表されていない。
しかし、凛と一花のダブル女近衛にきっちり絞められて、巫覡院と後宮は出禁になっている。
妹である芽以もその所業は知らされていないのだろう。
「もう22ですから、そろそろ婚約をと考えているのです。それで候補に九条家の姫様たちをと考えているのですけれど…。どの姫様に求婚するのがいいのか、朝比奈でも意見が分かれているのです。それで偵察を頼まれたのです。」
正直、博臣が九条家に縁付くのはほぼ不可能だ。意識操作とはいえ、九条家の不興を買っているのだから。
そこにいる五の姫も少しそわそわしている。
「それで、何を知りたいんです?」
「まず、どの姫様なら嫁に出すおつもりがありますか?当主様の代は皇后さま以外皆九条姓に残りましたが、さすがに9人いるお子さまたちを全員九条姓に残すことはないでしょう?」
「そうですね。」
「一の姫様と二の姫様、どちらかが九条家をお継ぎになるのだと思っています。二の姫は病弱だとのことですが、お嫁に出される予定はありますか?」
…そんなの俺に聞かれても。二の姫には会ったこともないのに。それに…。
ちらりと二乃子を見る。
以前満の中でくすぶっていた、”二乃子、二の姫説”は最近またくすぶり始めていた。
きっかけは、二乃子の顔立ちが皇后に、つまりは叔母上にそっくりだと気付いたことだ。目の色と髪色が巫覡色が強く、顔立ちの近さに全く気付かなかった。
そして、二乃子の性格が当主の永遠に似ていると指摘されたことだ。
二の姫に手紙を出したら、返事が来てしまったが、九条家なんだから、何かトリッキーなことをしている可能性もある。
とりあえず、二の姫は回避しておこう。
「二の姫を嫁にという話は、彼女の両親からは聞いていないです。でも、五の姫と六の姫は嫁に行きたいなら縁談を用意してやると言ってましたよ。」
さささ三兄!?という彩葉の視線を感じる。…すまん、妹たちよ。二乃子の方が大事だ。
「満殿は結婚を考えていますか?」
ーえ、俺?
「若君や姫君の結婚はまだ九条家の方々の頭にはないことだと思いますよ。」
二乃子がぐびぐびお茶を飲んでいた満におかわりを注ぎながら、助け舟をだしてくれた。
「将軍と月の姫様の恋愛結婚は有名です。そのお子さま達もご自身でお相手を選んできたと聞いています。結婚年齢は年々上がってきておりますし、一の姫様も今年19歳の働き盛りです。
まだそのようなことは考えられていないでしょう。」
二乃子はふふふっと楽しそうな顔をして笑った。…見たことない顔である。
「つまり、博臣殿が九条家の姫たちと結婚するなら、姫たち自身に選んでもらうというのが一番です。今、接触できるのは…城のいらっしゃる一の姫様ですね。一の姫様と仲良くなって、姫様たちを紹介していただくのはどうでしょう?」
…な、なんて酷なことを。暴漢犯の博臣を捕まえたのは、一の姫だぞ?
「その通りですわね!」
芽以は喜んで帰っていった。
二乃子の悪だくみが成功して嬉しそうな顔が印象的だった。…ごめんなさい、博臣殿。俺もあなたのこと、割り切れなくて嫌いなんで、同情しませんけど。
「そうそう、三兄に伝えるように頼まれたんだけど…。」
彩葉が口を開いて衝撃の発言をした。
「二の姫、北西州を出て、九条家に来るんですって。おじいさまが体調の良さを確認して連れてくることにしたって。」
「え?」
ついに疑惑の二の姫が登場する。
制服の試着が終わって、ひと段落し休憩していたところに芽以はやってきた。
「芽以殿。二乃子殿、先ほどお話しした…。」
「満様のお客様ですね。どうぞ。」
芽以殿をあげてお茶を出す。三兄が、女の人を!?と彩葉の目が輝いている。…だから違うって。
「それで、お話とは。」
「実は、兄のことなのです。」
…兄?なんか嫌な予感がする。
「朝比奈博臣です。以前巫覡院に来たことがあると聞いていますが。」
あっという声が聞こえたような気がした。目の端で二乃子が目をそらすのが見えた、気がした。
博臣は以前、羽月に意識操作されて二乃子を襲い、近衛兵に捕らえられた。意識操作の疑いがあったことから、その所業は公表されていない。
しかし、凛と一花のダブル女近衛にきっちり絞められて、巫覡院と後宮は出禁になっている。
妹である芽以もその所業は知らされていないのだろう。
「もう22ですから、そろそろ婚約をと考えているのです。それで候補に九条家の姫様たちをと考えているのですけれど…。どの姫様に求婚するのがいいのか、朝比奈でも意見が分かれているのです。それで偵察を頼まれたのです。」
正直、博臣が九条家に縁付くのはほぼ不可能だ。意識操作とはいえ、九条家の不興を買っているのだから。
そこにいる五の姫も少しそわそわしている。
「それで、何を知りたいんです?」
「まず、どの姫様なら嫁に出すおつもりがありますか?当主様の代は皇后さま以外皆九条姓に残りましたが、さすがに9人いるお子さまたちを全員九条姓に残すことはないでしょう?」
「そうですね。」
「一の姫様と二の姫様、どちらかが九条家をお継ぎになるのだと思っています。二の姫は病弱だとのことですが、お嫁に出される予定はありますか?」
…そんなの俺に聞かれても。二の姫には会ったこともないのに。それに…。
ちらりと二乃子を見る。
以前満の中でくすぶっていた、”二乃子、二の姫説”は最近またくすぶり始めていた。
きっかけは、二乃子の顔立ちが皇后に、つまりは叔母上にそっくりだと気付いたことだ。目の色と髪色が巫覡色が強く、顔立ちの近さに全く気付かなかった。
そして、二乃子の性格が当主の永遠に似ていると指摘されたことだ。
二の姫に手紙を出したら、返事が来てしまったが、九条家なんだから、何かトリッキーなことをしている可能性もある。
とりあえず、二の姫は回避しておこう。
「二の姫を嫁にという話は、彼女の両親からは聞いていないです。でも、五の姫と六の姫は嫁に行きたいなら縁談を用意してやると言ってましたよ。」
さささ三兄!?という彩葉の視線を感じる。…すまん、妹たちよ。二乃子の方が大事だ。
「満殿は結婚を考えていますか?」
ーえ、俺?
「若君や姫君の結婚はまだ九条家の方々の頭にはないことだと思いますよ。」
二乃子がぐびぐびお茶を飲んでいた満におかわりを注ぎながら、助け舟をだしてくれた。
「将軍と月の姫様の恋愛結婚は有名です。そのお子さま達もご自身でお相手を選んできたと聞いています。結婚年齢は年々上がってきておりますし、一の姫様も今年19歳の働き盛りです。
まだそのようなことは考えられていないでしょう。」
二乃子はふふふっと楽しそうな顔をして笑った。…見たことない顔である。
「つまり、博臣殿が九条家の姫たちと結婚するなら、姫たち自身に選んでもらうというのが一番です。今、接触できるのは…城のいらっしゃる一の姫様ですね。一の姫様と仲良くなって、姫様たちを紹介していただくのはどうでしょう?」
…な、なんて酷なことを。暴漢犯の博臣を捕まえたのは、一の姫だぞ?
「その通りですわね!」
芽以は喜んで帰っていった。
二乃子の悪だくみが成功して嬉しそうな顔が印象的だった。…ごめんなさい、博臣殿。俺もあなたのこと、割り切れなくて嫌いなんで、同情しませんけど。
「そうそう、三兄に伝えるように頼まれたんだけど…。」
彩葉が口を開いて衝撃の発言をした。
「二の姫、北西州を出て、九条家に来るんですって。おじいさまが体調の良さを確認して連れてくることにしたって。」
「え?」
ついに疑惑の二の姫が登場する。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説


五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?


愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。

世話焼き令息とズボラな巫女姫の怪異まみれの冒険記
ぺきぺき
ファンタジー
とある東洋の島国の名門貴族家のエリート令息である満(みつる)は、文武両道の将来を期待された若君であった。しかし、何でも器用にこなすが故の悩みを抱え、将来に悩んでいたある日、人生をかけて愛するべき相手と出会った。
彼女はまだ10代の若さで国を巡って邪を払う、最強の巫女姫様だった。
エリート令息が規格外(にズボラ)の巫女姫をお世話して旅をしながら各地の怪異や問題を解決するお話。
ー---
恋愛は遅々として進まないので、ファンタジーです。笑
執筆が完了済みの二章を公開します。その後、一度完結にしますが、続きを書ければまた投稿します。
第一章 夜市に浮かぶ火の玉 全8話
第二章 気の早い雪女 全7話
『救国の巫女姫、誕生史』の続編ではありますが、読んでいなくても問題ないです。

素直になる魔法薬を飲まされて
青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。
王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。
「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」
「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」
わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。
婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。
小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる