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45 助手、トイレ掃除をする
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「昨日は大変だったね。巫女姫様のおかげでどうにかなったけど。」
「大きな被害がなかったのが幸いでしたね。これも巫女姫様のおかげでしょう。」
「…巫女姫って、二乃子殿のことですか?」
昨日の一件から、二乃子は巫女姫様と特に平民出身の官吏たちに崇められている。確かに昨日は姫のごとく綺麗だった。
「お、新人のトイレ掃除、今年もやってるのか?」
外から声がする。
「なんでも、今年は上位5人が全員トイレ掃除に回されたらしい。」
「え、問題児なのか?」
「え、トイレ掃除って問題児の仕事なの!?」
驚いた楓太が掃除の手を止めた。
「永遠官吏もトイレ掃除させられたって聞きました。」
ぼそっとフォローしておく。
「なんだ!名官吏への登竜門だね!がんばるぞ!」
楓太は張り切って手を動かすが、蓮太郎は自嘲気味にふっと笑って小声でつぶやいた。
「つまりは悪目立ちする新人へのいじめです。」
そう。無名の首席、初めて上位三席の内の二席を占めた女官吏、国試専門塾からの初めての合格者、そして、初めてのハーフで九条家の御曹司。一番目立つ5人が上位5席を占めてしまったのだ。
「お、ミッチー、本当にトイレ掃除してる。」
トイレの窓を開けて顔を出したのは篤だ。
「アズ、今日巫覡院での勤務日だっけ?」
「昨日の震源調査で呼ばれたんだ。こんな時にミッチーはトイレ掃除だし。」
「面目ない。」
確かに二乃子は寝食忘れそうだし、研修が終わったら様子を見に行かないと。
「一応伝えておこうと思うんだけど、二ノ、多分ミッチーがいないのをいいことに、巫覡院に連泊して夜通し働こうとすると思う。ミッチーも徹夜続きだろうけど、ちょっと気にかけてやって。」
「…俺がいない間は巫覡院に泊まらない約束なのに。…ていうか俺徹夜が続くの?」
「教えてあげたんだから、一生懸命手を動かしなよ。」
じゃ。と言って篤は去っていった。
「満殿、今の方は?」
「巫覡院に週一で来ている巫覡の方で、予知が得意なんです。」
満もさっきまで以上に手を動かし始めた。
ーーーー
研修最終日、満は巫覡院で仕事をしながら、新しく巫覡院の居間に入荷したソファで毛布にくるまって丸くなって眠っている二乃子を眺めた。
「本当に、連日徹夜だった…。」
書庫から巫覡院に移動する前に、同じく黒い隈をこさえた楓太に言われたことを思い出す。
『巫女姫様って、永遠官吏に似てるね!永遠官吏もさ、ほっとくとずっと仕事して寝ないからよく旦那さんに寝室に引きずられて行ってたよ。』
言われて、そうかもしれないと思った。そして二乃子の世話を焼く自分も、よくよく考えたら誠二にそっくりではないか。
「まあ、好きでやってるからいいんだよ。」
満は頷きながら手を動かす。
そして研修を終え、満は無事に約束通りに巫覡院に配属された。
「大きな被害がなかったのが幸いでしたね。これも巫女姫様のおかげでしょう。」
「…巫女姫って、二乃子殿のことですか?」
昨日の一件から、二乃子は巫女姫様と特に平民出身の官吏たちに崇められている。確かに昨日は姫のごとく綺麗だった。
「お、新人のトイレ掃除、今年もやってるのか?」
外から声がする。
「なんでも、今年は上位5人が全員トイレ掃除に回されたらしい。」
「え、問題児なのか?」
「え、トイレ掃除って問題児の仕事なの!?」
驚いた楓太が掃除の手を止めた。
「永遠官吏もトイレ掃除させられたって聞きました。」
ぼそっとフォローしておく。
「なんだ!名官吏への登竜門だね!がんばるぞ!」
楓太は張り切って手を動かすが、蓮太郎は自嘲気味にふっと笑って小声でつぶやいた。
「つまりは悪目立ちする新人へのいじめです。」
そう。無名の首席、初めて上位三席の内の二席を占めた女官吏、国試専門塾からの初めての合格者、そして、初めてのハーフで九条家の御曹司。一番目立つ5人が上位5席を占めてしまったのだ。
「お、ミッチー、本当にトイレ掃除してる。」
トイレの窓を開けて顔を出したのは篤だ。
「アズ、今日巫覡院での勤務日だっけ?」
「昨日の震源調査で呼ばれたんだ。こんな時にミッチーはトイレ掃除だし。」
「面目ない。」
確かに二乃子は寝食忘れそうだし、研修が終わったら様子を見に行かないと。
「一応伝えておこうと思うんだけど、二ノ、多分ミッチーがいないのをいいことに、巫覡院に連泊して夜通し働こうとすると思う。ミッチーも徹夜続きだろうけど、ちょっと気にかけてやって。」
「…俺がいない間は巫覡院に泊まらない約束なのに。…ていうか俺徹夜が続くの?」
「教えてあげたんだから、一生懸命手を動かしなよ。」
じゃ。と言って篤は去っていった。
「満殿、今の方は?」
「巫覡院に週一で来ている巫覡の方で、予知が得意なんです。」
満もさっきまで以上に手を動かし始めた。
ーーーー
研修最終日、満は巫覡院で仕事をしながら、新しく巫覡院の居間に入荷したソファで毛布にくるまって丸くなって眠っている二乃子を眺めた。
「本当に、連日徹夜だった…。」
書庫から巫覡院に移動する前に、同じく黒い隈をこさえた楓太に言われたことを思い出す。
『巫女姫様って、永遠官吏に似てるね!永遠官吏もさ、ほっとくとずっと仕事して寝ないからよく旦那さんに寝室に引きずられて行ってたよ。』
言われて、そうかもしれないと思った。そして二乃子の世話を焼く自分も、よくよく考えたら誠二にそっくりではないか。
「まあ、好きでやってるからいいんだよ。」
満は頷きながら手を動かす。
そして研修を終え、満は無事に約束通りに巫覡院に配属された。
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