救国の巫女姫、誕生史

ぺきぺき

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44 助手、おかん活動がはかどる

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地面はしばらくの間揺れ続け、やがて式典の間の一点に向けて収束していった。

そう、二乃子が立っている中央付近だ。

揺れが収まると、二乃子は錫杖で体を支えながら背筋を伸ばそうとして、ふらりと前に倒れそうになった。満は自分の座席を飛び出して、二乃子に駆け寄り、支える。

「二乃子!」

「み、満殿。」

「大丈夫ですか?ゆっくり膝をついて。」

一緒にしゃがみこみながら顔色を窺うと、真っ青だ。

周りでは人々が恐る恐る顔をあげる。宇宙と千尋にかばわれていた帝も素早く立ち上がり、指示を出す。

「式典はこれにて終了とする。各長は部署に戻り被害状況を報告しろ。新人たちは近衛大将の指示に従え。」

宇宙が二乃子と満の下へ歩み寄ってくる。

「二乃子は俺が運ぼう。満は一度新人の列に戻れ。どうせ今日は休みになるだろうから、後で後宮で合流しよう。」

「はい。」

「持ち上げるぞ。」

そう言って宇宙は二乃子をいわゆるお姫様抱っこで抱き上げ、帝に続いて奥へと下がった。


ーーーー


宇宙の言った通り、その日から研修をスタートさせるはずだった新人官吏たちは急遽休日扱いとなった。楓太と蓮太郎に『巫女様によろしく。』と送られ、満は後宮へやってきた。

どうやら楓太と蓮太郎の目にも、地震を押さえたのは二乃子だとわかったらしい。ということは、あの場にいたみんながそう思っただろう。

皇后の甥である満は、あっさりと後宮に通された。

衣装を楽な服に着替えた二乃子は大きなソファーで横になっていた。

「二乃子殿?大丈夫ですか?」

パッと目を開いた二乃子が起き上がってきた。

「あ、まだ横になっていて大丈夫ですよ?ちょっと失礼しますね。」

半ば無理やり二乃子を寝かしなおした後、額に手をあてて熱を確認する。

「ちょっと熱っぽいですね。氷嚢を用意しましょうか?」

「え、ちょっと寒いからいやです。」

「じゃあ毛布を。」

侍女にお茶を頼んで、二乃子には毛布を重ねがける。


「…お前たち、仲がいいな。」

宇宙が帝を連れて部屋に現れた時には、逆に二乃子に暑いと毛布を二枚捨てられたところだった。

「城内は怪我人が数人出たのと、ボヤ騒ぎがあった以外は特に混乱はないようだ。」

「二乃子があの地震をおさめてくれたように見えたが…あれはいったい?」

「霊脈をご存じですか?地下を巡っている霊的な存在に力を与える脈なのですが、一定の周期で力が強まり、あのような地震を起こします。」

「では、自然現象なのか?」

「常磐家では霊脈の強まりは逐次報告されており、あのような地震は突然は起こりません。」

「人為的、なのか?」

「もしくは、夏の結界破損が何か影響しているのかも。調べてみないことには。」



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