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43 雑用係、助手に昇格する
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冬が本格的に訪れ、国試も終わり、年が明けた。
満は無事に国試に合格し、この年賀の式典で官吏と認められる。支給された式典用の官吏服に袖を通し、髪形を整える。
身だしなみの整え方は、母仕込みだが、完璧にやると目立ちすぎるので控えめに。
…今日から俺も立派な官吏だ。もう巫覡院の雑用係なんて言わせない。
そうして屋敷を出て待っていると、後ろから二乃子と彩葉の声がして振り返った。
「二乃子殿、歩きにくかったりしない?」
「大丈夫です。あ、でも頭が重いです。」
「どれぐらい?首落ちそう?」
「首は落ちないです。」
二乃子は薄い色合いの黒髪を緩く結い上げ、かんざしを二本さしていた。衣装は帝から下賜された赤紫の布を用い、腰に銀糸と白いレースで飾りをほどこした帯を巻いて華奢なスタイルが際立っていた。
化粧も華やかで、もともと綺麗なのだが、さらに綺麗というか、なんていえばいいんだろう…。
「あ、三兄!見て!感想は?」
「あ、うん。すごい似合ってる。…似合ってますよ、二乃子殿。」
彩葉が呆れた目を向けてくる。
「わあ、二乃子殿、綺麗ですね!きっと式典の話題をさらいますよ!」
さらに後ろからやってきた弟の垂はいとも簡単に二乃子をほめていた。
ーーーー
「あ、満、こっちこっち!」
式典会場では国試合格者全員の席が用意されていた。今年は女性の合格者が史上最も多く、合格者の一割におよんだ。また、最前列に席を用意される上位合格者5名の内の2名が女性であり、今年は女性の年といった印象である。
「楓太殿。」
入場した満を呼んだのは、今回首席合格の少年・楓太だ。国試ほど大規模な試験となると、事前に首席で合格しそうな人物の名前は聞こえてくるが、彼は全くの無名で今回多くの人を驚かせた。
年は満の一つ下で今年15歳だ。なんでも北西州の出身で永遠伯母上と面識があるらしく、試験会場でものすごく話しかけられた。
「満は五位だよね?そこだよ。あ、蓮太郎!」
眼鏡をかけた切れ長の目の青年がこちらに歩いてくる。彼は南東州で九条家が開設した塾の学生で、塾からの初めての合格者である。ちなみに今年の四位だ。
年は満より五つほど年上らしいが、試験期間中よく話していた。
まさか、親しくしていた受験者がそろって上位合格しているとは…これが九条家の血が持つという良縁をひっぱる力か…。
「上位5人が最前列に並んで今年の顔になるわけだね~。ブサイク5人並んでたら今年の新人はブサイクだって思われちゃうのかな?」
何言ってるんだ、楓太殿。
「今年は満殿がいるからその心配はありませんね。」
「蓮太郎もかっこいいよ!」
ーーーー
式典は厳かに始まり、つつがなく進められた。帝の言葉から始まり、各部署の長が一人ずつ帝に言葉を賜る。
新参の二乃子は一番最後に登場した。ほうっとその場のみんなが小さな声をあげ、目を奪われた。
女性の参加者たちの目がキラキラしているのが満の席からでもわかった。女性官吏が増えるに伴って、この年賀の式典に招待される女性も増えた。
そこで、年々式典で長たちが着る衣装は話題を集め、時には流行を作った。…二乃子の衣装も流行るかもな。彩葉も喜びそうだ。
二乃子は一歩ずつ帝の下へと歩みを進め、所定の位置で礼をして膝をついた。
…がなぜかすぐに立ち上がって何もないところから錫杖をつかんだ。
次の瞬間。
地面が大きく揺れた。
満は無事に国試に合格し、この年賀の式典で官吏と認められる。支給された式典用の官吏服に袖を通し、髪形を整える。
身だしなみの整え方は、母仕込みだが、完璧にやると目立ちすぎるので控えめに。
…今日から俺も立派な官吏だ。もう巫覡院の雑用係なんて言わせない。
そうして屋敷を出て待っていると、後ろから二乃子と彩葉の声がして振り返った。
「二乃子殿、歩きにくかったりしない?」
「大丈夫です。あ、でも頭が重いです。」
「どれぐらい?首落ちそう?」
「首は落ちないです。」
二乃子は薄い色合いの黒髪を緩く結い上げ、かんざしを二本さしていた。衣装は帝から下賜された赤紫の布を用い、腰に銀糸と白いレースで飾りをほどこした帯を巻いて華奢なスタイルが際立っていた。
化粧も華やかで、もともと綺麗なのだが、さらに綺麗というか、なんていえばいいんだろう…。
「あ、三兄!見て!感想は?」
「あ、うん。すごい似合ってる。…似合ってますよ、二乃子殿。」
彩葉が呆れた目を向けてくる。
「わあ、二乃子殿、綺麗ですね!きっと式典の話題をさらいますよ!」
さらに後ろからやってきた弟の垂はいとも簡単に二乃子をほめていた。
ーーーー
「あ、満、こっちこっち!」
式典会場では国試合格者全員の席が用意されていた。今年は女性の合格者が史上最も多く、合格者の一割におよんだ。また、最前列に席を用意される上位合格者5名の内の2名が女性であり、今年は女性の年といった印象である。
「楓太殿。」
入場した満を呼んだのは、今回首席合格の少年・楓太だ。国試ほど大規模な試験となると、事前に首席で合格しそうな人物の名前は聞こえてくるが、彼は全くの無名で今回多くの人を驚かせた。
年は満の一つ下で今年15歳だ。なんでも北西州の出身で永遠伯母上と面識があるらしく、試験会場でものすごく話しかけられた。
「満は五位だよね?そこだよ。あ、蓮太郎!」
眼鏡をかけた切れ長の目の青年がこちらに歩いてくる。彼は南東州で九条家が開設した塾の学生で、塾からの初めての合格者である。ちなみに今年の四位だ。
年は満より五つほど年上らしいが、試験期間中よく話していた。
まさか、親しくしていた受験者がそろって上位合格しているとは…これが九条家の血が持つという良縁をひっぱる力か…。
「上位5人が最前列に並んで今年の顔になるわけだね~。ブサイク5人並んでたら今年の新人はブサイクだって思われちゃうのかな?」
何言ってるんだ、楓太殿。
「今年は満殿がいるからその心配はありませんね。」
「蓮太郎もかっこいいよ!」
ーーーー
式典は厳かに始まり、つつがなく進められた。帝の言葉から始まり、各部署の長が一人ずつ帝に言葉を賜る。
新参の二乃子は一番最後に登場した。ほうっとその場のみんなが小さな声をあげ、目を奪われた。
女性の参加者たちの目がキラキラしているのが満の席からでもわかった。女性官吏が増えるに伴って、この年賀の式典に招待される女性も増えた。
そこで、年々式典で長たちが着る衣装は話題を集め、時には流行を作った。…二乃子の衣装も流行るかもな。彩葉も喜びそうだ。
二乃子は一歩ずつ帝の下へと歩みを進め、所定の位置で礼をして膝をついた。
…がなぜかすぐに立ち上がって何もないところから錫杖をつかんだ。
次の瞬間。
地面が大きく揺れた。
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