29 / 115
26 新米巫覡、思いつく
しおりを挟む
「おかえり、二ノ、ミッチー。」
城に帰り着いたのは夕方。隣で満が籠を縁側におろす。
「今日の一般、大変だったよ!すごい人数が来てさ!」
篤が前回の勤務で占星を披露し、それが当たるもんだから、恋占いしてほしい女官たちが押し寄せたのだ。
「占い目当ての人には帰ってもらったよー。僕の占い、すごい当たるからさ。」
占星は予知を極める篤にとっては基本中の基本だ。
「そうして。」
二乃子は摘んできた草花をつるしてドライフラワーにするために準備を始める。
「乾燥させるの?ちょっと僕ももらっていい?」
「だめ。」
ケチだなーと篤は縁側に座り込む。
「…篤殿はそろそろ帰る時間では?」
「え、ミッチー、僕のこと追い出したいの?」
どうやら満は篤のことが苦手らしく、三人でいると気まずそうにして口数も少ない。
…篤の口数が多いだけかもしれない。
「はいはい。僕も帰りますよ。」
篤が立ち上がる。
「アズ。」
「ん?」
「羽月とまだつながりある?」
篤がちょっと嫌そうな顔をした。ーその気持ち、よくわかる。
「そりゃ、まあね。羽月がどうしたの?」
「どのくらい、今能力があるか、わかる?」
「わからない…呪術使いは秘密主義者だからね…でも相当やばそうな実験してるよ。」
篤が真剣な顔をする。
「羽月に仕事依頼するのはやめた方がいいよ。二乃子、年々羽月に嫌われて行ってるから。」
会っていないのに嫌われるのはなぜだ。まあ、嫌われていることは察していた。
「まあ、間違いなく、当代一の呪術のスペシャリストだよ。調べようか?」
「お願い。」
ーーーー
篤が帰った後、満の尋問が始まった。
「羽月とはだれですか?なぜ急にそのような話を?」
「羽月は、私やアズと同じく師匠に師事していた巫覡です。まあ、呪術しかできないので、正しくは巫覡ではないのですが。」
巫覡は基礎5項目ができて初めて一人前と認められる。
「博臣殿の意識操作をしていた犯人です。」
「え!それいつから気づいて!?なぜ言わないんですか!?」
「現行犯で捕まえ損ねましたからね。それに私のこと毛嫌いしていたので、ただの嫌がらせだとも思っていたので。」
「嫌がらせって。」
「ただ、今回、アズの成長ぶりをみて思ったんです。4年前の時点ですでに私を凌ぐ呪術の腕前があった羽月なら…」
「二乃子殿の知らない術を開発しているかもしれない?」
「はい。」
二人の脳裏に浮かんだのは、赤子のまま成長しない第二王子だった。
ーーーー
「影汰を預かりたい?」
そう言うと陛下は驚いたように目をみはった。
「巫覡院でか?」
「いえ、それは無理だと満殿に言われたので、九条邸で預かります。その際、乳母もつけず、王子だけを預けていただきたいのです。」
「九条家なら安心だが、なぜ?乳母に問題でも?」
二乃子は頷いた。
「もし、第二王子に呪術がかけられていると仮定したら、あのように不自然な術、最初にかけた術だけでは維持できないと思うのです。」
「継続して術がかけられていると。しかし、身の回りの世話は身元のはっきりしたものに任せている。」
「先日、私をおそった朝比奈博臣殿を覚えていらっしゃいますか?あれから、女性を襲うような衝動はかけらもわいてこないと大変反省されています。おそらく意識操作をされていたのではと。」
「身元が確かでも意識を操作されていては意味がない、な。」
「そこで、今の環境から完全に王子を切り離したいのです。」
正直これでうまくいかなかったらお手上げだ。
「私の方で、意識操作されている可能性のある人物をあらいます。」
城に帰り着いたのは夕方。隣で満が籠を縁側におろす。
「今日の一般、大変だったよ!すごい人数が来てさ!」
篤が前回の勤務で占星を披露し、それが当たるもんだから、恋占いしてほしい女官たちが押し寄せたのだ。
「占い目当ての人には帰ってもらったよー。僕の占い、すごい当たるからさ。」
占星は予知を極める篤にとっては基本中の基本だ。
「そうして。」
二乃子は摘んできた草花をつるしてドライフラワーにするために準備を始める。
「乾燥させるの?ちょっと僕ももらっていい?」
「だめ。」
ケチだなーと篤は縁側に座り込む。
「…篤殿はそろそろ帰る時間では?」
「え、ミッチー、僕のこと追い出したいの?」
どうやら満は篤のことが苦手らしく、三人でいると気まずそうにして口数も少ない。
…篤の口数が多いだけかもしれない。
「はいはい。僕も帰りますよ。」
篤が立ち上がる。
「アズ。」
「ん?」
「羽月とまだつながりある?」
篤がちょっと嫌そうな顔をした。ーその気持ち、よくわかる。
「そりゃ、まあね。羽月がどうしたの?」
「どのくらい、今能力があるか、わかる?」
「わからない…呪術使いは秘密主義者だからね…でも相当やばそうな実験してるよ。」
篤が真剣な顔をする。
「羽月に仕事依頼するのはやめた方がいいよ。二乃子、年々羽月に嫌われて行ってるから。」
会っていないのに嫌われるのはなぜだ。まあ、嫌われていることは察していた。
「まあ、間違いなく、当代一の呪術のスペシャリストだよ。調べようか?」
「お願い。」
ーーーー
篤が帰った後、満の尋問が始まった。
「羽月とはだれですか?なぜ急にそのような話を?」
「羽月は、私やアズと同じく師匠に師事していた巫覡です。まあ、呪術しかできないので、正しくは巫覡ではないのですが。」
巫覡は基礎5項目ができて初めて一人前と認められる。
「博臣殿の意識操作をしていた犯人です。」
「え!それいつから気づいて!?なぜ言わないんですか!?」
「現行犯で捕まえ損ねましたからね。それに私のこと毛嫌いしていたので、ただの嫌がらせだとも思っていたので。」
「嫌がらせって。」
「ただ、今回、アズの成長ぶりをみて思ったんです。4年前の時点ですでに私を凌ぐ呪術の腕前があった羽月なら…」
「二乃子殿の知らない術を開発しているかもしれない?」
「はい。」
二人の脳裏に浮かんだのは、赤子のまま成長しない第二王子だった。
ーーーー
「影汰を預かりたい?」
そう言うと陛下は驚いたように目をみはった。
「巫覡院でか?」
「いえ、それは無理だと満殿に言われたので、九条邸で預かります。その際、乳母もつけず、王子だけを預けていただきたいのです。」
「九条家なら安心だが、なぜ?乳母に問題でも?」
二乃子は頷いた。
「もし、第二王子に呪術がかけられていると仮定したら、あのように不自然な術、最初にかけた術だけでは維持できないと思うのです。」
「継続して術がかけられていると。しかし、身の回りの世話は身元のはっきりしたものに任せている。」
「先日、私をおそった朝比奈博臣殿を覚えていらっしゃいますか?あれから、女性を襲うような衝動はかけらもわいてこないと大変反省されています。おそらく意識操作をされていたのではと。」
「身元が確かでも意識を操作されていては意味がない、な。」
「そこで、今の環境から完全に王子を切り離したいのです。」
正直これでうまくいかなかったらお手上げだ。
「私の方で、意識操作されている可能性のある人物をあらいます。」
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説


五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?


愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

世話焼き令息とズボラな巫女姫の怪異まみれの冒険記
ぺきぺき
ファンタジー
とある東洋の島国の名門貴族家のエリート令息である満(みつる)は、文武両道の将来を期待された若君であった。しかし、何でも器用にこなすが故の悩みを抱え、将来に悩んでいたある日、人生をかけて愛するべき相手と出会った。
彼女はまだ10代の若さで国を巡って邪を払う、最強の巫女姫様だった。
エリート令息が規格外(にズボラ)の巫女姫をお世話して旅をしながら各地の怪異や問題を解決するお話。
ー---
恋愛は遅々として進まないので、ファンタジーです。笑
執筆が完了済みの二章を公開します。その後、一度完結にしますが、続きを書ければまた投稿します。
第一章 夜市に浮かぶ火の玉 全8話
第二章 気の早い雪女 全7話
『救国の巫女姫、誕生史』の続編ではありますが、読んでいなくても問題ないです。

【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。

素直になる魔法薬を飲まされて
青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。
王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。
「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」
「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」
わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。
婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。
小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる