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24 雑用係、ライバルが現れる
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巫覡院の縁側では、咲が算数の勉強をしていた。篤を見て驚いて隠れようとする。
「わー!君、見事な獣憑きだね!」
が、無理だった。間近でまじまじと観察されて固まっている。
「篤殿、咲が困っているのでやめてください!」
慌てて先を引き離すと、咲は満の後ろに隠れた。
「咲ちゃんっていうんだ。すごい巫覡としての才能も有りそうだし、ニノに巫覡の術も習うといいよ。」
…二ノってまさか。
ちょうどその時、奥から二乃子が出てきた。
「満殿、おかえりなさい。巫覡の方が…?もしかして、アズ?」
「二ノ、久しぶり!元気だった?」
「久しぶりだね。予知の上手い巫覡を頼んだけど、まさか本当にアズが来るとは。
全然わからなかった。…もしかして予知妨害の術、できたの?」
「そうなんだ!」
親し気に二人が会話を始めるのを少し慌てて止める。
「お二人はお知り合いなんですか?」
「ああ。私とアズは常磐家で同じ師匠についていたんです。年齢も同じなので、いわゆる幼馴染ってやつですね。」
お、幼馴染。二乃子は常磐家から離して育てられたと聞いていたから、そんな知り合いが常磐家にいるとは思いもしなかった。
「僕は二ノのこと、幼馴染だと思ってたけど、二ノも僕のこと幼馴染だと思ってくれてたんだね。」
篤が感慨深いとでもいうように腕を組んで頷いた。二乃子の方は顔をしかめる。
「どういうこと?」
「だって、二乃子が常磐家を出てからの4年間。一通の手紙もくれなかったじゃないか!僕たちは君の居場所なんて知らなかったし、手紙も出せるわけないのに!」
「あー。」
二乃子の忘れてました、という顔。
「師匠に聞かなかったの?」
「教えてくれるわけないじゃん!『巫覡は孤独で強くなる』とかいうふざけたあれ、言い出したのは師匠だから!」
二乃子と篤の師匠…誰だ?
「お二人の師匠ってどなたですか?」
二乃子がきょとんとした顔をした。
「聞いてませんか?九条将軍の友人でもある、常磐涼夜です。」
「師匠は派閥なんて持ってないからね。僕らは常磐家の中での力は持ってないけど、巫覡としての力は群を抜いてるよ。」
あ、涼夜殿に師事していたのか。ちょっと安心した。
篤は二乃子となれなれしく肩を組む。
「まあ、また二ノアズの最強コンピ復活で巫覡院を盛り上げて行こうよ!」
…最強コンビって、俺は?
ーーーー
篤は、予知・予見のスペシャリストだった。
「巫覡院の結界に予知の効果を付与?」
まず、二乃子が依頼したのはこれだった。
以前、二乃子が巫覡院に張った結界は登録していない人物が訪れると連動した鈴がチリンと鳴って訪れを知らせる。
しかし、この前の博臣の一軒から、登録している人物であっても何者かに意識を乗っ取られ、巫覡院を襲う可能性を危惧したわけだ。
「害意を持った人が近づいたら激しく警告音が鳴るようにしたいの。私が予知を常時展開してもいいけど、他のことに集中したいし。」
「二乃子が術をかけると対二乃子の敵を見逃す可能性もあるし、か。わかったよ。」
篤も風呂敷から鈴のついたハンドベルのようなものを出した。
二乃子の物がシャリンシャリンと鳴るのに対して、こちらはコロンコロンと鳴った。
それを咲が聞くと、予知を付与しやすいように工夫された鈴だと言っていた。…鈴の音で変わるものなのか?
コロンコロンという鈴の音とともに結界が薄緑色に光る。
「これでよし、と。」
篤は巫覡院の鈴に自分の鈴をたして、二乃子を振り返った。
二乃子が興味深そうに結界と鈴を眺める。
「問題なさそう。腕をあげた?」
「そりゃ、4年前と一緒にしないでよね!でも、この結界も、なんというか省エネで、効率がすごくいいよね?結界の巫覡たち、驚くんじゃない?」
二乃子は考えるように顎に手をやっている。
…二乃子の相棒の座、取られたのでは?と満は背中に変な汗をかいた。
「わー!君、見事な獣憑きだね!」
が、無理だった。間近でまじまじと観察されて固まっている。
「篤殿、咲が困っているのでやめてください!」
慌てて先を引き離すと、咲は満の後ろに隠れた。
「咲ちゃんっていうんだ。すごい巫覡としての才能も有りそうだし、ニノに巫覡の術も習うといいよ。」
…二ノってまさか。
ちょうどその時、奥から二乃子が出てきた。
「満殿、おかえりなさい。巫覡の方が…?もしかして、アズ?」
「二ノ、久しぶり!元気だった?」
「久しぶりだね。予知の上手い巫覡を頼んだけど、まさか本当にアズが来るとは。
全然わからなかった。…もしかして予知妨害の術、できたの?」
「そうなんだ!」
親し気に二人が会話を始めるのを少し慌てて止める。
「お二人はお知り合いなんですか?」
「ああ。私とアズは常磐家で同じ師匠についていたんです。年齢も同じなので、いわゆる幼馴染ってやつですね。」
お、幼馴染。二乃子は常磐家から離して育てられたと聞いていたから、そんな知り合いが常磐家にいるとは思いもしなかった。
「僕は二ノのこと、幼馴染だと思ってたけど、二ノも僕のこと幼馴染だと思ってくれてたんだね。」
篤が感慨深いとでもいうように腕を組んで頷いた。二乃子の方は顔をしかめる。
「どういうこと?」
「だって、二乃子が常磐家を出てからの4年間。一通の手紙もくれなかったじゃないか!僕たちは君の居場所なんて知らなかったし、手紙も出せるわけないのに!」
「あー。」
二乃子の忘れてました、という顔。
「師匠に聞かなかったの?」
「教えてくれるわけないじゃん!『巫覡は孤独で強くなる』とかいうふざけたあれ、言い出したのは師匠だから!」
二乃子と篤の師匠…誰だ?
「お二人の師匠ってどなたですか?」
二乃子がきょとんとした顔をした。
「聞いてませんか?九条将軍の友人でもある、常磐涼夜です。」
「師匠は派閥なんて持ってないからね。僕らは常磐家の中での力は持ってないけど、巫覡としての力は群を抜いてるよ。」
あ、涼夜殿に師事していたのか。ちょっと安心した。
篤は二乃子となれなれしく肩を組む。
「まあ、また二ノアズの最強コンピ復活で巫覡院を盛り上げて行こうよ!」
…最強コンビって、俺は?
ーーーー
篤は、予知・予見のスペシャリストだった。
「巫覡院の結界に予知の効果を付与?」
まず、二乃子が依頼したのはこれだった。
以前、二乃子が巫覡院に張った結界は登録していない人物が訪れると連動した鈴がチリンと鳴って訪れを知らせる。
しかし、この前の博臣の一軒から、登録している人物であっても何者かに意識を乗っ取られ、巫覡院を襲う可能性を危惧したわけだ。
「害意を持った人が近づいたら激しく警告音が鳴るようにしたいの。私が予知を常時展開してもいいけど、他のことに集中したいし。」
「二乃子が術をかけると対二乃子の敵を見逃す可能性もあるし、か。わかったよ。」
篤も風呂敷から鈴のついたハンドベルのようなものを出した。
二乃子の物がシャリンシャリンと鳴るのに対して、こちらはコロンコロンと鳴った。
それを咲が聞くと、予知を付与しやすいように工夫された鈴だと言っていた。…鈴の音で変わるものなのか?
コロンコロンという鈴の音とともに結界が薄緑色に光る。
「これでよし、と。」
篤は巫覡院の鈴に自分の鈴をたして、二乃子を振り返った。
二乃子が興味深そうに結界と鈴を眺める。
「問題なさそう。腕をあげた?」
「そりゃ、4年前と一緒にしないでよね!でも、この結界も、なんというか省エネで、効率がすごくいいよね?結界の巫覡たち、驚くんじゃない?」
二乃子は考えるように顎に手をやっている。
…二乃子の相棒の座、取られたのでは?と満は背中に変な汗をかいた。
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