救国の巫女姫、誕生史

ぺきぺき

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21 雑用係、子供たちに手を焼く

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一時期、一触即発の難しい関係にあったらしい九条家と蒼ノ宮家も今は縁戚関係にあることから仲がいい。

蒼ノ宮家に到着すると、早速小さなたちにまとわりつかれた。

「三兄だ!久しぶりだ!」

「何しに来たの?」

「あ、きれいなお姉さん!」

「三兄の恋人だ!」

子供たちが恋人踊りを始め、満が困っていると、駆けつけてきた12、3歳の少年が子供たちに拳骨を食らわせた。

「三の君はお仕事で来られてるんだ!騒がずに修行しろ!」

子供たちはわーっと逃げていく。

「ありがとう、うみ。」

「頭領がお待ちです。こちらにどうぞ。」


ーーーー


「においがしたという報告を見まして、詳しくお話を聞きたいと。」

二乃子が当日の指揮をとり、報告書もあげてくれた竜使いの頭領・はじめと話し込んでいる。

二乃子が引っかかった報告とは、駆けつけた竜使いたちが妖怪集団から感じたにおい。

「どのくらい手前から感じましたか?」

「いつまで匂っていましたか?」

「もしやこのようなにおいではありませんか?」

「この匂いについて蒼ノ宮ではご存じですか?」

こうして妖を結界の破損にひきつけた方法が判明した。

「”幸せの胡蝶”ですか?それはいったい?妖怪ですか?」

竜使いの頭領も知らないらしい。

「妖怪というよりも魔虫とでも言いましょうか…蝶の一種で人を心地よい気分にさせるにおいがするのです。これを好んで食べる妖怪もいます。」

匂いのサンプルとして出した小瓶の中にはさらさらとした粉のようなものが大量に入っていた。

「これは蝶の羽の鱗粉です。」

鱗粉をどうやってそんなにたくさん…?それはおいておこう。

「巫覡の術でもたびたび使われるものです。あの結界の切れ目のところにこの蝶をどうにかして忍ばせておいたのでしょう。
この蝶を好む妖怪が匂いにつられて集まり、それにつられて他の魔物もあつまり、亀裂を押してパリンと割れたのでは。それだけで割れたのなら、かなり深いひびが入っていたことになりますね。」


ーーーー


そうして、昼食をごちそうになった昼過ぎに満たちは九条邸へと帰ってきた。

「このまま城に戻りますよね?ちょっと父上たちに宝具の件の進捗を聞いてきます。待っていてください。」

誠二の書斎に顔をだす。

「満、蒼ノ宮家から帰ったのかい?」

「はい。これから城へ戻ります。その前に宝具の件がどうなっているか確認しようと思いまして。」

「ああ。私の母のなじみの技師に作成を依頼したよ。二つ返事で許可が出た。」

誠二の母は、度々紹介している気もするが、常磐家の出身だ。結婚して引退する前は巫覡をしていたと聞く。弟の巫覡の涼夜りょうや殿は将軍にも頼りにされたとても有名な巫覡だ。

「一度使用する術者と会いたいと言っていた。どこかで二乃子を連れて会いに行ってくれ。」

「わかりました。」

「正式にはまた報告するよ。二乃子のこと、よろしく頼むよ、満。」


二乃子から目を話したのはわずか10分ほど。

なのに、戻ってきたら二乃子は九条家の九の姫と仲良く手をつないで、一緒に巫覡院に連れていきますと言い出した…。

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