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17 新米巫覡、襲われる
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ちょっとだけ暴力表現があります
――――――――――――――――――――――――
満が出かけた後、二乃子は帝の下に内密に呼び出された。
「常磐家にも結界の破損した原因の調査を依頼した。」
陛下の言葉に、二乃子はここにも私のおかんがいたのか?と焦ったが、そんなはずはないだろう。
「何かお考えが?」
「もちろん二乃子のも調査をしてもらう。ただ、もし常磐家ぐるみで結界の破壊行動をとったのだとしたら、何かしら隠ぺい工作をしてくるだろう。都合の良い報告をしてくるとか。
もし単独犯なのだとしたら、二乃子と似たような調査結果をあげてくるだろう。…安直に考えれば。」
なるほど。さすが帝だ。
「では、陛下は常磐家に連なる者が今回の事件を引き起こしたとお考えなのですね?」
「ああ。他に思いつかない。二乃子はどう思う?」
「同意見です。今回の結界の破損は、何者かが外側から結界に傷のようなものをつけ、そこに妖怪をあつめ、傷を広げさせ、割ったのです。」
そんなの、知識がなければ思いつかないだろう。
「結界の補強のために宝具を作るんだったかな?」
「はい。」
今、結界は仮修復の状態である。歴史の長い結界を元通りに修復することは、二乃子にもできない。
そこで、結界に作用する核となる宝具を祀り、巫覡たちの力を蓄えることで結界の力を強めようと考えた。
そもそも城の結界のように、目に見えた核のない巨大な結界は異例なのだ。唯一無二の結界だったのに、今回、壊れてしまった。
今回、二乃子から結界に作用して傷を修復することができた。だからこの方法も有効だろう。
「常磐からの調査結果が届いたら、二乃子にも知らせよう。」
「はい。」
「今後は自分の身辺にも気を付けてくれ。君のことを傷害として排除しようとするかもしれない。
君にも東雲をつけるように言っておく。」
おおー!東雲!あの、陽己についているやつ!
東雲とは、この国の貴族間では公然の秘密、帝直属の暗殺集団。対象者の護衛としても有能だ。
「まだ、東雲はついていないからな?気を付けるように。」
帝の心配はこの直後に実現してしまう。
ーーーー
二乃子がぷらぷらと城を歩いていると、誰かが近づいてきた。
いつぞやに巫覡院にやってきた朝比奈家の嫡男、博臣である。
「こんにちは、巫覡殿。」
「朝比奈博臣殿でしたね。何か御用でしょうか?」
「実は折り入って相談したいことがありまして、今お時間いいですか?」
「わかりました。では巫覡院に。」
「…できれば巫覡院には行きたくないのです。」
大貴族の嫡男が内密な相談で巫覡院に行くのは確かに噂がたっては困るのかもしれない。
「ここでお伺いしてもいいですか?」
「ではあちらの木陰に…」
博臣が誘導するように二乃子の腕をつかんだ。ーあっこれはダメなやつ!
二乃子は博臣に異変を感じて振り払って逃げようとしたが、男の力でねじ伏せられ、地面にたたきつけるように突き飛ばされた。
とっさに手をついたが、勢いが落ちずに倒れこみ、手のひらも思い切りすった。
上から博臣がまたがるようにのしかかってくる。
見上げると目が合った。その目の中に別の人格を察知した。
その隙に、服に手をかけられ、ビリっと大きな音がして服の前側が破かれた。
ーどうする?これ?大貴族の御曹司、殺しちゃだめだよね?
力の限り抵抗していると、頬を殴られて口の中に血の味が広がった。
さっと殺意がわいたその時だった。
がつんという大きな音がして博臣が崩れ落ちた。そのまま二乃子の上から蹴り転がすように降ろされる。
「二乃子、大丈夫?」
そこにいたのは一花だった。
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満が出かけた後、二乃子は帝の下に内密に呼び出された。
「常磐家にも結界の破損した原因の調査を依頼した。」
陛下の言葉に、二乃子はここにも私のおかんがいたのか?と焦ったが、そんなはずはないだろう。
「何かお考えが?」
「もちろん二乃子のも調査をしてもらう。ただ、もし常磐家ぐるみで結界の破壊行動をとったのだとしたら、何かしら隠ぺい工作をしてくるだろう。都合の良い報告をしてくるとか。
もし単独犯なのだとしたら、二乃子と似たような調査結果をあげてくるだろう。…安直に考えれば。」
なるほど。さすが帝だ。
「では、陛下は常磐家に連なる者が今回の事件を引き起こしたとお考えなのですね?」
「ああ。他に思いつかない。二乃子はどう思う?」
「同意見です。今回の結界の破損は、何者かが外側から結界に傷のようなものをつけ、そこに妖怪をあつめ、傷を広げさせ、割ったのです。」
そんなの、知識がなければ思いつかないだろう。
「結界の補強のために宝具を作るんだったかな?」
「はい。」
今、結界は仮修復の状態である。歴史の長い結界を元通りに修復することは、二乃子にもできない。
そこで、結界に作用する核となる宝具を祀り、巫覡たちの力を蓄えることで結界の力を強めようと考えた。
そもそも城の結界のように、目に見えた核のない巨大な結界は異例なのだ。唯一無二の結界だったのに、今回、壊れてしまった。
今回、二乃子から結界に作用して傷を修復することができた。だからこの方法も有効だろう。
「常磐からの調査結果が届いたら、二乃子にも知らせよう。」
「はい。」
「今後は自分の身辺にも気を付けてくれ。君のことを傷害として排除しようとするかもしれない。
君にも東雲をつけるように言っておく。」
おおー!東雲!あの、陽己についているやつ!
東雲とは、この国の貴族間では公然の秘密、帝直属の暗殺集団。対象者の護衛としても有能だ。
「まだ、東雲はついていないからな?気を付けるように。」
帝の心配はこの直後に実現してしまう。
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二乃子がぷらぷらと城を歩いていると、誰かが近づいてきた。
いつぞやに巫覡院にやってきた朝比奈家の嫡男、博臣である。
「こんにちは、巫覡殿。」
「朝比奈博臣殿でしたね。何か御用でしょうか?」
「実は折り入って相談したいことがありまして、今お時間いいですか?」
「わかりました。では巫覡院に。」
「…できれば巫覡院には行きたくないのです。」
大貴族の嫡男が内密な相談で巫覡院に行くのは確かに噂がたっては困るのかもしれない。
「ここでお伺いしてもいいですか?」
「ではあちらの木陰に…」
博臣が誘導するように二乃子の腕をつかんだ。ーあっこれはダメなやつ!
二乃子は博臣に異変を感じて振り払って逃げようとしたが、男の力でねじ伏せられ、地面にたたきつけるように突き飛ばされた。
とっさに手をついたが、勢いが落ちずに倒れこみ、手のひらも思い切りすった。
上から博臣がまたがるようにのしかかってくる。
見上げると目が合った。その目の中に別の人格を察知した。
その隙に、服に手をかけられ、ビリっと大きな音がして服の前側が破かれた。
ーどうする?これ?大貴族の御曹司、殺しちゃだめだよね?
力の限り抵抗していると、頬を殴られて口の中に血の味が広がった。
さっと殺意がわいたその時だった。
がつんという大きな音がして博臣が崩れ落ちた。そのまま二乃子の上から蹴り転がすように降ろされる。
「二乃子、大丈夫?」
そこにいたのは一花だった。
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