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14 新米巫覡と雑用係、戦う
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感動的な場面。二乃子が返事をしようと口を開いた。
そして、そのままぴたりと止まった。
…沈黙が流れる。
「に、二乃子殿?」
二乃子がシュッと人差し指を唇にあてた。
そして、上空を見上げた。
ーーーー
満がうれしいことを言ってくれた。私も何か言わなくちゃ。
しかし、口を開いたその時、ミシシという音が左上からした。断続的にミシっという音がする。
「に、二乃子殿?」
さっと手を動かして満を黙らせ、音のした上空を見上げた。ーあれは…結界に筋が入っている?そこに、妖怪が集まってきている?
これ以上集まってきたらそこから割れてしまう!
「大変!」
二乃子は立ち上がった。
「咲、近衛のお姉さんたちを呼びに行けますか?満殿、私たちは夕涼みの会に行きましょう!」
「え?何が起きているんですか?」
二乃子は構わず走り出した。満が慌てて追いかけてくる
「二乃子殿!何があったんですか!?」
「城の結界にひびが入りかけています!その向こう側に妖怪たちが集まっていて危険です!貴族の子女を避難させないと!陛下!」
帝のそばに控えている使い魔のアンに伝言をとばす。
「緊急事態です!結界に異常あり!外へは出ずにお身を隠してください!」
ーーーー
夕涼みの会は、後宮の外側の庭園の池を臨める広場で行われていた。周囲に高い建物はなく、開けた場所だった。
「満殿、皆さんの避難をお願いします!」
え、そんな無茶な!…いややるしかないか。
「ドゥ!」
二乃子が放り投げたカバンがぱかりと開いて、中から金色の鳥、ドゥが飛び出してきた。
…いったいどうやって中に入っていたのか。その足には以前にも見た鈴のついたハンドベルのようなものを持っていた。
二乃子の頭上にそれを落とし、上空へと飛んで行った。
一方の、夕涼みの会に参加していた貴族の姫や奥方たちは、突然庭に現れて、何やら騒ぎ出した二乃子と満にご立腹だった。
「皇后さまの宴を邪魔して、一体何なの、あなた?」
「無礼にもほどがあるのではなくて?衛兵は何をしているの?」
「あー、皆さん、我々は巫覡院の者です!いったん夕涼みの会を中止して、建物の中に避難してください!」
「巫覡院?何それ?」
「知らないわ。」
こんなところにも知名度の壁が。
「皆の者!そのものの指示に従い、中に入るのだ!」
御簾を跳ね上げて現れたのは、宿下がりした皇后の代理で参加していた陽己だった。若宮が言うなら…と渋々みんな立ち上がり始める。
その時、パリンという音がした。
満の耳にも、他の者の耳にもはっきりと聞こえた。
音がしたい方を見ると、上空の一か所から何かがあふれ出ている。
目のいいものなら、それが異形の妖怪たちだと気付いただろう。背後から悲鳴が響いた。
それと同時に、シャリンという鈴の音が響いた。
ーーーー
ドゥの目から見て、結界にみえる筋のようなものは、結界の外側に入った切れ込みのようなものだと判明した。…外側にあっては、内側にいる二乃子には直せない。
とりあえず、と背後の後宮に結界をはる。
そうこうする間に妖怪たちは集まってきて、ミシミシと結界に力をかけていく。
そして、パリンと音がした瞬間。二乃子は大きく鈴を振った。
ーーーー
満は大急ぎで陽己を抱き上げ後宮内に押し込んだ。
「二乃子はなぜ舞っているんだ?」
陽己に言われて振り返ると、二乃子が鈴をシャランシャリンと鳴らしながらくるくると回っていた。
空が薄緑色に波打っていくのも確認できた。
「きっと結界を修復しているんです。」
「あれは結界なのか!」
妖怪が入ってきている穴のようなものが小さくなっていく。それに気づいた妖怪たちが二乃子に向かってきた。
「陽己殿、絶対建物から出てきてはいけませんよ?」
満はそのあたりにいた衛兵から剣をひったくると二乃子に向けて走り出し、襲い掛かってきた妖怪を一撃で切り伏せた。
「な…!満、あんなに強かったのか!?」
陽己の驚いた声が響いた。
そして、そのままぴたりと止まった。
…沈黙が流れる。
「に、二乃子殿?」
二乃子がシュッと人差し指を唇にあてた。
そして、上空を見上げた。
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満がうれしいことを言ってくれた。私も何か言わなくちゃ。
しかし、口を開いたその時、ミシシという音が左上からした。断続的にミシっという音がする。
「に、二乃子殿?」
さっと手を動かして満を黙らせ、音のした上空を見上げた。ーあれは…結界に筋が入っている?そこに、妖怪が集まってきている?
これ以上集まってきたらそこから割れてしまう!
「大変!」
二乃子は立ち上がった。
「咲、近衛のお姉さんたちを呼びに行けますか?満殿、私たちは夕涼みの会に行きましょう!」
「え?何が起きているんですか?」
二乃子は構わず走り出した。満が慌てて追いかけてくる
「二乃子殿!何があったんですか!?」
「城の結界にひびが入りかけています!その向こう側に妖怪たちが集まっていて危険です!貴族の子女を避難させないと!陛下!」
帝のそばに控えている使い魔のアンに伝言をとばす。
「緊急事態です!結界に異常あり!外へは出ずにお身を隠してください!」
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夕涼みの会は、後宮の外側の庭園の池を臨める広場で行われていた。周囲に高い建物はなく、開けた場所だった。
「満殿、皆さんの避難をお願いします!」
え、そんな無茶な!…いややるしかないか。
「ドゥ!」
二乃子が放り投げたカバンがぱかりと開いて、中から金色の鳥、ドゥが飛び出してきた。
…いったいどうやって中に入っていたのか。その足には以前にも見た鈴のついたハンドベルのようなものを持っていた。
二乃子の頭上にそれを落とし、上空へと飛んで行った。
一方の、夕涼みの会に参加していた貴族の姫や奥方たちは、突然庭に現れて、何やら騒ぎ出した二乃子と満にご立腹だった。
「皇后さまの宴を邪魔して、一体何なの、あなた?」
「無礼にもほどがあるのではなくて?衛兵は何をしているの?」
「あー、皆さん、我々は巫覡院の者です!いったん夕涼みの会を中止して、建物の中に避難してください!」
「巫覡院?何それ?」
「知らないわ。」
こんなところにも知名度の壁が。
「皆の者!そのものの指示に従い、中に入るのだ!」
御簾を跳ね上げて現れたのは、宿下がりした皇后の代理で参加していた陽己だった。若宮が言うなら…と渋々みんな立ち上がり始める。
その時、パリンという音がした。
満の耳にも、他の者の耳にもはっきりと聞こえた。
音がしたい方を見ると、上空の一か所から何かがあふれ出ている。
目のいいものなら、それが異形の妖怪たちだと気付いただろう。背後から悲鳴が響いた。
それと同時に、シャリンという鈴の音が響いた。
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ドゥの目から見て、結界にみえる筋のようなものは、結界の外側に入った切れ込みのようなものだと判明した。…外側にあっては、内側にいる二乃子には直せない。
とりあえず、と背後の後宮に結界をはる。
そうこうする間に妖怪たちは集まってきて、ミシミシと結界に力をかけていく。
そして、パリンと音がした瞬間。二乃子は大きく鈴を振った。
ーーーー
満は大急ぎで陽己を抱き上げ後宮内に押し込んだ。
「二乃子はなぜ舞っているんだ?」
陽己に言われて振り返ると、二乃子が鈴をシャランシャリンと鳴らしながらくるくると回っていた。
空が薄緑色に波打っていくのも確認できた。
「きっと結界を修復しているんです。」
「あれは結界なのか!」
妖怪が入ってきている穴のようなものが小さくなっていく。それに気づいた妖怪たちが二乃子に向かってきた。
「陽己殿、絶対建物から出てきてはいけませんよ?」
満はそのあたりにいた衛兵から剣をひったくると二乃子に向けて走り出し、襲い掛かってきた妖怪を一撃で切り伏せた。
「な…!満、あんなに強かったのか!?」
陽己の驚いた声が響いた。
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