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12 新米巫覡、厳しい事態を報告される
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「第二王子…?」
満の呆然とした声がした。今しがた自分が今年4歳だと言った子供が赤ちゃんの状態で登場したのだから、それはそうだろう。
「まごうことなく、本物の第二王子だ。」
天花が帝の隣に座り、二乃子に赤子を差し出す。そっと受け取りその様子を観察した。
二乃子は人を見れば、見かけに関係なくある程度の年齢は察することができる。見かけが老けていようが、若かろうが、魂が刻む年月は変わらないからだ。
しかし、この王子は、完全に赤子であり、時が止まったかの様だった。
ーこんなの見たことない。
内心はパニックである。
「第二王子は、九条家でお生まれになって、すぐに城に戻られたんですか?」
「ええ。生まれて一か月ぐらいで。」
「異変を感じたのはいつ頃ですか?」
「三、四か月たった頃かしら。陽己と比べて成長が遅くて…。」
皇后は心配そうに自分の腹を撫でた。
「食事はきちんと?排泄も?」
「ええ。」
ではなぜ成長しないのか。何者かが意図的に時を止めているのだろう。しかし、どうやって?
もう一度言おう。内心はパニックである。
「何か、結界術の類でしょうか…薄膜のようなもので王子を覆って周囲と時間の流れを変えている?とか。
でもきちんとごはんを食べているわけだから、違うか…。」
「巫覡ならばこのような術も可能ということか?」
それまで黙っていた宇宙が鋭くきいてきた。
「新術の開発は、ある程度修練を積んだ巫覡たちがこぞってやっていることです。わざわざそれを他者に教えることはありませんから、できる人がいるかどうかは私にもわかりません。」
「質問を変えよう。こんなこと、できるとしたら巫覡以外には誰がいる?」
「…神ですかね。」
二乃子はここで巫覡院の巫覡に若く経験不足であっても自分が選ばれた理由を察した。
二乃子は常磐家での基礎教育を終えた後は、ずっと地方の山にでこもっていた。
常磐家からの接触は、九条将軍の友人でもある常磐涼夜ただ一人で、つまりは常磐家から離して育てられた。
常磐家の巫覡たちが帝一家に害をなす時を考えての措置だったのだろう。
「現状、私にはどうすればいいのかわかりません。とりあえず、お腹のお子を守るために皇后さまは九条家へと戻られ、状況が改善するまで赤子も登城させないのがいいでしょう。」
「九条家なら安全ということか?」
「外部からの霊的な攻撃に関しては安全です。あの家には守護霊様がいらっしゃいます。」
九条家の人々は何のことやらと首を傾げた。
「しかし、すぐに皇后を帰すのは敵に怪しまれるかもしれない。」
「お任せください。陛下。私がなんとかします。」
永遠が胸を張って答えた。
ーーーー
翌日。九条邸から九条将軍が倒れたという書状が届き、皇后は急いで宿下がりした。
…もちろん将軍はぴんぴんしている。
満の呆然とした声がした。今しがた自分が今年4歳だと言った子供が赤ちゃんの状態で登場したのだから、それはそうだろう。
「まごうことなく、本物の第二王子だ。」
天花が帝の隣に座り、二乃子に赤子を差し出す。そっと受け取りその様子を観察した。
二乃子は人を見れば、見かけに関係なくある程度の年齢は察することができる。見かけが老けていようが、若かろうが、魂が刻む年月は変わらないからだ。
しかし、この王子は、完全に赤子であり、時が止まったかの様だった。
ーこんなの見たことない。
内心はパニックである。
「第二王子は、九条家でお生まれになって、すぐに城に戻られたんですか?」
「ええ。生まれて一か月ぐらいで。」
「異変を感じたのはいつ頃ですか?」
「三、四か月たった頃かしら。陽己と比べて成長が遅くて…。」
皇后は心配そうに自分の腹を撫でた。
「食事はきちんと?排泄も?」
「ええ。」
ではなぜ成長しないのか。何者かが意図的に時を止めているのだろう。しかし、どうやって?
もう一度言おう。内心はパニックである。
「何か、結界術の類でしょうか…薄膜のようなもので王子を覆って周囲と時間の流れを変えている?とか。
でもきちんとごはんを食べているわけだから、違うか…。」
「巫覡ならばこのような術も可能ということか?」
それまで黙っていた宇宙が鋭くきいてきた。
「新術の開発は、ある程度修練を積んだ巫覡たちがこぞってやっていることです。わざわざそれを他者に教えることはありませんから、できる人がいるかどうかは私にもわかりません。」
「質問を変えよう。こんなこと、できるとしたら巫覡以外には誰がいる?」
「…神ですかね。」
二乃子はここで巫覡院の巫覡に若く経験不足であっても自分が選ばれた理由を察した。
二乃子は常磐家での基礎教育を終えた後は、ずっと地方の山にでこもっていた。
常磐家からの接触は、九条将軍の友人でもある常磐涼夜ただ一人で、つまりは常磐家から離して育てられた。
常磐家の巫覡たちが帝一家に害をなす時を考えての措置だったのだろう。
「現状、私にはどうすればいいのかわかりません。とりあえず、お腹のお子を守るために皇后さまは九条家へと戻られ、状況が改善するまで赤子も登城させないのがいいでしょう。」
「九条家なら安全ということか?」
「外部からの霊的な攻撃に関しては安全です。あの家には守護霊様がいらっしゃいます。」
九条家の人々は何のことやらと首を傾げた。
「しかし、すぐに皇后を帰すのは敵に怪しまれるかもしれない。」
「お任せください。陛下。私がなんとかします。」
永遠が胸を張って答えた。
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翌日。九条邸から九条将軍が倒れたという書状が届き、皇后は急いで宿下がりした。
…もちろん将軍はぴんぴんしている。
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