救国の巫女姫、誕生史

ぺきぺき

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11 新米巫覡、厳しい事態を報告する

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巫覡院の活動報告は城の一室にて行われた。
帝と九条家の永遠とわ宇宙そらが参加したごく身内の小さな報告会だった。

だから、雑用係の満も参加できているのだが。

「先日、巫覡院では獣憑きの女児を保護したことはご報告した通りです。
獣憑き、とは何らかの原因で獣が憑依した状態を指します。獣が憑依している特殊な状態により、生まれに関係なく巫覡の才が現れることが多いです。」

「その何らかの原因とはどのようなことが考えられる?」

帝の質問にも二乃子は動じずにすらすらと答えていく。

「おそらく、彼女が生まれた日に獣が惨殺されたと考えられます。獣が恨みを持ってたまたまその時生まれた弱い魂に引っかかる。そういった現象だと考えられます。
ただ、人に殺された獣が必ず憑依するのかといううとそういうわけでもなく、非常に稀な現象です。
私も彼女以外には知りません。」


二乃子は満が用意してくれた書類をぺらりとめくった。

「彼女の気になる点は、、獣付きの特徴を持っていたことです。」

「おかしいことなの?」

「はい。赤子は母親のおなかの中にいる間は強く守られている状態なので、憑依されるようなことは起きません。
母親の腹から出てきた後、じわじわと獣の特徴を持っていくことが報告されています。
それだけすぐに憑依されたということは、憑依したい獣の霊がその日、城下にうじゃうじゃといたことを指しているのではないかと。」

「つまりは、その日、城下で大量に獣が虐殺されていた可能性があるわけだな。」

「はい、なので彼女が生まれた日に起きたことを調べました。少し気になる項目があって…。」


二乃子はリストを帝に渡した。


「その日は、若宮のお生まれになった日でもあるのです。」


帝の第一王子、陽己は今年8歳。咲と同い年である。

国中が慶事にわいた時に、獣の大量虐殺とは、なんとも不穏だ。もし、これが第一王子を獣憑きにしてやろうと企んだものだとしたら、皇后のお腹にいる次の子も危ないだろう。


「そうか…。陽己が狙われていた可能性もあるわけだな?」

「今の情報だけでは判断がつきませんが…。」

「いや、恐らくそうだろう。永遠殿、天花に影汰えいたを連れてくるように伝えてくれ。」

返事をして永遠が部屋をでた。

「影汰…とは?」

二乃子が満に問う。おそらく帝の身内だろう。

「陽己殿の弟、第二王子です。たしか、御年4つになられるはず。九条家で里帰り出産をされていたのでよく覚えています。」

「陽己殿も九条家で?」

「ああ。」

二乃子の脳裏に、九条家にいる守護霊の女性の姿が浮かんだ。ー陽己が獣憑きにならなかったのは、もしや?


「失礼します。」

部屋に永遠が入ってきて、後ろから皇后さまが続く。その腕にはおくるみにくるまれたを抱えていた。


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