理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき

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第五章 無計画な真実の愛

裏/ペーター

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長年、王家に仕えていたペーターにとって第一王子のエアハルトと第二王子であったヨーゼフは孫のようなものだった。

エアハルトは悪知恵が回り、少しずるがしこいところのある子どもだった。幼くして国王夫妻を親というよりも媚びる対象だと見抜き、ペーターや彼の乳兄弟を含む一部の使用人はこき使っていいだと認識した。
しかし、やはり国王にはそれぐらいの腹黒さはあった方がいいとペーターは割り切ったが…。

一方のヨーゼフは人を傷つけることを嫌う心優しい子供だった。怪我をした動物がいれば手当てを命令し、おいしい食べ物があれば皆と分けるよう指示した。
そして、好きになったものはとことん好きで、いつまでも一つのおもちゃで遊んでいた。
王子らしい自分主義は見られたが、エアハルトに比べれば可愛いもので帝王学なんて修めたとしても実践できないと思われた。

ペーターはヨーゼフの一途さや優しさは美点だと思っていたが、それらが全ての仇となった。


若い頃に女性にはまるのは、おかしい話ではない。実際、知られてはいないがエアハルトだって学生時代には娼婦にはまってペーターと彼の乳兄弟で火消しに走ったものだ。

ヨーゼフは昔から一つのものにのめりこむ質だった。その最たるものが”眠れる森の姫”だった。学園であったマリアをそのお姫様だと思い込み、固執してのめり込んだ。周囲が見えなくなるほどになり、婚約者も友人だと思っていた側近も両親からの信頼も、失った。

そんなヨーゼフが心配だったのが半分、エアハルトからヨーゼフの監視を命じられたのが半分、ペーターはヨーゼフが大公になった際に家令として屋敷を取り仕切る役に立候補したのだった。


ヨーゼフが全てを反省して、マリアとの縁を完全に断ち切るのに10年以上がかかった。エアハルトの指示で彼女に嘘の情報を、騒ぎを起こして屋敷を追い出させただけでは足りなかったのだ。

キャサリンが”ヨーゼフ不能説”を広めるためにマリアを王都まで来させる、と決めた時には反対した。ヨーゼフに彼女を思い出させるようなことをしたくはなかったからだ。昔の情で上手く対処できないのではないか、と。
しかし、結果としてはヨーゼフ自身の手でマリアを完全に切り捨てることにつながった。

彼女の同行を逐一把握していたペーターももう彼女のことを
今頃は永遠に出られない牢獄で、鬱屈とした犯罪者の男たちに囲まれているだろう。女にとっては男以上につらい場所だ。


今、ペーターの目の前には優しい表情で書類をめくりながら大きな腹を撫でるキャサリンがいる。

「もうすぐお生まれになりますね。」

「ええ。会えるのが楽しみね。男の子かしら?」

「どちらであっても旦那様はお喜びになられますよ。」

今日のキャサリンは化粧をしていない。お腹が大きい間は人前に出ないため、屋敷にいる間は化粧をする必要がないとヨーゼフが駄々をこねたのだ。なんだかんだ言って、キャサリンはヨーゼフに甘い。

「旦那様はどうでもいいわ。でもそうね。男の子でも女の子でも、私の子が住みやすい国にヒューゲンを変えていかなければいけないわ。」

「こちら、頼まれていた報告書となります。」

「まあ、ありがとう。」


キャサリンも見た目通りの美しい女性ではない。その根っこはエアハルトに負けず劣らずの腹黒いものだ。しかし、エアハルトと違い、どんな配下も人として扱う。あっという間に屋敷中の使用人を虜にし、ヨーゼフの部下たちを虜にし、領民たちを虜にした。

ヨーゼフがキャサリンを追い出そうとしても、追い出されるのは彼の方だろう。実際にはのめり込んでしまっているが。

そして、キャサリンの一番の虜はヨーゼフではない。敵陣から寝返ってしまった、このペーターだ。


「それにしても、どういう風の吹き回し?これまで、国王陛下に関する情報は絶対に渡してくれなかったのに。」

「陛下に命じられてバッツドルフ家の家令となりましたが、お二人の間に子供ができた今、私の役目は終わりでしょう。仕えてもいいはずです。」

キャサリンは肩をすくめて「好きにしなさい」と書類をめくる。しばらくすると城からヨーゼフが帰ってきてキャサリンの隣に入りびたり、その腹を撫でて声をかける。キャサリンは面倒そうな顔をしていたが。

主人の腹の中には赤子と黒い思惑が二つ三つあったとしても、絵に描いたような幸せな夫婦の姿にペーターは微笑んだ。



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