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第二章 無計画な白い結婚
裏/クラウス・ヘルムフート
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「ようやくヨーゼフ様も結婚ですか。長かったですね。」
国王エアハルトの側近として活躍するクラウスは休憩中の国王相手に雑談を振った。
「こうなってみるとヨーゼフが独身で助かったな。息子も婚約者と仲睦まじいし、別れさせて他国の令嬢と婚約させるのは気が進まなかった。
クラウスの作戦にのってよかったよ。」
クラウスの作戦、それはヨーゼフが貴族学園に入学した直後から始まっていた。
「第一王子殿下に内密のご相談がございます。」
わずか13歳であった当時のクラウスは5つも年上のエアハルトと互角に渡り合えるほどに優秀な子供であった。早くからクラウスの優秀さに目をつけていたエアハルトは自身の側近へと引き抜くべく、いろいろと画策していた。
「ヨーゼフのところから私のところへ来てくれるか?」
「ヨーゼフ様の下を離れる場合、義姉のことが心配なのです。」
「クラウディア嬢か。」
クラウスにとって義姉のクラウディアは姉弟の情をこえて、愛する女性だった。ヘルムフート家に引き取られ、初めて出会ったその日に恋をしたのに、翌日には婚約者がいることを知った。
王子妃となる彼女を陰に陽に支えることを誓ったが、クラウディアを一等に大事にするべきヨーゼフは『絵本で見たお姫様』とやらに憧れ、クラウディアをないがしろにしていた。
笑顔を張り付けた顔の裏で、何度『クラウディアを俺に返せ!』と思ったことか。
「義姉がヨーゼフ殿下から自由になれるようにしたいのです。協力していただけるなら、王太子殿下の下に移りたいと思います。」
「…それは父上と母上が許さないだろう。」
「しかし、エアハルト殿下にとってはいい話のはずです。」
「…詳しく聞こうか。」
エアハルトは興味を持ったようで前のめりになる。
「ヨーゼフ殿下を王太子にとあげる声がしつこくあるのはエアハルト殿下もご存知のはず。忌々しく思われてきたのではないですか?」
「そうだな。」
正直、クラウスから見てもヨーゼフは優秀ではあるが、王の器かと言われればそれは異なる。王にはエアハルトのような人物がふさわしい。したたかで腹黒く、時に非情になれる、エアハルトの方が。
「義姉が婚約者である限り、その声は減らないでしょう。義父も常にヨーゼフ殿下を王太子としたい勢力から誘いを受けています。」
「クラウディア嬢が婚約者でなくなれば、その声は減るということか?より権力にがめつい貴族家の令嬢があてがわれるだけだろう?」
「ヨーゼフ殿下に責任がある形で婚約が破棄されればどうでしょう?」
クラウスは自分の計画を話した。
「ヨーゼフ殿下の大好きな運命の姫を利用するのです。ヨーゼフ殿下の学園入学後、徐々に金髪好きであるとの噂を社交界に流します。そうすれば、我こそはという金髪の令嬢たちがヨーゼフ殿下に群がるようになるはずです。」
「そうも上手くいくだろうか?ヨーゼフの目に留まらせるのだろう?よっぽど絵本の姫に似ていなければ…。」
「何人か目星をつけています。容姿に自信のある金髪の下位貴族の令嬢、またはその妾腹の娘を。」
「王族にふさわしくない令嬢を選んでいるわけか…。」
エアハルトは半信半疑だったようだが、最後にはクラウスに許可を出した。上手くいけば儲けもの、ぐらいの気持ちで。
そして、作戦はびっくりするほどうまくいった。
マリア・タウラーは特に『運命の姫』の素質があると、クラウスが目をつけ、手を回して男爵家に引き取らせた令嬢だ。お世話係に手を回し、運命の姫に似せた化粧を施させ、かわいらしいと褒めさせる。
そうして、下位貴族の姫もどき令嬢ができあがった。
クラウディアが止めに入ることはわかっていたので、ヨーゼフがマリアに引っ掛かったタイミングで計画を明かした。
呆れかえっていたが、彼女もヨーゼフに対して執着はない。一年間黙認するということで許可してくれた。
その後は知っての通りだ。ヨーゼフ有責での婚約破棄。クラウディアとクラウスの婚約。結婚。そしてすぐに子宝に恵まれた。
一方のヨーゼフは目に見えた凋落はないが、側近には去られ、愛していたはずのマリアへの思いは薄れ、ついには政略結婚でブルテンの令嬢を結婚することになった。
「しかし、案外、キャサリン嬢とヨーゼフは上手くいくかもしれないぞ。」
「…なぜです?」
クラウスとしてはヨーゼフは不幸になればいいと思う。しかし、エアハルトは弟としてヨーゼフに適度な愛着があるらしい。
「ただの願望だよ。」
エアハルトはにやりとした。
国王エアハルトの側近として活躍するクラウスは休憩中の国王相手に雑談を振った。
「こうなってみるとヨーゼフが独身で助かったな。息子も婚約者と仲睦まじいし、別れさせて他国の令嬢と婚約させるのは気が進まなかった。
クラウスの作戦にのってよかったよ。」
クラウスの作戦、それはヨーゼフが貴族学園に入学した直後から始まっていた。
「第一王子殿下に内密のご相談がございます。」
わずか13歳であった当時のクラウスは5つも年上のエアハルトと互角に渡り合えるほどに優秀な子供であった。早くからクラウスの優秀さに目をつけていたエアハルトは自身の側近へと引き抜くべく、いろいろと画策していた。
「ヨーゼフのところから私のところへ来てくれるか?」
「ヨーゼフ様の下を離れる場合、義姉のことが心配なのです。」
「クラウディア嬢か。」
クラウスにとって義姉のクラウディアは姉弟の情をこえて、愛する女性だった。ヘルムフート家に引き取られ、初めて出会ったその日に恋をしたのに、翌日には婚約者がいることを知った。
王子妃となる彼女を陰に陽に支えることを誓ったが、クラウディアを一等に大事にするべきヨーゼフは『絵本で見たお姫様』とやらに憧れ、クラウディアをないがしろにしていた。
笑顔を張り付けた顔の裏で、何度『クラウディアを俺に返せ!』と思ったことか。
「義姉がヨーゼフ殿下から自由になれるようにしたいのです。協力していただけるなら、王太子殿下の下に移りたいと思います。」
「…それは父上と母上が許さないだろう。」
「しかし、エアハルト殿下にとってはいい話のはずです。」
「…詳しく聞こうか。」
エアハルトは興味を持ったようで前のめりになる。
「ヨーゼフ殿下を王太子にとあげる声がしつこくあるのはエアハルト殿下もご存知のはず。忌々しく思われてきたのではないですか?」
「そうだな。」
正直、クラウスから見てもヨーゼフは優秀ではあるが、王の器かと言われればそれは異なる。王にはエアハルトのような人物がふさわしい。したたかで腹黒く、時に非情になれる、エアハルトの方が。
「義姉が婚約者である限り、その声は減らないでしょう。義父も常にヨーゼフ殿下を王太子としたい勢力から誘いを受けています。」
「クラウディア嬢が婚約者でなくなれば、その声は減るということか?より権力にがめつい貴族家の令嬢があてがわれるだけだろう?」
「ヨーゼフ殿下に責任がある形で婚約が破棄されればどうでしょう?」
クラウスは自分の計画を話した。
「ヨーゼフ殿下の大好きな運命の姫を利用するのです。ヨーゼフ殿下の学園入学後、徐々に金髪好きであるとの噂を社交界に流します。そうすれば、我こそはという金髪の令嬢たちがヨーゼフ殿下に群がるようになるはずです。」
「そうも上手くいくだろうか?ヨーゼフの目に留まらせるのだろう?よっぽど絵本の姫に似ていなければ…。」
「何人か目星をつけています。容姿に自信のある金髪の下位貴族の令嬢、またはその妾腹の娘を。」
「王族にふさわしくない令嬢を選んでいるわけか…。」
エアハルトは半信半疑だったようだが、最後にはクラウスに許可を出した。上手くいけば儲けもの、ぐらいの気持ちで。
そして、作戦はびっくりするほどうまくいった。
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その後は知っての通りだ。ヨーゼフ有責での婚約破棄。クラウディアとクラウスの婚約。結婚。そしてすぐに子宝に恵まれた。
一方のヨーゼフは目に見えた凋落はないが、側近には去られ、愛していたはずのマリアへの思いは薄れ、ついには政略結婚でブルテンの令嬢を結婚することになった。
「しかし、案外、キャサリン嬢とヨーゼフは上手くいくかもしれないぞ。」
「…なぜです?」
クラウスとしてはヨーゼフは不幸になればいいと思う。しかし、エアハルトは弟としてヨーゼフに適度な愛着があるらしい。
「ただの願望だよ。」
エアハルトはにやりとした。
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