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第一章 無計画な婚約破棄
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王子の恋人の座を狙う、といってもそこは貴族学園。そんな下品な真似をするような女子学生はいなかった。金髪を強調させながら、愛の告白をする程度である。
「ヨーゼフ様…、ずっと前からお慕いしておりました。」
その日に現れたのは美しい赤みがかった金髪の令嬢で、赤が混じるということは歴史ある貴族家の令嬢であることを意味していた。実際に、それは一学年年下の侯爵令嬢であり、第二王子を王太子にと企てる家の令嬢でもあった。
綺麗に整えられた髪の美しい令嬢であった。並みの男であればクラっと来てもおかしくないほどスタイルもよかった。しかし。
「気持ちはありがたいが、私は好きではない。」
ヨーゼフの返事はこれである。
「そ、それはヘルムフート公爵令嬢にご遠慮されているのですか?私は婚約者に収まろうなどど大それたことは…。」
「いや、単純にその金髪は好みではない。」
「は!?」
クラウディアはヨーゼフの金髪好きの噂は止められないと早々に見切りをつけ、ヨーゼフ自身に金髪を理由に誘いを断るように助言した。実際に、ヨーゼフには金髪に並々ならぬこだわりがあり、お眼鏡に適う金髪は未だに絵本の中にしかいなかった。
呆然と立ち尽くす令嬢を置き去りに、今日もヨーゼフは歩き去って行った。
ーーーー
「全く、姉上という存在がありながらこんなにもヨーゼフ様に声をかける令嬢が多いだなんて。」
三年に進学すると二つ年下のクラウスが貴族学園に入学してきた。逆に一つ年上のダミアンは卒業し、一足早く城で働いている。
「王族に憧れるというのは世の常だろう。実際、私も未だに憧れの姫を追っているからね。」
「…それ、絶対に公の場では言ってはいけませんよ。」
火のないところに煙は立たないとはこういうことか、ヨーゼフは17歳になっても運命の姫を探し続ける困った男だった。
別に婚約者であるクラウディアとの仲が悪いわけではない。むしろ、ヨーゼフはクラウディアのことを同志だと思っていた。ヨーゼフの運命の姫に理解を示し、姫が現れた日には快く応援してくれるだろうとも。
決してそのようなことはないのだが。
「…姉上がお可哀そうです。」
クラウスがつぶやいた言葉はヨーゼフの耳には届いていなかった。なぜなら、ヨーゼフは窓の外に見えた令嬢の姿に目が釘付けになっていたからだ。
ゆるやかにウェーブを描く明るい金髪が背にはねている。足早に去って行く横顔は可愛らしく、ちらりと見えた目は青かった。
少女が視界からいなくなり、数秒後。
「…殿下?」
「…うおおおおおおおお!!」
突然に叫びだしたヨーゼフに、隣で様子をうかがっていたクラウスはビクリと驚いた。
「な、なんです!?」
「見つけた!」
「え?」
「今、私の運命の姫がそこを走って行った!!」
興奮したヨーゼフはそのまま窓を大きく開け、外へ飛び出した。「殿下!」と呼ぶ、クラウスを置き去りにヨーゼフは彼女を追いかけた。実際に騎士団で稽古もする文武両道のヨーゼフはあっという間にベンチでくつろぐ彼女を見つけた。
明るい日差しの下で、明るい金髪が輝いていた。走ってくるヨーゼフに向ける驚いた様な顔は可愛らしく、色は濃いが円らな青い瞳はまさしく何度も読み返した『眠れる森の姫』に出てくる姫だった。
「き、君、名前は?」
「ま、マリア・タウラーと申します。第二王子殿下。」
「マリア。」
興奮冷めやらぬヨーゼフはすぐにその場に膝をつき、マリアを見上げた。
「君こそ私の運命の姫だ!私の恋人になってくれ!」
「ま、まあ!」
マリアは頬を赤らめて了承する。ヨーゼフはそれを聞くと輝く笑顔でマリアの両手を取り、口づけを落とした。
ヨーゼフの長年の探し人が見つかった瞬間である。
と、この時のヨーゼフは信じ込んでいた。そして、後ろからその様子を見ていたクラウスが悪い顔をしていたことには最後まで気づかなかった。
「ヨーゼフ様…、ずっと前からお慕いしておりました。」
その日に現れたのは美しい赤みがかった金髪の令嬢で、赤が混じるということは歴史ある貴族家の令嬢であることを意味していた。実際に、それは一学年年下の侯爵令嬢であり、第二王子を王太子にと企てる家の令嬢でもあった。
綺麗に整えられた髪の美しい令嬢であった。並みの男であればクラっと来てもおかしくないほどスタイルもよかった。しかし。
「気持ちはありがたいが、私は好きではない。」
ヨーゼフの返事はこれである。
「そ、それはヘルムフート公爵令嬢にご遠慮されているのですか?私は婚約者に収まろうなどど大それたことは…。」
「いや、単純にその金髪は好みではない。」
「は!?」
クラウディアはヨーゼフの金髪好きの噂は止められないと早々に見切りをつけ、ヨーゼフ自身に金髪を理由に誘いを断るように助言した。実際に、ヨーゼフには金髪に並々ならぬこだわりがあり、お眼鏡に適う金髪は未だに絵本の中にしかいなかった。
呆然と立ち尽くす令嬢を置き去りに、今日もヨーゼフは歩き去って行った。
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「全く、姉上という存在がありながらこんなにもヨーゼフ様に声をかける令嬢が多いだなんて。」
三年に進学すると二つ年下のクラウスが貴族学園に入学してきた。逆に一つ年上のダミアンは卒業し、一足早く城で働いている。
「王族に憧れるというのは世の常だろう。実際、私も未だに憧れの姫を追っているからね。」
「…それ、絶対に公の場では言ってはいけませんよ。」
火のないところに煙は立たないとはこういうことか、ヨーゼフは17歳になっても運命の姫を探し続ける困った男だった。
別に婚約者であるクラウディアとの仲が悪いわけではない。むしろ、ヨーゼフはクラウディアのことを同志だと思っていた。ヨーゼフの運命の姫に理解を示し、姫が現れた日には快く応援してくれるだろうとも。
決してそのようなことはないのだが。
「…姉上がお可哀そうです。」
クラウスがつぶやいた言葉はヨーゼフの耳には届いていなかった。なぜなら、ヨーゼフは窓の外に見えた令嬢の姿に目が釘付けになっていたからだ。
ゆるやかにウェーブを描く明るい金髪が背にはねている。足早に去って行く横顔は可愛らしく、ちらりと見えた目は青かった。
少女が視界からいなくなり、数秒後。
「…殿下?」
「…うおおおおおおおお!!」
突然に叫びだしたヨーゼフに、隣で様子をうかがっていたクラウスはビクリと驚いた。
「な、なんです!?」
「見つけた!」
「え?」
「今、私の運命の姫がそこを走って行った!!」
興奮したヨーゼフはそのまま窓を大きく開け、外へ飛び出した。「殿下!」と呼ぶ、クラウスを置き去りにヨーゼフは彼女を追いかけた。実際に騎士団で稽古もする文武両道のヨーゼフはあっという間にベンチでくつろぐ彼女を見つけた。
明るい日差しの下で、明るい金髪が輝いていた。走ってくるヨーゼフに向ける驚いた様な顔は可愛らしく、色は濃いが円らな青い瞳はまさしく何度も読み返した『眠れる森の姫』に出てくる姫だった。
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「ま、マリア・タウラーと申します。第二王子殿下。」
「マリア。」
興奮冷めやらぬヨーゼフはすぐにその場に膝をつき、マリアを見上げた。
「君こそ私の運命の姫だ!私の恋人になってくれ!」
「ま、まあ!」
マリアは頬を赤らめて了承する。ヨーゼフはそれを聞くと輝く笑顔でマリアの両手を取り、口づけを落とした。
ヨーゼフの長年の探し人が見つかった瞬間である。
と、この時のヨーゼフは信じ込んでいた。そして、後ろからその様子を見ていたクラウスが悪い顔をしていたことには最後まで気づかなかった。
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