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第1章 2年時 ーショーン編ー
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ルクレツェン魔法学園は魔法学園というのだからもちろん通常の学校で学ぶ科目と並行して魔法も学ぶ。一年生の時は魔法理論や簡単な浮遊術など、基礎を多く学んだ。
二年生からは属性魔法の授業が始まる。
属性魔法とは、適性がないと使えない魔法のことである。火・水・土・風と希少な闇・光の6属性があり、二年生からは属性ごとの授業が始まる。つまりは新しい友達を作るチャンス。
今日はその属性調査がある。
まあ、属性は調査しなくても大半の学生が自分の属性をしっている。なぜなら属性魔法はほぼ遺伝で決まるからだ。ショーンも自分の属性はおそらく父譲りの土だろうと思っている。母も魔力を持つが、異国の出身であるため属性魔法という概念はなかったらしい。
属性調査は5人ずつ部屋に呼ばれて行われた。その呼ばれ方は、名簿順でもクラス別でもなく不思議なメンバーだった。
ショーンが呼ばれたのは最後のグループだった。一緒に入ったのはこの前話したノエルとハロルド、そして同じクラスのザラ・ウォーだった。
ノエルがショーンに気づくと小さく手を振ってくれた。こっちも小さく振り返す。
「みなさんは今年の入学者の中でも特に魔力量が多いです。魔力量が多い人は複数属性を持つ可能性が高いです。」
「「え。」」
声を出したのはショーンとノエルだった。
「属性は複数持つことができるんですか?」
「ええ。特に魔力量が多いと複数の属性を持つことが多く報告されています。」
そうか。じゃあ今日の調査は魔力量別だったんだ。ちなみに魔力量の測定は入学後の健康診断で全員がしている。
「では、ハロルド・フィリウス。前へ。この水晶に手をかざして。」
ハロルドが水晶に手をかざすと水晶はまず緑色になり次いで赤、黄色、青にかわり、四色が混在して光るようになった。
「あらまあ!風・火・土・水の4属性に適性があるわ!初めて見た…フィリウス家も創始者も確かそうだったわね…。」
ハロルドも自分の結果に驚いたようで、しばらく唖然として水晶を見ていた。
「風が一番最初に現れたので、二年生の間は風魔法をメインにしましょうか。他は…ハロルドですからね…。後で相談しましょうか。」
次はワクワクした様子のノエルだ。ノエルは非魔法族生まれだから、自分の属性に検討がつかないのだろう。そわそわしながら水晶に手をかざす。…かわいいな。
「お?」
一瞬の空白の後、水晶は白く光り、その後青が混じった。
「ようやく出ましたね!光属性です。今年はあなたが初めてですよ。次いで水ですね。授業は水魔法を受講しましょう。光魔法は特別講師をお呼びしますね。」
光属性は珍しいが100人に一人か二人ぐらいでいる。だから学年にも一学年一人ぐらいいてもおかしくないのだ。
「光魔法!なんかすごそう!」
ノエルは嬉しそうにウキウキしながら席に戻っていった。…ああ、かわいいな。
「では、ショーン・ロバート。」
「はい。」
ショーンが水晶に手をかざす。予想では黄色くなるはずだったが、すぐに青くなった。やがて黄色くなり、青と黄色が混在して光りだす。
「水と土ですね。では授業は水にしましょう。土はハロルドと他にも複数属性持ちがいたので、一緒に補講を受けるということで。」
「は、はい。」
母が水属性を持っていたということなのだろうか…。席に戻ると『一緒の授業だね、よろしくね』とノエルが声をかけてきた。『よろしく』と答えている間に、最後のザラの調査が始まった。
「闇属性ですね。ウォー家ならばそうでしょう。今年はあなたを含め、ウォー家の三人ですね。」
水晶は黒くなっていた。狼獣人のウォー家は代々闇属性を受け継ぐ家であることはショーンも知っていた。今年はウォー家の子供が一学年に三人もいるので、闇属性が例年より多いようだ。
本来であれば、光属性と同じくらい希少な属性だ。
「補講に関しては後日連絡しますが、この後は指定の教室にて初回の授業を受けてください。」
先生がボードを示す。そこには属性ごとの授業が行われる教室が示されていた。
「ショーン、一緒に行こうよ。」
「あ、うん。」
ノエルはクラスメイトたちから遠巻きにされているショーンにも平然と話しかけてくれる。魔法学園では毎日感じる肌の色に対する不信感みたいなものも感じたことはない。…嬉しい。可愛い。
部屋を移動するときに誰かからにらまれているような視線を感じ、振り返ったが、そこにはハロルドとザラがいるだけだった。
二年生からは属性魔法の授業が始まる。
属性魔法とは、適性がないと使えない魔法のことである。火・水・土・風と希少な闇・光の6属性があり、二年生からは属性ごとの授業が始まる。つまりは新しい友達を作るチャンス。
今日はその属性調査がある。
まあ、属性は調査しなくても大半の学生が自分の属性をしっている。なぜなら属性魔法はほぼ遺伝で決まるからだ。ショーンも自分の属性はおそらく父譲りの土だろうと思っている。母も魔力を持つが、異国の出身であるため属性魔法という概念はなかったらしい。
属性調査は5人ずつ部屋に呼ばれて行われた。その呼ばれ方は、名簿順でもクラス別でもなく不思議なメンバーだった。
ショーンが呼ばれたのは最後のグループだった。一緒に入ったのはこの前話したノエルとハロルド、そして同じクラスのザラ・ウォーだった。
ノエルがショーンに気づくと小さく手を振ってくれた。こっちも小さく振り返す。
「みなさんは今年の入学者の中でも特に魔力量が多いです。魔力量が多い人は複数属性を持つ可能性が高いです。」
「「え。」」
声を出したのはショーンとノエルだった。
「属性は複数持つことができるんですか?」
「ええ。特に魔力量が多いと複数の属性を持つことが多く報告されています。」
そうか。じゃあ今日の調査は魔力量別だったんだ。ちなみに魔力量の測定は入学後の健康診断で全員がしている。
「では、ハロルド・フィリウス。前へ。この水晶に手をかざして。」
ハロルドが水晶に手をかざすと水晶はまず緑色になり次いで赤、黄色、青にかわり、四色が混在して光るようになった。
「あらまあ!風・火・土・水の4属性に適性があるわ!初めて見た…フィリウス家も創始者も確かそうだったわね…。」
ハロルドも自分の結果に驚いたようで、しばらく唖然として水晶を見ていた。
「風が一番最初に現れたので、二年生の間は風魔法をメインにしましょうか。他は…ハロルドですからね…。後で相談しましょうか。」
次はワクワクした様子のノエルだ。ノエルは非魔法族生まれだから、自分の属性に検討がつかないのだろう。そわそわしながら水晶に手をかざす。…かわいいな。
「お?」
一瞬の空白の後、水晶は白く光り、その後青が混じった。
「ようやく出ましたね!光属性です。今年はあなたが初めてですよ。次いで水ですね。授業は水魔法を受講しましょう。光魔法は特別講師をお呼びしますね。」
光属性は珍しいが100人に一人か二人ぐらいでいる。だから学年にも一学年一人ぐらいいてもおかしくないのだ。
「光魔法!なんかすごそう!」
ノエルは嬉しそうにウキウキしながら席に戻っていった。…ああ、かわいいな。
「では、ショーン・ロバート。」
「はい。」
ショーンが水晶に手をかざす。予想では黄色くなるはずだったが、すぐに青くなった。やがて黄色くなり、青と黄色が混在して光りだす。
「水と土ですね。では授業は水にしましょう。土はハロルドと他にも複数属性持ちがいたので、一緒に補講を受けるということで。」
「は、はい。」
母が水属性を持っていたということなのだろうか…。席に戻ると『一緒の授業だね、よろしくね』とノエルが声をかけてきた。『よろしく』と答えている間に、最後のザラの調査が始まった。
「闇属性ですね。ウォー家ならばそうでしょう。今年はあなたを含め、ウォー家の三人ですね。」
水晶は黒くなっていた。狼獣人のウォー家は代々闇属性を受け継ぐ家であることはショーンも知っていた。今年はウォー家の子供が一学年に三人もいるので、闇属性が例年より多いようだ。
本来であれば、光属性と同じくらい希少な属性だ。
「補講に関しては後日連絡しますが、この後は指定の教室にて初回の授業を受けてください。」
先生がボードを示す。そこには属性ごとの授業が行われる教室が示されていた。
「ショーン、一緒に行こうよ。」
「あ、うん。」
ノエルはクラスメイトたちから遠巻きにされているショーンにも平然と話しかけてくれる。魔法学園では毎日感じる肌の色に対する不信感みたいなものも感じたことはない。…嬉しい。可愛い。
部屋を移動するときに誰かからにらまれているような視線を感じ、振り返ったが、そこにはハロルドとザラがいるだけだった。
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