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第48話 決戦の後
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シンカ
天災は忘れた頃にやってくる。
そんな陳腐な格言を言おうとしてやめた。みんな茫然自失としていたが、なぜか今までずっと背負わされていたものから解き放たれたような身体の軽さを感じていた。身体が軽いというか、空気が軽くなった気がした。
エスツーの第二波が来て、絶望に落ちそうな時に、大津波はやってきて、エスツーの大群なんて木の葉みたいに捻り潰した。そんなタイミングでそんなことが起こるだろうか。でもよくよく考えると、そういう時にこそそういうことが起こってる場合が多い。古代の戦記などを読んでいると、だいたい戦争の最中に日食だったり月食、超レアな天体現象などが奇跡的に起こり、神々が人間への介入を行う。そんなことあるわけない、って思ってたけれど、そういうことはあるんだ。実際目の前で起こってるのはそういうことだ。
それに疲れ果てていた、緊張がゆるんだ瞬間どっと疲れが来た、眠い。眠い、のが久しぶりだって気づいた、眠さなんて感じてる暇が無かった、眠気に襲われるともう反撃する手段をすべて失っていた。気づけば全員が寝ていた。これも嘘みたいな話だけれど、大津波がすべてを洗い流している間、ワタシ達は全員ぐーぐー惰眠をむさぼっていた。悲しい、とか絶望とか言ってるやつは、とにかくカラダを動かせってことだ、そうしたらもう眠たいとしか考えなくなる。
目を覚ますとひどく喉が乾いていた、nanoが、コーラをぽんと投げてよこしてくれた。
nano「まぁまぁ頑張ったじゃん、及第点ってとこかな」
津波が海に帰っていく、ゴウゴウとした轟音が鳴り響いている。
シンカ「まるで神話の話みたいね、大津波ですべてが消えるなんてさ、昔もこういうことがあったってことだね」
nano「なんだって起こるよ、昔はだってこの星は溶岩の海だったり、氷の塊だったんでしょ、大津波なんてたいしたレアイベでもないんじゃないの、もう地球は狭いだとかわかったようなこと言って、実はなんにもわかっちゃいないのよな」
コタン「Matrixも落ちちゃいました、衛星通信だから落ちないはずなのに」
シンカ「Saintが止めたんじゃない、もう闘争の必要は無くなったでしょう」
コタン「SaintはまじでこのVMOってのを作るつもりなんでしょうか?見ましたこれ?」
シンカ「一通り、正論ばっかりね。正しいことばっかり書いてある、これがSaintの語り口みたいね。論理的で正しい、公平で無慈悲。コンピュータのプログラムみたい。でも素直に受け入れる人は少ないでしょ、トレーサーっていう装置も恐ろしいし、家族や国家の解体、ついていけないよ。
でもこれはなんの根拠も無いんだけれど、Saintはもう、人類に介入しようとしないと思う、彼らが本当に人類を救済しようとしたんだったら、もう目的は果たされた。また千年くらいは人類が破滅の危機を迎えることは無いだろうし」
nano「あの天使の輪もいつの間にか無くなったな、むちゃくちゃな兵器だったねあれは、あれを見たことは無い人は、そんなのがあったって話、誰も信じないだろうな」
コタン「これからどうしましょう?」
シンカ「地道にやってくしかないでしょ、また水の確保からやり直し、食べ物の確保、住居の確保、死体やらゴミの処理、使えそうなものを廃墟から拝借、今度は超ローテクな手作業だけどね」
nano「げっ・・・最悪・・」
シンカ「そして今度の文明は、人類を破滅に追い込むような兵器の開発はしないようにってなんとかやってくしかないでしょ」
コタン「そんなこと出来ますかね?」
シンカ「出来るわけないでしょ、また同じことを繰り返す。でもまだ文明が失敗してすべてが海に流されるのは二回目だ。二回じゃ人間は何も学ばない、けど何万回も繰り返せば、もしかしてこれは愚かなんじゃないか?って気づく人も出てくるはず。運悪く決定的な破滅を迎えるかもしれないけどね、でもやれることから手を出していくしかあるまいよ、今日は一日休んで、明日から要塞の水源確保したりしよう」
nano「ギアを失ってただのかわいいだけのJKになっちまったnanoちゃんの言うことなんて誰も聞かないだろうけどね」
シンカ「そうかな?少なくともこの籠城戦を耐えた人たちはすぐに資源を奪い合う世紀末ってことにはならないと信じたいけどね。
カリスマって本当に大事なんだなって思ったよ。誰かを信じたいっていう気持ちは切実で、本物の英雄、本物のカリスマがいたらそれまでクズだったり、カスみたいだったはずの人生も、みるみる輝きだして、ぜったい上手くいかないって思ってたことが、なんでこんな簡単なことが今まで出来なかったんだろう?って思うくらいすべてが上手くいく。
本当の理想を語ってくれる人がいたら、本当の導き手が現れたら、・・・誰かの為に生きることが出来るのかもしんない、そんな贅沢ってないよね、そんなやついるわけない、騙されないぞ!って言ってるけど、ココロの底では、いつかそういう人間が現れて、自分の持てる力すべてを捧げて、かっこよく死にたいって願っているものだよね」
コタン「なんか先輩・・・、成長しましたね、後輩が言うことじゃないでしょうけど。他の人を信じたり出来るようになったんですね、誰も信じない人よりも、誰かを信じられる人が強い人間です」
褒められてるようですごく根本からごっそりディスられた気がする。確かにそうだ、ワタシは今まで他人を誰も信じてなかった、でも自分が頼りにされてわかった、人は他人から信じてもらったり、なにかを託された時に、普段以上の能力が出せるようになるのかもしんない、成長出来るのかもしんない、変われるのかもしれない。
どうせこいつはダメだ、っていうふうに接してたら、もっとダメになってしまうのかも。裏切られるのリスクを理解してても、誰かを信じてあげるのが大事なんだな・・・
nano「・・・何コレ?百合始まった?ワタシはBLのほうが好みなんだけど、それも1ページから絡みばっかりのすっごいえっぐいやつね、あ~ぁワタシのとっておきのコレクションがあったのになぁ、水没しちゃっただろうなぁ・・・」
コタン「さいってぇ・・・」
シンカ「ワタシも、ストーリー長いの読むの疲れるし」
コタン「うっそぉ!?先輩うすい本読むの!?イメージ壊れるぅ!!」
天災は忘れた頃にやってくる。
そんな陳腐な格言を言おうとしてやめた。みんな茫然自失としていたが、なぜか今までずっと背負わされていたものから解き放たれたような身体の軽さを感じていた。身体が軽いというか、空気が軽くなった気がした。
エスツーの第二波が来て、絶望に落ちそうな時に、大津波はやってきて、エスツーの大群なんて木の葉みたいに捻り潰した。そんなタイミングでそんなことが起こるだろうか。でもよくよく考えると、そういう時にこそそういうことが起こってる場合が多い。古代の戦記などを読んでいると、だいたい戦争の最中に日食だったり月食、超レアな天体現象などが奇跡的に起こり、神々が人間への介入を行う。そんなことあるわけない、って思ってたけれど、そういうことはあるんだ。実際目の前で起こってるのはそういうことだ。
それに疲れ果てていた、緊張がゆるんだ瞬間どっと疲れが来た、眠い。眠い、のが久しぶりだって気づいた、眠さなんて感じてる暇が無かった、眠気に襲われるともう反撃する手段をすべて失っていた。気づけば全員が寝ていた。これも嘘みたいな話だけれど、大津波がすべてを洗い流している間、ワタシ達は全員ぐーぐー惰眠をむさぼっていた。悲しい、とか絶望とか言ってるやつは、とにかくカラダを動かせってことだ、そうしたらもう眠たいとしか考えなくなる。
目を覚ますとひどく喉が乾いていた、nanoが、コーラをぽんと投げてよこしてくれた。
nano「まぁまぁ頑張ったじゃん、及第点ってとこかな」
津波が海に帰っていく、ゴウゴウとした轟音が鳴り響いている。
シンカ「まるで神話の話みたいね、大津波ですべてが消えるなんてさ、昔もこういうことがあったってことだね」
nano「なんだって起こるよ、昔はだってこの星は溶岩の海だったり、氷の塊だったんでしょ、大津波なんてたいしたレアイベでもないんじゃないの、もう地球は狭いだとかわかったようなこと言って、実はなんにもわかっちゃいないのよな」
コタン「Matrixも落ちちゃいました、衛星通信だから落ちないはずなのに」
シンカ「Saintが止めたんじゃない、もう闘争の必要は無くなったでしょう」
コタン「SaintはまじでこのVMOってのを作るつもりなんでしょうか?見ましたこれ?」
シンカ「一通り、正論ばっかりね。正しいことばっかり書いてある、これがSaintの語り口みたいね。論理的で正しい、公平で無慈悲。コンピュータのプログラムみたい。でも素直に受け入れる人は少ないでしょ、トレーサーっていう装置も恐ろしいし、家族や国家の解体、ついていけないよ。
でもこれはなんの根拠も無いんだけれど、Saintはもう、人類に介入しようとしないと思う、彼らが本当に人類を救済しようとしたんだったら、もう目的は果たされた。また千年くらいは人類が破滅の危機を迎えることは無いだろうし」
nano「あの天使の輪もいつの間にか無くなったな、むちゃくちゃな兵器だったねあれは、あれを見たことは無い人は、そんなのがあったって話、誰も信じないだろうな」
コタン「これからどうしましょう?」
シンカ「地道にやってくしかないでしょ、また水の確保からやり直し、食べ物の確保、住居の確保、死体やらゴミの処理、使えそうなものを廃墟から拝借、今度は超ローテクな手作業だけどね」
nano「げっ・・・最悪・・」
シンカ「そして今度の文明は、人類を破滅に追い込むような兵器の開発はしないようにってなんとかやってくしかないでしょ」
コタン「そんなこと出来ますかね?」
シンカ「出来るわけないでしょ、また同じことを繰り返す。でもまだ文明が失敗してすべてが海に流されるのは二回目だ。二回じゃ人間は何も学ばない、けど何万回も繰り返せば、もしかしてこれは愚かなんじゃないか?って気づく人も出てくるはず。運悪く決定的な破滅を迎えるかもしれないけどね、でもやれることから手を出していくしかあるまいよ、今日は一日休んで、明日から要塞の水源確保したりしよう」
nano「ギアを失ってただのかわいいだけのJKになっちまったnanoちゃんの言うことなんて誰も聞かないだろうけどね」
シンカ「そうかな?少なくともこの籠城戦を耐えた人たちはすぐに資源を奪い合う世紀末ってことにはならないと信じたいけどね。
カリスマって本当に大事なんだなって思ったよ。誰かを信じたいっていう気持ちは切実で、本物の英雄、本物のカリスマがいたらそれまでクズだったり、カスみたいだったはずの人生も、みるみる輝きだして、ぜったい上手くいかないって思ってたことが、なんでこんな簡単なことが今まで出来なかったんだろう?って思うくらいすべてが上手くいく。
本当の理想を語ってくれる人がいたら、本当の導き手が現れたら、・・・誰かの為に生きることが出来るのかもしんない、そんな贅沢ってないよね、そんなやついるわけない、騙されないぞ!って言ってるけど、ココロの底では、いつかそういう人間が現れて、自分の持てる力すべてを捧げて、かっこよく死にたいって願っているものだよね」
コタン「なんか先輩・・・、成長しましたね、後輩が言うことじゃないでしょうけど。他の人を信じたり出来るようになったんですね、誰も信じない人よりも、誰かを信じられる人が強い人間です」
褒められてるようですごく根本からごっそりディスられた気がする。確かにそうだ、ワタシは今まで他人を誰も信じてなかった、でも自分が頼りにされてわかった、人は他人から信じてもらったり、なにかを託された時に、普段以上の能力が出せるようになるのかもしんない、成長出来るのかもしんない、変われるのかもしれない。
どうせこいつはダメだ、っていうふうに接してたら、もっとダメになってしまうのかも。裏切られるのリスクを理解してても、誰かを信じてあげるのが大事なんだな・・・
nano「・・・何コレ?百合始まった?ワタシはBLのほうが好みなんだけど、それも1ページから絡みばっかりのすっごいえっぐいやつね、あ~ぁワタシのとっておきのコレクションがあったのになぁ、水没しちゃっただろうなぁ・・・」
コタン「さいってぇ・・・」
シンカ「ワタシも、ストーリー長いの読むの疲れるし」
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