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第38話 「あいつ」
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ユミ
エクセ「だいたい一万年前くらいの話だ」
ユミ「っちょ!ちょっと待ってくください、説明してくれと頼んだけれど人類の文明の始まりから説明するつもりですか?手短に頼みますよ」
ステラは地下にあるらしく、通信が使えないので、有線のギアを積み込んでワタシ達は大急ぎで南極基地からエクセから鹵獲してあったアカシック型潜水艦で出発した。
乗り込んだのはワタシとエクセ、カナビス、そして操縦のロミヲさん。しっかり準備してあった、初めからこうなることをわかってたんだろう。そしてエクセに事情を説明してもらっていた。
カナビス「エクセはむかしっからそういう真面目すぎるところあるんだよなぁ、歴史の講義は寝ちまうよ、ざっくりわかりやすく教えてくれよ」
エクセ「まぁ聞けよ。今からだいたい一万年くらい前、正確な年月はわからない。けどそのあたりに謎の人物、人間なのかどうかもわからん「あいつ」とでも呼ぼう。あいつ、がこの星にやってきた、それが初めてだったのか何度も来たのかはわからない、とにかく別の文明から何者かがやってきた。
そいつは自分たちが死ぬ、という逃れがたい運命を背負わされているということにうっすら気づき、絶望を感じ初めていた人間たちを集めて奇妙な概念を植え付けていった。
宇宙が無から始まったということ、輪廻があるということ、あの世があるということ、神、というものがいること。狩猟生活でその日暮らしをしていた文明初期の人間には到底思いつくはずのないような概念を人間に植え付けていった。さらにあいつ、は火の扱いについても教えていった、だから「火を与えるもの」と呼ばれた、世界中にあいつ、は現れ、同じように死後の世界と火の扱い方を教えた」
ユミ「待ってくださいよ!まぢか?宇宙人とかそういう話?SFはじまったの?」
エクセ「宇宙人かどうかもわからない、もともとVarthにいた存在かもしれない。嘘みたいな話だけれどそうなんだから仕方ないだろ。あいつは、その後大海嘯を起こした、つまり大津波だ、生命の3分の2が溺れ死んだ、地層にはっきりその後が残っている。
この星には大きく4つのプレートが存在している、そのつなぎ目がちょうどマザー・シーの中心、つまり殉教者島の地下で重なり合っている。偶然と呼ぶにはあまりにも出来すぎている、あきらかに人為的、なんらかの意図的な采配によるものだ。
その4つのプレートの結節点に楔を打ち込むと、蓄積されたエネルギーが一気に解放されて大地震が起こり、大津波が起こる。つまりはあいつ、が大海嘯を起こすために作った装置がそのまま残されていたってわけだ。
その装置が見つかったからこそ、あいつ、が本当に存在したとわかったともいえる、三年前のステラの事件は正統教会騎士団がその大海嘯を起こそうとしたのを防いだことから起こった。
ソアラたちの狙いもこの大海嘯だ」
ユミ「でもなんの為にそんな大津波なんて起こすのです?」
カナビス「そりゃ復讐の為だろ、ソアラは人類のすべてを憎んでる、エスを殺されたから」
ユミ「エス?」
カナビス「ソアラの親友、それまでも無口だったけどエスが死んでからソアラは一度も口を聞いたことない」
ユミ「ワタシはソアラとしゃべったよ?あれはやっぱ偽物だったの?」
エクセ「あれはレーゼが操作してたロボットだ、ちなみにオレもそうだ」
カナビス「え!?」
エクセ「エクセは三年前のステラ爆破事件で死んだ、いましゃべってるこれもロボットで、ボク、レムニスケートが操作してる」
ユミ&カナビス「・・・・え~~~~~~っっっっ!!!??」
レム「よく出来てるだろ、戦闘用じゃなくて人間に似せたギアを作るのは、何百倍も大変だし、口元に不自然さが残る、それを隠すためにマスクをつけてる、そしてなるべく視線をさけるように行動してたしね」
ユミ「レムニスケートってギアのプログラムを書いた人でしょう?ゴッドファーザーじゃん、だからそんなに強いのか!」
カナビス「エクセは死んだのか!?」
レム「あぁ、三年前のステラ爆破事件で死んだ。アルカはインペリアのサイクロイドになっていた」
カナビス「嘘だろ!?アルカが?どうして?」
知らない人の話で盛り上がっている、アルカってあの赤髪のことか、島の子供なんだろうたぶん。あっⅢ番の人か、行方不明って言ってた。イズナもそうだったけれど結局この島の子供達の内部抗争に人類が巻き込まれてるんじゃないか。そんなに大事かよ、家族だの故郷だの・・・
レム「ソアラの行動は復讐とは言えないな。ソアラの復讐はもう終わっている、エスを殺した人間をソアラはすでに全員殺した。
ソアラの行動はアウルヴァっていう神に似てる。アウルヴァは正義の神で、悪人を燃やす炎を放つ。しかしある時「法の神」ダルマがアウルヴァに言った。
悪を行う人間は確かに悪ではあるが、その悪を見逃している人間が本当の悪ではないか?何故彼らは目の前で悪が行われているのに何もしない?何故見殺しにする?何故怒らない?何故戦わない?
現代の法、は何もしていない、ことを罪としていない。だけれど本当の悪は何もしないで見殺しにしてる人間ではないのか?と法の神ダルマは問うたわけだ。
アウルヴァは煩悶する、ダルマの言うことを聞くならば、すべての人間を炎で燃やさないといけない、燃やさないならば、アウルヴァは自分自身を悪を見過ごす悪として燃やさなければならない。
神話ではアウルヴァは人類を全滅させることを拒み、自分自身を燃やしたところを唯一神によって天空へと掲げられ太陽となった。ちなみにソアラ、という名前も太陽の光という意味だ」
ユミ「それはつまりアウルヴァは自殺したってことですか?」
レム「まぁそれを神話風に綺麗にまとめたんだろうね。だいたい神話には元になった話がある、アウルヴァという正義を求める人間がいて、正義のあり方に悩んで自殺したんだろうね
ソアラは誰よりも優しいやつだ、ただ純粋すぎる、だからボクもソアラを殺す気にならない、ソアラが選んだ選択を正しいとも思う」
カナビス「確かにオレもそう思う、ソアラは・・・なんていうか人間離れしてるよな、逆らう気にならないっていうのか・・・」
レム「あいつ、の狙いも人類を救うことにあったとボクは思っている。ただ人類を滅ぼすつもりなら、わざわざ津波なんて起こさなくても、もっとかんたんに死滅に追い込む手段をあいつは持っていたはずだ、ウィルスや細菌、遺伝子操作が一番簡単だ。
あいつ、は競争の無い世界を作ろうとした。
当然すぎる話だけれど、競争の最後は破滅だ。最後の最後まで戦いを続け、競争を続ければ勝者は一人になる。1人になればもう次の世代は生まれない。
だからあいつは宗教というものを人間に教えた。宗教はなんの役にたつのか?宗教は文明の進化を阻害してスローダウンさせる。競争の激化を抑えてコントロールしやすくする。それが結果的に人類の存続を可能にさせる。
あいつは人に知恵の実を食べるなと言った。まず言葉で説得してみた、知恵の実に触れなくても、食べ物も自然に実るようにしたし、自然は何も手を加えずとも自動修復する無限機関だ。あいつの作った自然のサイクルというシステムは完全無欠だ。完璧と言っていい。すべて用意した、なにも考えず幸せに生きるだけでいい。
けれどやはり知恵の実を食べる人間が現れた。自分たちが死ぬということを理解した人間は恐怖し、虚無に襲われ、あるいは永遠に生きる方法を探し初めた。
コトバだけでは破滅は止められない。次に言葉を手にした生き物を罰した、知恵を持って高い塔を立てた者たちを抹殺した。それが古代文明の崩壊の顛末だ。しかしそれでもまだ同じ過ちを繰り返す、打つ手無しだ。
審判を行うことにした、人間には良いやつだってその中にはいる、その中で最良の個体だけを残せば上手くやっていけるかもしれない。大海嘯は審判、のための兵器だ、絶滅のための兵器ではない。人類を破滅から救済するための兵器なんだ。
人類がこの先どんな選択をするにせよ、必ず犠牲が伴う、人口は過剰に増えすぎた。誰も何も考えずにその日暮らしで暮らした結果、破滅は避けがたい、この現実に至った。
文明には特異点がある、その一点をすぎると、それ以前にはもう戻れなくなる、アンドロイドの技術がもう少し進歩すれば、単純労働はアンドロイドに置き換えることが出来、不必要になった人間は原人が駆逐されたように歴史から姿を消し、二度と現れることはないだろう。そこまで文明が進歩すれば、もう不可逆的な進歩だ。おそらくアンドロイドの文明は宇宙の終わりまで存続出来るだろう。
なにかを完全に消滅させる方法は、それを殲滅しようとすることではなく、それの上位互換を作ることだ。人間より優れたモノが現れたら、人間は消える。それが良いのか悪いのかは個人の判断でしかない。人間は人間を超えるモノを作り、歴史から消えた、それで良いのだと考える人だっているだろう。それも一つの選択だ。
けれどそれはなんのための進歩なのだと考える人間もいるだろう。アンドロイドは欲望を持たない。死にたい、とも思わないだろう。
SF小説みたいにAIが勝手に意思を持ち始めて人類に反逆する、なんてことを本気で信じてるやつがいるけど、そういうやつはプログラムなんて一行も書いたことのない人間だ。AIに勝手に意思をもたせられるならそれは最も歓迎すべきことだ、それは人間の悲願だろう。あらゆるものにココロを与えることが出来る、まさにそれは神の力だ。
だけど物理的にそれは不可能だってわかるだろう?数列にどうやって命を与えることが出来る?コトバをどれだけ書き込めば本は喋りだす?どこまで詳細にプログラムしたところでココロ、のように錯覚させる、プログラムになるだけだ。AIは暴走などしない、して欲しいといくら願っても、誰か人間が書き込まない限り、AIは人間を滅ぼしてはくれないさ。
ただ永遠に存続し続ける機械だ。それは誰も使わないパソコンが倉庫にたくさんあるのと一体何が違う?それを人類の進歩の証として残すことが本当に僕らの望みか?
「あいつ」はそういうアンドロイド文明に置き換わりつつある文明の最後の1人で、別の文明が同じように「永久の平和」状態になってしまうのを阻止するためにやってきたのかもしれない。
アンドロイドだけじゃなく、核融合も洗脳兵器も、ナノ兵器も、文明の特異点はすぐそこまで迫っている、それを過ぎたらもうやり直しは効かない。
だから大海嘯というのも一つの選択だ、人間にはまだ最後の決定的な選択をするには時期尚早だ、そしてメリットもある。人の手によって粛清が成されれば、必ず新たな争いの火種になる。けれど自然災害ならば仕方ないと受け入れやすいだろう、まさか大津波が人為的に生み出されたとは誰も思うまいからね」
レムの話を聞きながら、ワタシは嫌なことを思い出してた。とびっきり嫌な事を。ソアラは大海嘯を起こして自殺するつもりだ、ハッキリとそれがわかった。
ユミ「・・・ワタシはソアラを止める、絶対に」
エクセ「だいたい一万年前くらいの話だ」
ユミ「っちょ!ちょっと待ってくください、説明してくれと頼んだけれど人類の文明の始まりから説明するつもりですか?手短に頼みますよ」
ステラは地下にあるらしく、通信が使えないので、有線のギアを積み込んでワタシ達は大急ぎで南極基地からエクセから鹵獲してあったアカシック型潜水艦で出発した。
乗り込んだのはワタシとエクセ、カナビス、そして操縦のロミヲさん。しっかり準備してあった、初めからこうなることをわかってたんだろう。そしてエクセに事情を説明してもらっていた。
カナビス「エクセはむかしっからそういう真面目すぎるところあるんだよなぁ、歴史の講義は寝ちまうよ、ざっくりわかりやすく教えてくれよ」
エクセ「まぁ聞けよ。今からだいたい一万年くらい前、正確な年月はわからない。けどそのあたりに謎の人物、人間なのかどうかもわからん「あいつ」とでも呼ぼう。あいつ、がこの星にやってきた、それが初めてだったのか何度も来たのかはわからない、とにかく別の文明から何者かがやってきた。
そいつは自分たちが死ぬ、という逃れがたい運命を背負わされているということにうっすら気づき、絶望を感じ初めていた人間たちを集めて奇妙な概念を植え付けていった。
宇宙が無から始まったということ、輪廻があるということ、あの世があるということ、神、というものがいること。狩猟生活でその日暮らしをしていた文明初期の人間には到底思いつくはずのないような概念を人間に植え付けていった。さらにあいつ、は火の扱いについても教えていった、だから「火を与えるもの」と呼ばれた、世界中にあいつ、は現れ、同じように死後の世界と火の扱い方を教えた」
ユミ「待ってくださいよ!まぢか?宇宙人とかそういう話?SFはじまったの?」
エクセ「宇宙人かどうかもわからない、もともとVarthにいた存在かもしれない。嘘みたいな話だけれどそうなんだから仕方ないだろ。あいつは、その後大海嘯を起こした、つまり大津波だ、生命の3分の2が溺れ死んだ、地層にはっきりその後が残っている。
この星には大きく4つのプレートが存在している、そのつなぎ目がちょうどマザー・シーの中心、つまり殉教者島の地下で重なり合っている。偶然と呼ぶにはあまりにも出来すぎている、あきらかに人為的、なんらかの意図的な采配によるものだ。
その4つのプレートの結節点に楔を打ち込むと、蓄積されたエネルギーが一気に解放されて大地震が起こり、大津波が起こる。つまりはあいつ、が大海嘯を起こすために作った装置がそのまま残されていたってわけだ。
その装置が見つかったからこそ、あいつ、が本当に存在したとわかったともいえる、三年前のステラの事件は正統教会騎士団がその大海嘯を起こそうとしたのを防いだことから起こった。
ソアラたちの狙いもこの大海嘯だ」
ユミ「でもなんの為にそんな大津波なんて起こすのです?」
カナビス「そりゃ復讐の為だろ、ソアラは人類のすべてを憎んでる、エスを殺されたから」
ユミ「エス?」
カナビス「ソアラの親友、それまでも無口だったけどエスが死んでからソアラは一度も口を聞いたことない」
ユミ「ワタシはソアラとしゃべったよ?あれはやっぱ偽物だったの?」
エクセ「あれはレーゼが操作してたロボットだ、ちなみにオレもそうだ」
カナビス「え!?」
エクセ「エクセは三年前のステラ爆破事件で死んだ、いましゃべってるこれもロボットで、ボク、レムニスケートが操作してる」
ユミ&カナビス「・・・・え~~~~~~っっっっ!!!??」
レム「よく出来てるだろ、戦闘用じゃなくて人間に似せたギアを作るのは、何百倍も大変だし、口元に不自然さが残る、それを隠すためにマスクをつけてる、そしてなるべく視線をさけるように行動してたしね」
ユミ「レムニスケートってギアのプログラムを書いた人でしょう?ゴッドファーザーじゃん、だからそんなに強いのか!」
カナビス「エクセは死んだのか!?」
レム「あぁ、三年前のステラ爆破事件で死んだ。アルカはインペリアのサイクロイドになっていた」
カナビス「嘘だろ!?アルカが?どうして?」
知らない人の話で盛り上がっている、アルカってあの赤髪のことか、島の子供なんだろうたぶん。あっⅢ番の人か、行方不明って言ってた。イズナもそうだったけれど結局この島の子供達の内部抗争に人類が巻き込まれてるんじゃないか。そんなに大事かよ、家族だの故郷だの・・・
レム「ソアラの行動は復讐とは言えないな。ソアラの復讐はもう終わっている、エスを殺した人間をソアラはすでに全員殺した。
ソアラの行動はアウルヴァっていう神に似てる。アウルヴァは正義の神で、悪人を燃やす炎を放つ。しかしある時「法の神」ダルマがアウルヴァに言った。
悪を行う人間は確かに悪ではあるが、その悪を見逃している人間が本当の悪ではないか?何故彼らは目の前で悪が行われているのに何もしない?何故見殺しにする?何故怒らない?何故戦わない?
現代の法、は何もしていない、ことを罪としていない。だけれど本当の悪は何もしないで見殺しにしてる人間ではないのか?と法の神ダルマは問うたわけだ。
アウルヴァは煩悶する、ダルマの言うことを聞くならば、すべての人間を炎で燃やさないといけない、燃やさないならば、アウルヴァは自分自身を悪を見過ごす悪として燃やさなければならない。
神話ではアウルヴァは人類を全滅させることを拒み、自分自身を燃やしたところを唯一神によって天空へと掲げられ太陽となった。ちなみにソアラ、という名前も太陽の光という意味だ」
ユミ「それはつまりアウルヴァは自殺したってことですか?」
レム「まぁそれを神話風に綺麗にまとめたんだろうね。だいたい神話には元になった話がある、アウルヴァという正義を求める人間がいて、正義のあり方に悩んで自殺したんだろうね
ソアラは誰よりも優しいやつだ、ただ純粋すぎる、だからボクもソアラを殺す気にならない、ソアラが選んだ選択を正しいとも思う」
カナビス「確かにオレもそう思う、ソアラは・・・なんていうか人間離れしてるよな、逆らう気にならないっていうのか・・・」
レム「あいつ、の狙いも人類を救うことにあったとボクは思っている。ただ人類を滅ぼすつもりなら、わざわざ津波なんて起こさなくても、もっとかんたんに死滅に追い込む手段をあいつは持っていたはずだ、ウィルスや細菌、遺伝子操作が一番簡単だ。
あいつ、は競争の無い世界を作ろうとした。
当然すぎる話だけれど、競争の最後は破滅だ。最後の最後まで戦いを続け、競争を続ければ勝者は一人になる。1人になればもう次の世代は生まれない。
だからあいつは宗教というものを人間に教えた。宗教はなんの役にたつのか?宗教は文明の進化を阻害してスローダウンさせる。競争の激化を抑えてコントロールしやすくする。それが結果的に人類の存続を可能にさせる。
あいつは人に知恵の実を食べるなと言った。まず言葉で説得してみた、知恵の実に触れなくても、食べ物も自然に実るようにしたし、自然は何も手を加えずとも自動修復する無限機関だ。あいつの作った自然のサイクルというシステムは完全無欠だ。完璧と言っていい。すべて用意した、なにも考えず幸せに生きるだけでいい。
けれどやはり知恵の実を食べる人間が現れた。自分たちが死ぬということを理解した人間は恐怖し、虚無に襲われ、あるいは永遠に生きる方法を探し初めた。
コトバだけでは破滅は止められない。次に言葉を手にした生き物を罰した、知恵を持って高い塔を立てた者たちを抹殺した。それが古代文明の崩壊の顛末だ。しかしそれでもまだ同じ過ちを繰り返す、打つ手無しだ。
審判を行うことにした、人間には良いやつだってその中にはいる、その中で最良の個体だけを残せば上手くやっていけるかもしれない。大海嘯は審判、のための兵器だ、絶滅のための兵器ではない。人類を破滅から救済するための兵器なんだ。
人類がこの先どんな選択をするにせよ、必ず犠牲が伴う、人口は過剰に増えすぎた。誰も何も考えずにその日暮らしで暮らした結果、破滅は避けがたい、この現実に至った。
文明には特異点がある、その一点をすぎると、それ以前にはもう戻れなくなる、アンドロイドの技術がもう少し進歩すれば、単純労働はアンドロイドに置き換えることが出来、不必要になった人間は原人が駆逐されたように歴史から姿を消し、二度と現れることはないだろう。そこまで文明が進歩すれば、もう不可逆的な進歩だ。おそらくアンドロイドの文明は宇宙の終わりまで存続出来るだろう。
なにかを完全に消滅させる方法は、それを殲滅しようとすることではなく、それの上位互換を作ることだ。人間より優れたモノが現れたら、人間は消える。それが良いのか悪いのかは個人の判断でしかない。人間は人間を超えるモノを作り、歴史から消えた、それで良いのだと考える人だっているだろう。それも一つの選択だ。
けれどそれはなんのための進歩なのだと考える人間もいるだろう。アンドロイドは欲望を持たない。死にたい、とも思わないだろう。
SF小説みたいにAIが勝手に意思を持ち始めて人類に反逆する、なんてことを本気で信じてるやつがいるけど、そういうやつはプログラムなんて一行も書いたことのない人間だ。AIに勝手に意思をもたせられるならそれは最も歓迎すべきことだ、それは人間の悲願だろう。あらゆるものにココロを与えることが出来る、まさにそれは神の力だ。
だけど物理的にそれは不可能だってわかるだろう?数列にどうやって命を与えることが出来る?コトバをどれだけ書き込めば本は喋りだす?どこまで詳細にプログラムしたところでココロ、のように錯覚させる、プログラムになるだけだ。AIは暴走などしない、して欲しいといくら願っても、誰か人間が書き込まない限り、AIは人間を滅ぼしてはくれないさ。
ただ永遠に存続し続ける機械だ。それは誰も使わないパソコンが倉庫にたくさんあるのと一体何が違う?それを人類の進歩の証として残すことが本当に僕らの望みか?
「あいつ」はそういうアンドロイド文明に置き換わりつつある文明の最後の1人で、別の文明が同じように「永久の平和」状態になってしまうのを阻止するためにやってきたのかもしれない。
アンドロイドだけじゃなく、核融合も洗脳兵器も、ナノ兵器も、文明の特異点はすぐそこまで迫っている、それを過ぎたらもうやり直しは効かない。
だから大海嘯というのも一つの選択だ、人間にはまだ最後の決定的な選択をするには時期尚早だ、そしてメリットもある。人の手によって粛清が成されれば、必ず新たな争いの火種になる。けれど自然災害ならば仕方ないと受け入れやすいだろう、まさか大津波が人為的に生み出されたとは誰も思うまいからね」
レムの話を聞きながら、ワタシは嫌なことを思い出してた。とびっきり嫌な事を。ソアラは大海嘯を起こして自殺するつもりだ、ハッキリとそれがわかった。
ユミ「・・・ワタシはソアラを止める、絶対に」
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