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第36話 天使
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ソアラ
エクスへの移住のボートは殉教者島の人々だけじゃなくて、他にも島が沈んだアイランダーの難民でいっぱいだった。操縦をしてるエクスの軍人が妙に神妙な面をしてるのが気になった。
ソアラ「落ちないように気をつけなよ」
エス「うん・・・」
人混みに慣れてないエスが苦しそうにしてた、少しでもスペースが確保出来るようにワタシが外に乗り出した、近くにいた老婆もエスが苦しそうにしていたのでちょっとでも場所を空けようとしてくれた。
エクスの領海に入るか入らないうちに、もう一隻ボートが近づいてきた、それには機関銃が装着されていた、近くにいた老婆が叫んだ。
老婆「伏せて!」
移民船は機銃掃射で蜂の巣になった、ワタシ達のボートを操縦していた兵士がなにか叫んで、その人も撃たれて海に落ちたのを見た。
一通り撃ち終わって後、そのボートは逃げるように去っていった。
エスがワタシの上に覆いかぶさって血まみれになっていた。
エス「良かった、ワタシにも誰か救えた、ソアラ、生きて・・・絶対死なないでね」
ボートで生き残っていたのはワタシだけだった、老婆とエスがワタシに覆いかぶさってくれたために、ワタシだけが生き残った。
怒りも憎悪もその時は無かった、ただ、唖然としていた、声が出なかった。
その後のことは全然覚えてない、気づけばワタシは、正統教会の船に助けられていた。
正統教会騎士団長クロード・ホーリィナイト
ワタシは神などまったく信じていない、教会内部の人間で神を信じてる人間など1人もいない。いや信じていようがいまいが関係ないのだ。神がいようがいまいがなにも変わらぬ。
ただ一つ確かなのは神は何もしないということだ
何もしないからこそ神なのだ。神が誰かを救ったら、それは神の堕落だ。神が人間に堕ちることになる。誰も救わないからこそ公平で正しい神なのだ。
教会など不要だと考えている連中は、まったく的はずれだといえる。
宗教と国家は不可分のセットだ。宗教以外で死後の世界を保証するものはなにもない、死後の世界を信じない人間が、自分の命をかけて戦おうとするわけがないのだ、死後の世界があるから、善が意味を持つ、魂が不滅だからこそ、生に意味がある、宗教がなくなれば、国家もなくなる。宗教がなくなれば文明もなくなる。
そして宗教こそが最強の兵器でもある。
宗教は死霊の兵器だ。国家という兵器は強者を集め、財閥を集め、強者が弱者を支配しようとする兵器、宗教はその真逆、国家に寄生し、弱者をあつめ、病を撒き散らし、内臓を食い破る。
宗教の信徒がどれだけ弱かろうと、彼らは死人だ、死などまるで恐れない、ただ足に捕まってはいずり回るだけでもいい、弱者は倒せば倒すほど無限に生まれる、どれだけ倒してもキリがない。戦いが続けば続くほど死人は増え続ける。歴史上、常に死人たちが勝利して滅びをもたらした、宗教という兵器にはどんな兵器もかなわないのだ。
世界に弱者が存在する限り、宗教は勢力を盛り返し、全てに死を撒き散らす、成長を阻害し、あらゆるものを腐らせ、知能を麻痺させる。
最後には必ず我々教会騎士団が世界を統べることになる。
エクスから帰途の戦場で、血まみれのボートに出会った。おそらく難民を乗せていたのだろう、移民排斥を訴える集団に虐殺されたようだ。
ただそのボートの上に血まみれの少女が1人立っていた。
神などまったく信じていないが、なにかその少女には、宗教的な、ものを感じた。生まれて始めての経験だ。
我が教会にももちろん聖書が存在する、聖書にはつきものの、教会に逆らったものを罰するための物語、地獄の恐怖を伝えるための物語も当然存在する。当然全部でたらめのうそっぱちである。ただ分量が膨大にあり表現も曖昧なため、これは未来を予測していた、と主張することも容易である、ようするに占いと同じである。
予言の書、第273章
血の海より殺戮の天使現れぬ
世界を燃やす者
その蒼き目に炎を宿す者・・・
災厄の白き炎 燎原の野に放たれん
浄化の炎 諸人を燃やし
大海嘯 地に積もりし灰を洗い流す・・・
これにより人の世の再生が成される
血まみれで、目は飢えと渇きでギラつき、悪魔のようだったが、なぜかワタシにはそれが「天使」というものなのだという実感があった。神などまったく信じないが、これはまさしく地上に降り立った天使であった。
天使、はコトバを発することは無かった。ワタシは天使を正統教会騎士団の指導者として訓練した。天使は常人とは異なる時間に存在してるように、あらゆる戦闘で人よりも抜きん出ていた。
天使は復讐を開始した、エクスに侵入し、移民排斥を訴える党派の人間を片っ端から贖罪した。
しかし、天使が乗っていた船に虐殺を行ったのは、移民排斥派ではなかった。移民排斥派の勢力を削ぐために、政府与党がでっちあげに虐殺を行い、それを移民排斥派のスキャンダルとして利用する、ネガティブキャンペーンとして仕組まれた事件であった。
天使と私は事件に関係した人間を1人残らず始末していったが、エクス上層部と関係があった首父ペルムが我々の行動に文句を言い出した。
我々はディヴァインハート家を全員秘密裏に始末した、その血の一滴も残さないように親類縁者、世界で一番歴史のある一族をことごとく歴史より抹消した。
陰謀の首謀者の最後に放ったコトバが印象的であった。彼も天使と似た境遇で、移民として散々迫害にあったために、移民排斥派にどんな手段を使っても復讐しようと考えていたようだ。
「オレの代わりに全てのクズどもを殺してくれ、この腐った世界をすべて燃やしてくれ」
天使の復讐は終わった、そこへレーゼというSaintの代表がコンタクトをとってきた。大海嘯を起こす方法を教えてくれた、すべては運命に導かれるように、我々は世界の中心地、ステラに向かった。
今では誰も我らの天使様が神の意思を達成するものだということを疑う者はいなかった。
エクスへの移住のボートは殉教者島の人々だけじゃなくて、他にも島が沈んだアイランダーの難民でいっぱいだった。操縦をしてるエクスの軍人が妙に神妙な面をしてるのが気になった。
ソアラ「落ちないように気をつけなよ」
エス「うん・・・」
人混みに慣れてないエスが苦しそうにしてた、少しでもスペースが確保出来るようにワタシが外に乗り出した、近くにいた老婆もエスが苦しそうにしていたのでちょっとでも場所を空けようとしてくれた。
エクスの領海に入るか入らないうちに、もう一隻ボートが近づいてきた、それには機関銃が装着されていた、近くにいた老婆が叫んだ。
老婆「伏せて!」
移民船は機銃掃射で蜂の巣になった、ワタシ達のボートを操縦していた兵士がなにか叫んで、その人も撃たれて海に落ちたのを見た。
一通り撃ち終わって後、そのボートは逃げるように去っていった。
エスがワタシの上に覆いかぶさって血まみれになっていた。
エス「良かった、ワタシにも誰か救えた、ソアラ、生きて・・・絶対死なないでね」
ボートで生き残っていたのはワタシだけだった、老婆とエスがワタシに覆いかぶさってくれたために、ワタシだけが生き残った。
怒りも憎悪もその時は無かった、ただ、唖然としていた、声が出なかった。
その後のことは全然覚えてない、気づけばワタシは、正統教会の船に助けられていた。
正統教会騎士団長クロード・ホーリィナイト
ワタシは神などまったく信じていない、教会内部の人間で神を信じてる人間など1人もいない。いや信じていようがいまいが関係ないのだ。神がいようがいまいがなにも変わらぬ。
ただ一つ確かなのは神は何もしないということだ
何もしないからこそ神なのだ。神が誰かを救ったら、それは神の堕落だ。神が人間に堕ちることになる。誰も救わないからこそ公平で正しい神なのだ。
教会など不要だと考えている連中は、まったく的はずれだといえる。
宗教と国家は不可分のセットだ。宗教以外で死後の世界を保証するものはなにもない、死後の世界を信じない人間が、自分の命をかけて戦おうとするわけがないのだ、死後の世界があるから、善が意味を持つ、魂が不滅だからこそ、生に意味がある、宗教がなくなれば、国家もなくなる。宗教がなくなれば文明もなくなる。
そして宗教こそが最強の兵器でもある。
宗教は死霊の兵器だ。国家という兵器は強者を集め、財閥を集め、強者が弱者を支配しようとする兵器、宗教はその真逆、国家に寄生し、弱者をあつめ、病を撒き散らし、内臓を食い破る。
宗教の信徒がどれだけ弱かろうと、彼らは死人だ、死などまるで恐れない、ただ足に捕まってはいずり回るだけでもいい、弱者は倒せば倒すほど無限に生まれる、どれだけ倒してもキリがない。戦いが続けば続くほど死人は増え続ける。歴史上、常に死人たちが勝利して滅びをもたらした、宗教という兵器にはどんな兵器もかなわないのだ。
世界に弱者が存在する限り、宗教は勢力を盛り返し、全てに死を撒き散らす、成長を阻害し、あらゆるものを腐らせ、知能を麻痺させる。
最後には必ず我々教会騎士団が世界を統べることになる。
エクスから帰途の戦場で、血まみれのボートに出会った。おそらく難民を乗せていたのだろう、移民排斥を訴える集団に虐殺されたようだ。
ただそのボートの上に血まみれの少女が1人立っていた。
神などまったく信じていないが、なにかその少女には、宗教的な、ものを感じた。生まれて始めての経験だ。
我が教会にももちろん聖書が存在する、聖書にはつきものの、教会に逆らったものを罰するための物語、地獄の恐怖を伝えるための物語も当然存在する。当然全部でたらめのうそっぱちである。ただ分量が膨大にあり表現も曖昧なため、これは未来を予測していた、と主張することも容易である、ようするに占いと同じである。
予言の書、第273章
血の海より殺戮の天使現れぬ
世界を燃やす者
その蒼き目に炎を宿す者・・・
災厄の白き炎 燎原の野に放たれん
浄化の炎 諸人を燃やし
大海嘯 地に積もりし灰を洗い流す・・・
これにより人の世の再生が成される
血まみれで、目は飢えと渇きでギラつき、悪魔のようだったが、なぜかワタシにはそれが「天使」というものなのだという実感があった。神などまったく信じないが、これはまさしく地上に降り立った天使であった。
天使、はコトバを発することは無かった。ワタシは天使を正統教会騎士団の指導者として訓練した。天使は常人とは異なる時間に存在してるように、あらゆる戦闘で人よりも抜きん出ていた。
天使は復讐を開始した、エクスに侵入し、移民排斥を訴える党派の人間を片っ端から贖罪した。
しかし、天使が乗っていた船に虐殺を行ったのは、移民排斥派ではなかった。移民排斥派の勢力を削ぐために、政府与党がでっちあげに虐殺を行い、それを移民排斥派のスキャンダルとして利用する、ネガティブキャンペーンとして仕組まれた事件であった。
天使と私は事件に関係した人間を1人残らず始末していったが、エクス上層部と関係があった首父ペルムが我々の行動に文句を言い出した。
我々はディヴァインハート家を全員秘密裏に始末した、その血の一滴も残さないように親類縁者、世界で一番歴史のある一族をことごとく歴史より抹消した。
陰謀の首謀者の最後に放ったコトバが印象的であった。彼も天使と似た境遇で、移民として散々迫害にあったために、移民排斥派にどんな手段を使っても復讐しようと考えていたようだ。
「オレの代わりに全てのクズどもを殺してくれ、この腐った世界をすべて燃やしてくれ」
天使の復讐は終わった、そこへレーゼというSaintの代表がコンタクトをとってきた。大海嘯を起こす方法を教えてくれた、すべては運命に導かれるように、我々は世界の中心地、ステラに向かった。
今では誰も我らの天使様が神の意思を達成するものだということを疑う者はいなかった。
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