Varth統一戦史

SummerSky

文字の大きさ
上 下
4 / 50

第4話 Slow Diver Down

しおりを挟む
エレノア

 いよいよ今日から世界革命戦争を始める。けれどあまり緊張感が無い、Saintの南極基地は海底トンネルを除けば侵入不可能、そのトンネルも今は閉鎖された。
 もともと核廃棄物処理施設という名目で建築されたこの基地は、核ミサイルには相当な耐久力がある。ディープスロート核ミサイル(地下構造の破壊を目的としたミサイルのこと)は世界には3発しかない、全てインペリアの原子力潜水艦「リベレーション」に積んである。
 その3発をすべて打ち込んだとしても、計算上この基地のボクがいるこの部屋、司令室までは到達しない。
 世界が滅びるとして、ここが滅びるのは最後から何番目かだ、おそらく最後の人類が残るのは2つの宇宙ステーションだろうけど。

 とにかく自分だけはひどく安全な場所にいて、世界を破滅させるか、存続させるかの指示だけをだすってのは結構無感動なものだ。本当にシミュレーションゲームをやってるみたいなもの、失敗しようが成功しようがあまりどうでもよい気がする。それにボクはただのオペレーター、レムの考えた作戦を実行するだけだ・・

 そうじゃないのかもしれない、安全だろうが危険だろうが、ボクがこの世界に対してあまりセンチメンタルじゃないというだけなのかもしれない。それは圧倒的に時間の問題だ、ボクとこの世界の付き合いは短い、記録上14年生きているけれど、実質はモディフィア手術を受けてからの4年だけだ。それより前の記憶は本当に何一つ覚えていない、4年だけでそこまで強い思い入れは生まれようがない。
 生の実感もまだ薄い、だから死、もまだ何かわかっちゃいない。ましてや殉教者島にいたのは0歳のときの数ヶ月だけだ、島にはなんの思い入れも、ボクにはないのだけど・・・
 そんなこと考えてても仕方ない、仕事しよう。

 Operation 「Slow Diver Down」 起動。
 プログラムもレムがほとんど記述していてオートで起ち上がる、ボクはオペレートするだけだ。こんな仕事誰にでも出来る。倫理的ブレーキがかからない人間なら。

ネル(エレノアのニックネーム)「オペレーション開始、みなさん感度はどうですか?」
ソアラ「・・・問題無し」
イズナ「おっけー!」
ユキ「おけはざま」
ネル「ではソアラ、潜航開始」

 ギアの輸送無人機からソアラのギアミサイルが射出されて海に潜っていった。目標はローグの原子力潜水艦「世界革命号」。信じられないくらいダサい名前の船だ。
 とにかくバカでかくて、兵器の搭載量も世界一、ローグの誇張した公式発表によれば、世界を三回滅ぼしてもおつりがくる、ほどの火力を持っているとのことだ。
 そして鈍重で機動力は0に等しく、ただの的、海のサンドバッグ。Great Warでローランが同じようなバカでかいだけでなんの役にも立たない空母を作っていた。ローグはそれから何も学ばなかったらしい、というより、ローグはあの頃のローランに憧れを抱いてるのかもしれない。

 奇しくも、ボクらの馬鹿げた夢と同じ名前の船だ。まるでボクらに奪取して使ってくださいと言わんばかり。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...