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しおりを挟む「…慶介君の事…ごめん…今さらなんだけど…。」
絵梨は俯いて言った。
「ずっと…謝りたかったんだ…。」
絵梨は薄っすら涙を溜めているようだった。
「ほんと今さらよ…。」
朋美は頬杖をついて言った。
「…私…最低だよね…」
絵梨は言った。
「…今だからそう思うのかもしれないけど…私ね、あの時、慶介君が絵梨のそばにいて良かったって思う…。」
朋美は言った。
「え?」
朋美の意外な言葉に絵梨は顔を上げて朋美を見つめた。
「…あの状況で…私だったらどうなってたか分からない。縋り付ける人がいれば、誰かれ構わず縋り付いてたかもしれない。もちろん、絵梨が誰かれ構わず縋り付いてたって訳じゃ無いよ。あの場に慶介君がいたのは運命だったのかもしれない。そして慶介君も絵梨と出会ったことで自分の苦しみを共有出来たんじゃないかって思うの…。」
朋美がそう言うと、絵梨の目からポロポロと涙がこぼれた。
「あの頃はさ、私も若かったし…慶介君の事…子供の頃からずっと憧れてたし…絵梨は親友だったし…二人に裏切られたって…思ってたけど…でも実際、慶介君は私の事なんて妹みたいにしか思ってなかったのよね…。だから私がとやかく言うなんてお門違い…。」
「…朋美…」
「先に二人で乾杯しよっか?」
「うん。」
二人はビールを注文して乾杯した。昔に戻った気分になった。
「ちょっとぉ~! フライングよ!」
駆け付けたモッコが叫んだ。
「ごめん、ごめん!」
朋美と絵梨は笑いながら言った。
―ずっときっかけが無くて言えなかったけど、絵梨とわだかまりが溶けて良かった…
朋美は思った。
―嬉しい…。また朋美と昔みたいに付き合えるなんて…。
絵梨は幸せを噛みしめた。
「お久しぶり!」
最後に沙也加が登場した。
「やっと来たわね!」
朋美はニヤリと笑って言った。
「遅かったじゃな~い! 何してたのよぉ~?」
モッコは文句を言った。
「あら…モッコだって来たばっかりでしょ!」
絵梨はモッコをたしなめた。モッコは顔をクシャっとして笑った。
「さぁ~て…何から話そうか…。」
沙也加がみんなを見回して言った。
みなお互いを横目でチラチラ見ながらニヤリと笑った。
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