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しおりを挟む朋美はギリギリまで仕事をしていた。ハッと時計を見ると、もう既に5時を過ぎていた。
―そろそろ支度しなくちゃ…
モッコが予約してくれた店は駅の近くで歩いて行ける場所にあった。
集まるメンバーは昔から知っている友達なのでラフな格好でもいいかな…と思ったが、オシャレな雰囲気の店だったので、失礼のない程度にはオシャレをすることにした。
朋美はクローゼットを開けると、薄いベージュにネイビーの幾何学模様が入ったボウタイブラウスとネイビーのシンプルなタイトスカートを取り出して着替えた。
簡単にメイクを済ませてフープピアスを付け、スカートとセットアップのジャケットを羽織り、低めのヒールのパンプスを履いた。
そして夜、寒くなる事を考えてショールをバッグの中に忍ばせた。
駅に向かう並木道を歩いて行くと、横田の働くカフェの前に来た。
朋美は窓越しに横田の姿を探した。しかし彼の姿は無かった。
―今日は休みなのかしら…
朋美はまた駅へ向かって歩き出した。
慌てて準備を始めたにも関わらず、一番先に店に到着したのは朋美だった。
店員から案内されて、奥の個室に入った。
そこは6畳程の部屋で、壁面は薄いグレーの石を組み合わせた壁、右手の壁はガラス張りになっていて、外には和風の坪庭が見えた。
暗めの室内には和紙で出来た間接照明がいくつか置いてあり、和やかな雰囲気を漂わせていた。
朋美は出された暖かいお茶を飲みながらその空間の雰囲気に癒された。
「失礼いたします。お連れ様がいらっしゃいました。」
店員が声を掛けて戸を開けた。
店員が去ると後ろから現れたのは絵梨だった。
最後に会ってから十数年が過ぎたというのに絵梨は全然変わっていなかった。
いや、変わっていないどころか、昔よりももっと美しくなっていた。
透き通るような白い肌に緩くウェーブのかかった長い髪が絵梨を一層儚げに見せた。
シンプル過ぎる程のワンピース姿が、スタイルの良さで品よく見える。
絵梨の放つオーラは一般人のそれとはかけ離れたものだった。
ー引退して十数年経ったというのに…。
うつむきながら個室に入った絵梨は、顔を上げて朋美と目が合うと、少し緊張したような表情をした。
「久しぶりね。」
朋美が先に声を掛けた。
「お久しぶり。」
絵梨が答えた。
「まだみんな来てないのよ。」
朋美は絵梨に向かい側の席を促しながら言った。
「…みたいね。」
絵梨は席に着いた。
「元気にしてた?」
朋美は笑顔で言った。
その表情を見て絵梨は少し困ったような嬉しそうな表情を浮かべた。
「…私…本当は今日ここへ来るのが怖かった…。朋美と…どんな顔をして会えばいいのかって…ずっと思ってたから…」
絵梨は俯いて話した。
「…昔の事じゃない。」
朋美は呟いた。
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