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しおりを挟む和也は一週間の出張から帰国した。
入国審査の列に並んでいると、隣の列の前方に見たことがある女性がいるのに気付いた。
―あれは…出国の時に会った朋美の友達じゃないか?
たった一度、挨拶程度にしか会ってないが、和也はその女性を忘れる事は無かった。
列が動いて和也の番になった。
見るとその女性はすでに入国審査を終えて前に歩いて行っている。
和也は審査官から返されたパスポートを急いで受け取ると、その女性の後を追った。
しかし見渡してもその女性の姿は見つからなかった。仕方なく手荷物受取場に向かった。
手荷物受取場は人でごった返していた。しばらくまって自分のスーツケースを手に取ると、和也はきさらぎガーデンヒルズ行のバス乗り場へ向かった。
すると、バス乗り場にはあの女性が列に並んでいた。
行先を見ると和也と同じ、きさらぎガーデンヒルズ方面だった。
和也は急に胸が高鳴った。その時、バスがやって来て、女性は乗り込んだ。和也も急いで中に入った。
バスの中を見ると、その女性は後方から三番目の窓際の席に座っていた。横には誰も座っていなかった。
「…あの…横…いいですか?」
和也は声を掛けた。
「どうぞ!」
絵梨は和也の方を振り返った。
「…あ!」
絵梨も和也に気が付いた。
「奇遇ですね!」
和也は照れながら言った。
「…今日、お帰りだったんですね…。」
絵梨が言った。
「はい。あなたも…。あの! 僕、あなたのお名前を窺ってなくて…。」
「あぁ…すみません。私ったら名乗りもせずに…。白川…絵梨…と申します。」
「…白川絵梨…さん。良かった、お名前を聞けて! 帰って朋美に誰だったのって言われるとこだった。」
「…奥様は今日はお迎えにいらっしゃらないんですか?」
「彼女は今日、仕事が入ってて…。」
「…そうですか…。」
そう言って微笑みながら俯く絵梨を和也はポーっとして眺めた。
―本当に綺麗だな…。一般人とはオーラが違う…。もしかして芸能人か?
和也は失礼と気付けないほど絵梨をマジマジと見てしまった。
「…あの…どうかされました?」
絵梨が言った。
「あ…いえ…別に…」
和也はハッとして視線を逸らした。
「…すみません…その…絵梨…さんが…その…芸能人みたいに…その…オーラが出てるので…つい見とれちゃって…」
和也が照れながら言った。
絵梨はその言葉にビクっとして顔を硬直させた。和也はその様子を見て、何か悪い事でも言ったかと思った。
「すみません。僕、何か気に障ることでも…言っちゃったかな…。」
和也は上目遣いに絵梨を見た。
「…朋美から私の事…何も聞いてませんか?」
―朋美から…? 何も聞いてないどころか、彼女の存在すら聞いたことが無い…。
「いえ…何も…。」
「…そうですか…」
絵梨は戸惑ったような表情を浮かべた。
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