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しおりを挟む関西からの出張から帰ってきた浩太は小さなキャリーバッグを引きずって、きさらぎガーデンヒルズ駅に降り立った。駅を出ると外はもう暗かった。
―だいぶ日が短くなってきたな…。
肌寒さに浩太はブルっと震えた。トレンチコートの襟を立てて、駅前の並木通りを足早に歩いた。
「…何で? どうしてなのよ…。」
ビルの間から女性の悲しそうな声が聞こえてきた。
―どこかで聞いたことがある声だ…。
浩太は思った。しかし自分には関係無いと思い、その場を通り過ぎようとした時、ふと見るとあの子がいた!
―リクとルイのダンスの先生!
ダンスの先生・高梨ユナの前には彼女と同年代の若い男が立っていた。ユナはその男の胸を叩こうとして腕を上げると、男に両手を握られて止められた。
「私…納得できない! 絶対に別れないから!」
ユナは泣き叫んだ。
「…いくら言っても無駄だ。俺が会わなかったらそれまでだろ…。」
男は冷たく言い放った。
「あの女と付き合う気なんでしょ! はっきり言いなよ!」
「…話になんねーな…」
男はそう言うとユナの腕を乱暴に離し、その場を去ろうとした。
「待って! 悪いところがあるなら治すから! だから別れるなんて言わないで!」
ユナは男にしがみついた。
「もう無理だ。正直、おまえの顔も見たくないって思ってる…。」
男はそう言うとその場を去って行った。
ユナは体の力が抜けたようにその場にへなへなとしゃがみ込んだ。その様子を目撃してしまった浩太はそこから離れる事が出来なかった。
「これ…使ってください。」
浩太はポケットティッシュを取り出してユナの前に差し出した。
ユナは浩太を見上げた。その顔は涙と鼻水でグシャグシャになっていた。
「…すみません。」
ユナはそう言って小さくお辞儀をし、そのティッシュを受け取った。
「…失礼します。」
浩太はそう言ってその場を去ろうとした。
するとユナは
「あの…リクちゃんとルイ君のパパさん…ですよね?」
と言った。
一度しか会ったことが無いのにユナは浩太の事を覚えていた。浩太はこの場に不謹慎だと思いながらも嬉しかった。
「あの…さっき…見てましたよね…」
ユナは涙をティッシュで拭いながら言った。
「す…すみません!」
浩太はとっさに頭を下げて謝った。
「あ…いえ…そういう意味では無くて…あの…パパさん…お時間ありますか?」
「え?」
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