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しおりを挟む―俺は結婚相手を間違えた…。
沙也加の夫、高橋輝也はつくづくそう思った。
―女は見かけじゃない…中身だ! 若い頃に気付けばこんな人生歩んでなかった筈だ…。
輝也は家中のゴミを集めながら溜息をついた。
今日は月曜、可燃ゴミの日だ。輝也は家中のゴミを集め終わると玄関の前に置いた。
朝食のゴミが出るから、それを入れて出勤前にゴミ置き場に持っていくのが毎週2回の彼の仕事になっている。
と言っても、彼の家での仕事はまだまだある。
風呂に入るのは一番遅くなるので、上がった後にお湯を抜いて掃除をする。
週2回の可燃ごみの日には、排水溝にたまったゴミを取って一緒に捨てる。
週末は家中の掃除機かけ。
他にも細々した雑用がたくさんあり、挙げるとキリが無い。
輝也は男性が家事をするのは当たり前だと思っている。
妻も仕事をしているし、だいたい家事が女性の役割であるべきだとは思ってもいない。
お互い出来る事を出来る範囲で協力する。それが正しい夫婦の在り方だと思っている。
結婚前にも妻・沙也加にそう言った。沙也加はその考えにいたく感動していた。
あなたは他の男性とは違う! 素晴らしいわ! 確かにそう言っていた。
自分達は未来志向で新しい家族像を作っていこう! 二人でそう誓った。
が!
それが仇となった。
妻がほとんど家事をしない! たまにしても雑すぎるし態度がデカすぎる!
「こっちは仕事で疲れて帰って来てるってのに夕食の準備してんだよ! あんた片付けやってよね! ってか、残業って…何で時間内に終わらせないのよ! ちんたら仕事してるから残業しなきゃいけなくなるんじゃないの?」
と、妻は咆哮した。
―夕食の準備したって…これ全部買ってきた総菜じゃないか…。
と、思いはすれども言葉には出せない。ウッカリそんなこと言おうものなら10倍返しがやって来る…。
「私、疲れたからあんた片付けやっといてね。」
沙也加はそう言うと風呂へ行った。
初めからそう来ると思っていたけど実際に言われるとウンザリする。食べ終わって食器を流しに持っていくと、息子の純がそれを手伝ってくれた。
―純…
輝也は息子の優しさに涙が出そうになった。
「…パパ…」
純が呟くように輝也に言った。
「何?」
輝也が聞くと、純は上目遣いでジッと輝也を見つめた。
「何でママと結婚しようと思ったの?」
純は真顔で聞いてきた。
「何でって…」
輝也は答えに困った。
「…僕なら絶対しない…」
純はそう言うと自分の部屋に戻っていった。
輝也は一人キッチンに残された。
―何で沙也加と結婚したかって? …何でって…。俺…何で沙也加と結婚したんだろう…。
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