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しおりを挟む「…浮気…」
モッコはそう言うと唾を飲み込んだ。
「…って、そんなことある訳無いじゃない! 考えてもみてよ、浮気って相手がいるのよ!うちの夫みたいな冴えない中年男をわざわざ好きになる人なんていないでしょ!」
モッコはケタケタ笑った。
「そんな事…分かんないわよ! 浩太さんって優しそうだし、エリートだし…。」
朋美はコーヒーを飲みながら上目遣いでモッコを見た。
「無いない! ある訳無い! あの人、下腹だって出てきてるし、人前で平気でオナラするし、全然オシャレじゃないでしょ? 多分、今まで付き合ったのって私だけだもん。女慣れしてないのよ。そんな人が愛人なんて作れる訳無いでしょ!」
モッコはまたクッキーをばくばく食べ始めた。
「そう? 分かんないわよ、男は…。」
朋美もクッキーをつまんだ。
「それはそうとさ、今度皆で集まるって言ってたでしょ! 来週末の金曜の夜はどう?」
モッコが言った。
「私は大丈夫よ。」
朋美は答えた。
「絵梨がね、今、海外に行ってるのよ。帰りが来週になるんだって。」
「そうなの…。」
「絵梨ね、フリーで通訳の仕事してるんだって。私、ビックリしちゃった。」
「そうなんだ…。芸能界とは全く別の仕事をしてるのね…。」
「絵梨ってさ、高校時代、まともに学校に来てないじゃない。勉強する暇なんて無かっただろうにさ、フリーでやってけるって…大きなコネでもあるのかな…。いいなぁ~! 羨ましい! 私なんてしがない専業主婦だってのに!」
モッコは不満タラタラにクッキーを食べ続けた。
「そんな事言うもんじゃ無いわよ。きっと血の滲むような努力をしたんだと思うわ。あの子の事だからそんなのお首にも出さないだろうけど…。」
「…そうね。絵梨は昔からそうだったよね。さすが朋美は絵梨の親友だけあって、あの子の事良く分かってるよね。」
―親友…。そうだ…私と絵梨は親友だった…。
朋美は遠い目をした。
「あんなに仲が良かったのに、何で今は連絡取ってないの? もしかしてケンカしたとか?」
モッコが聞いた。
「…ううん。高校卒業して、それぞれ進路が別れちゃったでしょ。そうなると自然と会わなくなるよね…。」
「ま、それは言えるよね…。現に私と朋美もそんなに会ってなかったしね。」
モッコは満腹になったのか、椅子にもたれかかってお腹をさすった。
「絵梨は私と会う事…戸惑ってなかった?」
「え? どうして? 戸惑う理由なんて無いじゃない! ん~そう言えば…何か言ってたな…」
モッコは頬杖を突き、天井を見上げながら思い出していた。
「後悔してる…って。」
モッコの口からそう聞いて、朋美の胸はズキンと痛んだ。
「絵梨ったら、何を後悔してるんだろうね。私が聞いても教えてくれなかったけど…。気になるわ~。」
朋美は動悸がしてきた。
冷蔵庫から水を取り出し、さらにコップに氷を沢山入れて水を飲んだ。深呼吸を何度かすると、少し落ち着きを取り戻した。
「それよりさぁ、沙也加なんだけどさぁ、あの子ったら…」
モッコが沙也加の事を一生懸命話していたが、朋美の頭には全く入ってこなかった。
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