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「意外だな…キャンプとか嫌いなのかと思ってた。」

「昔のキャンプ場のトイレとか汚いイメージだったから行きたいって思わなかったんだけど…最近はすごくキレイだし…不安材料無くなったからハマったって言うか…」

「…そうなの…」

「…ごめん…ほんとは登山は苦手だった。」

「いや…謝ることじゃないけど」

「でも…自然は好きよ。それは本当。でも私、体力無いから…運動とかも苦手だし…。体力あったら登山もきっと好きだったと思うんだけどね…」

「言ってくれれば良かったのに…。初めて会った時から登山の話で盛り上がったから、てっきり好きなのかと思ってた。…俺が無理させてたんだな…」

「…ごめん…。打算入ってた…。」

「…いや…もしかしたら無理させるような空気俺が作り出してたのかもしれない…ごめん…」

「私ね…結婚がしたかったの。年齢的にも出産とか考えるとちょっと焦ってたとこあって…。だから…なんとしてでも浩平と結婚したくて…自分を偽ってた…」

「…」

「…だけどね…誰でもいいって思ってたわけじゃないよ。浩平…私の好みだったから…。この人だ!って…ほんとにそう思ったの…」

「…こうやって…二人でちゃんと話して…お互いの妥協点とか出せたら良かったのかもな…」

「いや、無理でしょ!」

「どうして?」

「だって、あの頃の私、浩平の顔見ると文句ばかりで、自分の事分かって欲しいの一点張りだったから…」

「…そんなこと言ったら俺だって純の気持ち無視して逃げ出してたよ…」



お互い俺が悪かった、いえいえ私が悪かったって、昔じゃ絶対出てこなかった言葉を言い合って、なんだかおかしくなってきた。純もそう思ったみたいで、笑い出した。


 今の二人だったら…もしかしたら…いい関係作れるんじゃないか?

「あのさ、純…」

「あ! 見て! お月様!」

見上げると空にはきれいなお月様

「女将に会いたくなっちゃうなぁ~」

「えっ?」


 まさかタヌキ女将じゃないだろうな? 


俺は横にいる純を見た。純の横顔に月光があたって、なんだか以前より可愛く見えた。

 純…なんか変わった?
 この短期間に何かあったの…


「浩平、今度さ、良かったら一緒にご飯食べに行かない? もちろん友達としてって思ってくれて構わないから。連れて行きたいお店があってさ…」

「行きたい。俺も純を連れて行きたい店があるんだ。」


「辿り着けるかどうかは分からないんだけど」


二人同時に言って、驚いて顔を見合わせた。

 …もしかして…
 …もしかして…


 …あのおもしろかわいいタヌキ女将の小料理屋…?


夜空のお月様は、さらに輝きを増して二人を照らしていた。





―第二章 終りー

第三章に続きます。


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