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しおりを挟む俺は寝ている女将に話し続けた。
「女将…俺さ、さっきからいかに俺の元カノが嫉妬深くて愚痴ばっかり言う最悪な女だって言ってるけど…俺も同じことしてるよな…」
俺は残りのハイボールを飲み干した。
「同類でもいいじゃない? 吐き出さなかったら、あんたパンクしてるわよ。」
「女将、起きてたの?」
「結婚は年でするものじゃない。あんたは一杯いっぱいだったのよ。そんな時に元カノの事まで考えられる余裕なんて無いでしょ?」
確かに俺は元カノと付き合い始めてしばらくして、昇進して部下もできた。新しいプロジェクトも任された。大きな仕事を任せてもらえるようになって、周りに認めてもらいたくて、元カノにもすごいと思ってもらいたくて、実力以上に頑張りすぎていた。
もうガス欠寸前だったんだ…
「余裕ができてから、したい事すればいいじゃない。」
「…女将…」
涙がスーっと頬を伝った。
その時、変な音楽が流れてきた。盆踊りのような音頭のような…
「お客さん、踊りましょ!」
「…いや…自分、踊りはちょっと…」
「あんた若いのに何言ってんのさ!」
女将に引きずられて仕方なしに踊りだした。女将のヘンテコな踊りを見様見真似で真似した。なんだか愉快になってきた。
「そうそう! あんた筋がいいわよ!」
「マジっスか?」
酔いもまわって俺は恥ずかしげもなく踊り狂った。タヌキ女将も楽しそうに笑っている。
楽しいなぁ~
愉快だなぁ~
店の中であるはずなのに、頭上にはお月様が見えた。
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