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しおりを挟む「女将は…いつもそんなに楽しそうなんですか?」
「私? 私ねぇ…。もう楽しい事だらけで忙しすぎるっつーのっ! もアタシ暑いの苦手でしょ? だから夏の間は死んだようにダラッダラッしてたんだけど、涼しくなってきたもんだから、ファッションも楽しめるしぃ。ほら今、プチプラとかいって、服も安いじゃない! オシャレし放題でしょ! それに秋はなんと言っても、栗ぃ~~~! 芋ぉ~~~! も、アタシ、栗とか芋とかに目が無いのよっ! まさにパラダイスよっ! そして何と言っても最大の楽しみはパンダ巡礼だわねっ! 知ってる? パンダも私と同じで熱さに弱いから夏は外に出てこないの。でも寒くなると野外運動場で、キャワいい姿を見せてくれるのよぉ~~~! んでねっ! んでねっ!」
「も、もう大丈夫です!」
タヌキ女将は話したりないのか、目と牙を剥きだしにして「シャァァァァーーーーーー!」と威嚇している…。
「女将…私…今日ここに来てよかった。」
「そう? 嬉しいわ。」
タヌキ女将は暖かいほうじ茶を私の前に差し出した。
ほ~。
満たされるって、この事かな…。
ふとタヌキ女将を見ると、なんだかモジモジして、何か言いたげな目をしている。
「…何か?」
「元気になったみたいだから、日めくりパンダカレンダー返してもらうわっ!」
…別に持って帰ろうとは思ってなかったですけどね…
タヌキ女将はパンダカレンダーを取り返すと、浮かれて踊りだした。
「ささっ! お嬢さんもご一緒に!」
普段、踊ることなんて絶対無いのだけど、タヌキ女将に誘われると、何故か踊ってみたくなった。私は恥ずかしげもなく踊りまくった。
きっととんでもなくヘタクソな踊りなんだろうけど、自分を解放してあげた気持ちになった。
見上げると空にはお月様
ここは確か、お店の中なのに…
あれからカスミが現れる事は無かった。
「そこの小料理屋の栗ぜんざいがね、超絶美味しかったの。で、そこの女将が変な人で、大笑いして、気が付いたら私、女将と踊ってたの!」
「へぇ、俺も行ってみたいな。」
駅前のカフェで沢井君と会った。
「あ…でも…その女将、かなり変わってるからな…」
「俺、変わってる人って好きだったりするから大丈夫だよ。」
「普通の変わり方では…無いんだけどね…」
まさか女将が大タヌキとは言えない…。
「ところで、大丈夫なの? この前…。あれからね、ピタッとカスミが現れなくなったの。」
「あの時さ、俺、もう無我夢中でカスミを止めなきゃ~って、必死に体当たりしたんだけど…その後の記憶が曖昧で…気が付いたら商店街のベンチに寝転がってたんだよ。」
「そっか。無事でよかった。体…なんともない?」
「帰ったらさ、姉貴から大量の塩ぶちまけられて、その後、滝行に連行された…」
沢井君は苦笑いした。私もつられて苦笑いした。
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