小料理 タヌキ屋 4

まんまるムーン

文字の大きさ
10 / 11

10

しおりを挟む



「女将は…いつもそんなに楽しそうなんですか?」

「私? 私ねぇ…。もう楽しい事だらけで忙しすぎるっつーのっ! もアタシ暑いの苦手でしょ? だから夏の間は死んだようにダラッダラッしてたんだけど、涼しくなってきたもんだから、ファッションも楽しめるしぃ。ほら今、プチプラとかいって、服も安いじゃない! オシャレし放題でしょ! それに秋はなんと言っても、栗ぃ~~~! 芋ぉ~~~! も、アタシ、栗とか芋とかに目が無いのよっ! まさにパラダイスよっ! そして何と言っても最大の楽しみはパンダ巡礼だわねっ! 知ってる? パンダも私と同じで熱さに弱いから夏は外に出てこないの。でも寒くなると野外運動場で、キャワいい姿を見せてくれるのよぉ~~~! んでねっ! んでねっ!」

「も、もう大丈夫です!」

タヌキ女将は話したりないのか、目と牙を剥きだしにして「シャァァァァーーーーーー!」と威嚇している…。

「女将…私…今日ここに来てよかった。」

「そう? 嬉しいわ。」

タヌキ女将は暖かいほうじ茶を私の前に差し出した。

 ほ~。

 満たされるって、この事かな…。

ふとタヌキ女将を見ると、なんだかモジモジして、何か言いたげな目をしている。

「…何か?」

「元気になったみたいだから、日めくりパンダカレンダー返してもらうわっ!」

 …別に持って帰ろうとは思ってなかったですけどね…

タヌキ女将はパンダカレンダーを取り返すと、浮かれて踊りだした。

「ささっ! お嬢さんもご一緒に!」

普段、踊ることなんて絶対無いのだけど、タヌキ女将に誘われると、何故か踊ってみたくなった。私は恥ずかしげもなく踊りまくった。

きっととんでもなくヘタクソな踊りなんだろうけど、自分を解放してあげた気持ちになった。



見上げると空にはお月様 

ここは確か、お店の中なのに…





 あれからカスミが現れる事は無かった。

「そこの小料理屋の栗ぜんざいがね、超絶美味しかったの。で、そこの女将が変な人で、大笑いして、気が付いたら私、女将と踊ってたの!」

「へぇ、俺も行ってみたいな。」

駅前のカフェで沢井君と会った。

「あ…でも…その女将、かなり変わってるからな…」

「俺、変わってる人って好きだったりするから大丈夫だよ。」

「普通の変わり方では…無いんだけどね…」

 まさか女将が大タヌキとは言えない…。

「ところで、大丈夫なの? この前…。あれからね、ピタッとカスミが現れなくなったの。」

「あの時さ、俺、もう無我夢中でカスミを止めなきゃ~って、必死に体当たりしたんだけど…その後の記憶が曖昧で…気が付いたら商店街のベンチに寝転がってたんだよ。」

「そっか。無事でよかった。体…なんともない?」

「帰ったらさ、姉貴から大量の塩ぶちまけられて、その後、滝行に連行された…」


沢井君は苦笑いした。私もつられて苦笑いした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...