小料理 タヌキ屋 4

まんまるムーン

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「大丈夫、安心して。俺、口は堅いから。俺んちも、両親離婚してね、母親のメンタルが心配だったのと、姉が…ま、ちょっと大変なもんで、いまだに家から出られてないというか…。ま、俺がモテないのが一番の理由なんだけどね、ハハ…。」

「沢井君、モテないの? そんなことないんじゃない? さっきだって、すごくスマートな立ち振る舞いで、私びっくりしたよ!」

「そ、そう? そう思ってもらえたなら嬉しいな。久しぶりに同級生に会ったから、少し張り切っちゃったのも正直あったんだけどね…、ハハ…。」

沢井君は恥ずかしそうに横を向いて頭を掻いた。

「…そういえば、沢井君のお姉さん…体調悪いの? さっき…」

「あー、あれね…。ちょっとあまり言いにくいんだけど…うちの姉ね、恐怖漫画を描いてるんだ…。」

「お姉さん、漫画家さんなの?」

「…ああ…。有名ではないんだけどね。ほんとは王道の少女漫画家になりたかったらしいけど、そっちの方は全然ダメで、ずっとアシスタントとかやっててね、恐怖漫画描いてみないかって言われて…、そしたらそっちの方がうまくいったらしくて…。」

「そうなんだ! いいじゃない! 私好きだよ。よく雑誌かったりもするし。」

「そう?」

沢井君は少しホっとしたような顔をした。姉が恐怖漫画化だと知られると、たまにドン引きされることがあるらしくて、普段は隠しているらしい。

「それで姉がね、そういう漫画描いてくると、けっこうその手のものが寄ってくるらしいのよ。それで払ってって言われて、さっきみたいに手で叩いてやるんだ。」

「…沢井君…霊が見えるの?」

「見えない、見えない! 俺、霊感ゼロだから! だから本当に霊が寄ってきてるかどうかは分からないんだけど、姉に時々そう言われるのよ。そういう時って、いつもそんな症状が出るらしくて。」

「…私…、何か憑いてたのかな…?」

「いや、俺、いつものクセでついやっちゃっただけで、別に今井さんに霊が憑いているのが見えたわけじゃないし。」

「…そうなのね…。」

私は苦笑いをした。沢井君も気まずそうに苦笑いした。

「そうよ…もし私に怨霊が憑いてたとしたら、横にいるカスミが教えてくれるはずだもん。あの人いつも私の事守ってくれるから。あれ? そういえばカスミ、どこに行っちゃったんだろう? あれ?」

「カスミ…?」

「うん、ずっと一緒にいたでしょ?」

「え? 今井さんずっと一人だったよ。」

「そんなはずない! 会社からずっと一緒だったのよ。電車でも横にいたし…。」

「電車で? 今井さんの両横、おじさんだったよ。俺、目の前で見たし。」

「え?」

「その…カスミさんって人にいつも守ってもらってるって…、今井さん、そんなに過酷な状況なの?」

「過酷って言うか…そんなに酷い状況とかいうわけじゃないけど…私どんくさいし、仕事も出来ないし…、上司に怒られてばっかりでね、そんな時カスミがいつもかばってくれるんだ。派手な女友達に行きたくもない合コンに誘われたときも、カスミが…」

「優しい友達なんだね、カスミさんって。俺も派手な友達から誘われると、ちょっと疲れる事あるもんな。ま、断れない性分なんで、付き合っちゃうんだけどね。」

「あれ…? 普通…友達って…私に関係する人たちに簡単に死ねって…言うかな…?」

「死ね? 冗談なら無くはないかも…。あー、俺も冗談でも気をつけなきゃな。もし自分が言われたら立ち直れないもんな。」

「カスミはね、私に関わる人みんなに死ねって言うの!」

「冗談でじゃなくて?」

「あれは冗談なんかじゃないと思う…」

「その…カスミさんって…少し変わってるね。会社の同僚?」

「…会社の…? え…ちょっと待って…、私…いつカスミと友達になったんだろ…」



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