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しおりを挟む次の日も彼女は三角公園に立っていた。
俺は後ろの方から彼女のパフォーマンスを眺めた。
遥か後方にそびえ立つタワマンを見た。
あの最上階に彼女の腹違いの姉がいる。
妹の哀れなこの姿を彼女はちゃんと見ているのか…。
「先生! どうでした? 今日のパフォーマンス。」
「…見てられない。」
「そうですか…。」
彼女は下を向いてしょんぼりしていた。
辛うじてヘルメットは脱いでいるものの、体はロボットのままだ。
「おふくろから君の事情は聞いたよ。」
「…そうですか…。」
「いくらお父さんの最後の頼みとはいえ、そこまでしなくていいんじゃないの? 君はもう充分やったよ。」
「充分じゃ…ないですよ。姉はいまだに外の世界に出ようとしてないですから…」
「もうこれ以上はお姉さん自身の問題だよ。」
「でも私、このパフォーマンスを辞めてしまったら、姉との約束、何一つ出来なかったことになるんです…」
俺は決めた。
明日にでも彼女を連れて、その腹違いのお姉さんの所へ行こう。
いくらなんでもあんまりだ。
抗議してやる!
そんな事を考えていたら、彼女が聞いてきた。
「先生! お誕生日にされて嬉しい事って何ですか? 明日、姉の誕生日なんです。明日のパフォーマンスに取り入れてみたらどうかなと思って…」
「明日もするの?」
「お誕生日は祝ってあげたい。会ってはくれないだろうから、ここから気持ちを伝えたいです。」
…よし。
明日の誕生日までは見逃してやろう。
それが終わったら彼女を連れて殴り込みだ!
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