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しおりを挟む夫の母の目には涙が浮かんでいた。
綾子は戸惑ってしまった。
一郎と一緒に結婚の許しを得るために会った時、すごい剣幕で怒鳴られた。
その後は会うことすら出来ず、門前払いだった。
その後、夫の母の代理人という人がやってきて、綾子の家族や親戚、仕事や交友関係を調べ上げた書類を見せられ、今後一郎には近づくなと言われた。
綾子の家庭環境では、一郎の家に嫁ぐことなど出来ないとわかってはいた。
嫁いだところで一郎に迷惑になるし、自分が苦労するのも目に見えていた。
そして綾子は一郎と別れたのだった。
一郎の家族と仲良くやっていける自信も資格も自分には無いと思ったから。
何年も経って、一郎が結婚していることを風の便りに聞いた。
もう自分とは関係の無い事と思っていた。
そんなある日、綾子の働いている店に一郎がやって来た。
一郎もそこに綾子がいるとは知らなかった。
そしてまた二人は元の関係に戻ってしまった。
綾子が妊娠したとわかって、一郎は妻の和恵と別れる決心をした。
その時、母親は一郎と綾子との関係を簡単に許した。
子供を産む事も受け入れた。
しかし、あくまで愛人として。
和恵と別れる事も、綾子と再婚する事も許さなかった。
和恵は綾子の事を知って、自殺未遂をした。
それ以来、心身共に病んでしまった。
結局、一郎の母が勝ったのだ。
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