すみません、妻です

まんまるムーン

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向こうも俺に気付いた。

目を丸くして驚いていた。

「先生!」

話しかけられたが、何と答えていいかわからなかった。

とりあえず「ああ…」としか言えなかった。

「麗子ちゃん、もしかして今働いているところの…?」

男は彼女の耳元で囁いた。

彼女は男を見て頷いた。

それを目た瞬間、何故か急に頭に血が上った。

きっと顔まで真っ赤になっている気がする。

酔いが回ってきたのか…? 

そうだ、きっとそうに違いない。

そう気づいたら腰から下の力が抜けそうになった。

「先生、大丈夫ですか? 気分悪いの?」

彼女は立ち上がって俺を支えようとした。

「大丈夫。急に立ち上がったから酔いが回っただけなんだ。」

急いでトイレに駆け込んだ。

洗面所で顔を洗った。

あ~、なんか俺、今日不調だ。

帰ろう! 

こんな日は早く寝るに限る! 

トイレから出ると彼女は俺に何か言いたそうにしていたが、体調悪いから帰るよ、とだけ言い、隣の男に会釈をして津田を連れてとっとと店を後にした。



「誰だ、誰だ、誰だ、誰だ…」

「おまえさっきから何呟いてんの?」

酔っ払いの友人は、「いいか、雇ってやれよ~!」と叫びながらタクシーに乗って帰っていった。


ったく…いったい誰なんだ!



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