約束

まんまるムーン

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 車は小高い丘の上へ向かった。前方に学校らしき建物が見えた。

 その学校は昔小学校だった建物で、生徒減少で隣の小学校と統合され、ここは廃校になった。廃校舎の再利用で、雑貨屋やカフェ、レストランなどが出店するようになった。古い校舎のレトロな感じに、それらの店は良く合っていた。
 駐車場に車を止め、俺たちは中に入っていった。目的のレストランは1階の奥で、昔は職員室があった場所のようだった。窓からは眼下に町全体が見渡せた。年月が経っても、俺にはかつて高橋健二として暮らしていたその街だとわかった。ふとノエルを見ると、ノエルは何故か怯えていた。

「乃海君、私、ここ怖い。」
「もしかしてこの場所、夢で何か見たとか?」
「昔から、ずっと見ていた怖い夢に出てくるとこにソックリなの。私はここのような学校で、何か作業をしてて、階段を上がって指示された部屋へ持って行った時、ふと窓の外を見ると、空が真っ赤に燃え上がってて、そしてしばらくすると、窓の横の方から真っ黒な巨大な飛行船のような物が通り過ぎるの。…その夢を見るたびに、怖くて怖くてたまらなくて…いつもおばあちゃんのところに行ってた…。」
「そっか…。もしかすると、前世の記憶かもしれないな…。」

 俺とノエルは同じ夢を見てて、いろんな事が合致してる。現に二人が暮らしたこの街も実在していた。ということは、あの夢は前世の記憶で間違いない。でも、さっきノエルが言ったこの小学校の夢は、俺は見たことが無い。

 由紀子の身にだけ起こった何かがあるのか…?
 俺と由紀子はずっと一緒にはいれなかったのか…。
 あんなに想い合っていたのに別れたのか…?



「五名様ですね。お好きなお席にどうぞ!」
店員が笑顔で言った。
「どこにすっかなぁ~。やっぱ窓際の席かなぁ~。」
類が店内を見回した。
「外のテラス席がいい!」
旭が言った。
「えー、寒いじゃん!紫外線も気になるしぃ~。」
類が反対した。
「いや、絶対テラス席しかありえないっ!あの一番端がいい!」
旭は絶対に譲らなかった。
確かにそこから見える景色は素晴らしかった。前に何も無いので視界をさえぎる物は無い。
「じゃ、そこにしよう。」
安藤は旭に同意した。
「えー、でも日焼けが気になるぅ~!」
類がぶつぶつ言っていたが、完全にスルーで誰も聞いてはいなかった。

 席に着いて、皆は嬉しそうにメニューを見ていたが、ノエルの顔はどんどん青ざめてきて、手が震えていた。俺はその震える手を握り締めた。
「ノエル、大丈夫?」
そう言った時、校舎の裏の方から大きな爆発音がした。
「何だ!さっきの!」
「爆弾みたいな音しなかった?」
他の客も慌てふためいていた。

 その直後、レストランのすぐ裏手から閃光が走って、何かが爆発した。校舎の壁が吹き飛び、ガラスが砕け、俺たちも倒れた。

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