51 / 71
51
しおりを挟む車は小高い丘の上へ向かった。前方に学校らしき建物が見えた。
その学校は昔小学校だった建物で、生徒減少で隣の小学校と統合され、ここは廃校になった。廃校舎の再利用で、雑貨屋やカフェ、レストランなどが出店するようになった。古い校舎のレトロな感じに、それらの店は良く合っていた。
駐車場に車を止め、俺たちは中に入っていった。目的のレストランは1階の奥で、昔は職員室があった場所のようだった。窓からは眼下に町全体が見渡せた。年月が経っても、俺にはかつて高橋健二として暮らしていたその街だとわかった。ふとノエルを見ると、ノエルは何故か怯えていた。
「乃海君、私、ここ怖い。」
「もしかしてこの場所、夢で何か見たとか?」
「昔から、ずっと見ていた怖い夢に出てくるとこにソックリなの。私はここのような学校で、何か作業をしてて、階段を上がって指示された部屋へ持って行った時、ふと窓の外を見ると、空が真っ赤に燃え上がってて、そしてしばらくすると、窓の横の方から真っ黒な巨大な飛行船のような物が通り過ぎるの。…その夢を見るたびに、怖くて怖くてたまらなくて…いつもおばあちゃんのところに行ってた…。」
「そっか…。もしかすると、前世の記憶かもしれないな…。」
俺とノエルは同じ夢を見てて、いろんな事が合致してる。現に二人が暮らしたこの街も実在していた。ということは、あの夢は前世の記憶で間違いない。でも、さっきノエルが言ったこの小学校の夢は、俺は見たことが無い。
由紀子の身にだけ起こった何かがあるのか…?
俺と由紀子はずっと一緒にはいれなかったのか…。
あんなに想い合っていたのに別れたのか…?
「五名様ですね。お好きなお席にどうぞ!」
店員が笑顔で言った。
「どこにすっかなぁ~。やっぱ窓際の席かなぁ~。」
類が店内を見回した。
「外のテラス席がいい!」
旭が言った。
「えー、寒いじゃん!紫外線も気になるしぃ~。」
類が反対した。
「いや、絶対テラス席しかありえないっ!あの一番端がいい!」
旭は絶対に譲らなかった。
確かにそこから見える景色は素晴らしかった。前に何も無いので視界をさえぎる物は無い。
「じゃ、そこにしよう。」
安藤は旭に同意した。
「えー、でも日焼けが気になるぅ~!」
類がぶつぶつ言っていたが、完全にスルーで誰も聞いてはいなかった。
席に着いて、皆は嬉しそうにメニューを見ていたが、ノエルの顔はどんどん青ざめてきて、手が震えていた。俺はその震える手を握り締めた。
「ノエル、大丈夫?」
そう言った時、校舎の裏の方から大きな爆発音がした。
「何だ!さっきの!」
「爆弾みたいな音しなかった?」
他の客も慌てふためいていた。
その直後、レストランのすぐ裏手から閃光が走って、何かが爆発した。校舎の壁が吹き飛び、ガラスが砕け、俺たちも倒れた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜
和泉杏咲
恋愛
表紙イラストは「帳カオル」様に描いていただきました……!眼福です(´ω`)
https://twitter.com/tobari_kaoru
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は間も無く死ぬ。だから、彼に別れを告げたいのだ。それなのに……
なぜ、私だけがこんな目に遭うのか。
なぜ、私だけにこんなに執着するのか。
私は間も無く死んでしまう。
どうか、私のことは忘れて……。
だから私は、あえて言うの。
バイバイって。
死を覚悟した少女と、彼女を一途(?)に追いかけた少年の追いかけっこの終わりの始まりのお話。
<登場人物>
矢部雪穂:ガリ勉してエリート中学校に入学した努力少女。小説家志望
悠木 清:雪穂のクラスメイト。金持ち&ギフテッドと呼ばれるほどの天才奇人イケメン御曹司
山田:清に仕えるスーパー執事
溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる