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しおりを挟む「どうぞ…」
食べ終わると、女将はコーン茶を出してくれた。
コーン茶の香ばしさが鼻先から入ってきて、それだけでも体中が癒されていく。一口飲んでみた。
「香ばしくて美味しい~。」
コーン茶の暖かさに、こわばっていた体が緩んでいくようだ。こんなにホッとしたのって、久しぶりのような気がする…。
急に涙が頬を伝った。女将はそれを見て、そっとおしぼりを差し出してくれた。
「このおしぼり…温かくて…、とっても温かくて…いい匂い…」
「思いっきり泣けばいいのよ。誰だって泣きたいときくらいあるわ。」
「…女将…」
私は思いっきり泣いた。声をあげて泣いた。こんなに泣いたことって、もしかしたら子供の時以来しれない。
「…私でよかったら…話を聞くわ…」
「女将!」
私は溜まっていた心のモヤモヤを女将にぶちまけた。
ついていけない美穂の豪華すぎるプレゼント攻撃、エスカレートしていく付き合い、里香の不倫の掃き溜めにされたこと、マウンティングされたこと、遥からいいように使われていたこと、実はバカにされていること、必死に家計を切り詰めようと頑張っている自分を旦那がわかってくれないこと、今までのことを包み隠さず話した。
タヌキ女将は真剣に聞いてくれていた。
「みんな自分勝手で…私は…自分だけ損をしてるような気がして…、もう限界なんです!」
「辛いわね…」
タヌキ女将の言葉に、また涙が溢れ出てきた。
「泣きたいだけだけ泣くといいわ…。」
「ありがとう女将。」
私はもう一杯マッコリを注文した。
「私ね、ここ、たぬプラーザの地にこの店を始めて何十年か経つのだけど、いろんなお客様が訪れてくれたわ。不思議な物でね、その日居合わすお客様同士が、不思議なご縁のある方だったりするのよ…。ほら、今日も…。あちらのお客様、あなたに縁のある方じゃないかしら?」
え?
てかここ、たぬプラーザって名前だった?
たまじゃなくて?
それはそうと、お客って…
私はすでにかなり酔っていた。ろれつもあまり回らなくなってきていたし、目の前もぼやけている。
タヌキ女将に私に縁のある人が来ているなんて言われたんだけど誰なんだろ?
私は目を凝らして見てみた。L字型になっているカウンターの端に、年配の女の人が座っていた。
ん? 見たことあるぞ! …え…えーっ!
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