小料理 タヌキ屋 3

まんまるムーン

文字の大きさ
上 下
10 / 16

10

しおりを挟む



「プハァ~、旨い!」

「でっしょ~! 私ね、マッコリの旨さを極めようと新大久保を彷徨い歩いたんだけど、やっぱり満足出来なくて、単身韓国へ渡ったのよ。」

「へぇ~、女将、探求心旺盛なんですね!」

「そうなのっ! ま、プロの料理人としては当たり前ですけどねっ!」

タヌキ女将はドヤ顔である。


「で、やっぱりソウルとかへ行ったんですか?」

「…素人の方はそう思うでしょうね…。でも、通の私は龍仁市っていうところを訪ねたのよ。」

「龍仁…ヨンイン市…? 聞いたことないですね…。さすがプロの料理人は訪れる場所も素人観光客とは違うんですね!」

「そうなの~! でねっ! でねっ! その龍仁市ってとこに動物園があってね、そこにパンダがいるのよぉ~! もう丸々しててコロコロしててほんと可愛くって、私、癒されまくっちゃったのよ~!」

 ………。

「パンダって、本当にいいわよね~。存在が癒しだよねぇ~。」

タヌキ女将は両手を頬に当て、ウットリしている。

 あなたも充分、同じような体型をしてますけどね…

「…で、そこでこの貴重なマッコリを手に入れたんですか?」

「あー、それ、空港で買ったの。」

 …おまえ…パンダ見に韓国行っただけだろ!

「お客さん、ご注文は?」

「あー、どうしよ…。おすすめってあります?」

「そうねぇ…マッコリ飲まれてるから、豚キムチとチヂミなんていかがかしら?」

「じゃあ、それお願いします。」


 女将は冬〇ナの主題歌を鼻歌で歌いながら手際よく調理している。

 冬〇ナって…古すぎないか…?

などと思いつつも、マッコリで酔っぱらっていい気分になっていたせいか、目を瞑って顔を少し上げ、〇ン様スマイルの真似をしてみた。

 はっ、私はアホか…。

急に我に返って目を開けた。

すると、目の前のタヌキ女将も同じように〇ン様スマイルで調理していた。首にはいつの間にか、どこに隠し持っていたのか、マフラーを巻いている。

…アホがここにもおった…。



「どうぞ!」

差し出された豚キムチとチヂミは格別だった。

「美味しい…」

「でっしょ~! 本場に赴いて修行してきましたからねっ!」

タヌキ女将はドヤ顔だ…

「…パンダ見た帰りに空港でチャチャっと食べただけじゃないんですかぁ?」

「シャァァァァーーーーーー!」

タヌキ女将は両手の爪と牙を剥きだし、目をひん剥いて威嚇してきた!

「…な、なるほど…、さすが本場の味だ…」

 喰われるっ! 

私は身の危険を感じ、とっさに女将の話に合わせた。

「そなのよぉ~。」


女将はいつの間にかマフラーだけではなく〇ン様眼鏡もかけていた。


そしてゴリ押しの〇ン様スマイルで私に無言の圧をかけ続けた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...