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しおりを挟む「プハァ~、旨い!」
「でっしょ~! 私ね、マッコリの旨さを極めようと新大久保を彷徨い歩いたんだけど、やっぱり満足出来なくて、単身韓国へ渡ったのよ。」
「へぇ~、女将、探求心旺盛なんですね!」
「そうなのっ! ま、プロの料理人としては当たり前ですけどねっ!」
タヌキ女将はドヤ顔である。
「で、やっぱりソウルとかへ行ったんですか?」
「…素人の方はそう思うでしょうね…。でも、通の私は龍仁市っていうところを訪ねたのよ。」
「龍仁…ヨンイン市…? 聞いたことないですね…。さすがプロの料理人は訪れる場所も素人観光客とは違うんですね!」
「そうなの~! でねっ! でねっ! その龍仁市ってとこに動物園があってね、そこにパンダがいるのよぉ~! もう丸々しててコロコロしててほんと可愛くって、私、癒されまくっちゃったのよ~!」
………。
「パンダって、本当にいいわよね~。存在が癒しだよねぇ~。」
タヌキ女将は両手を頬に当て、ウットリしている。
あなたも充分、同じような体型をしてますけどね…
「…で、そこでこの貴重なマッコリを手に入れたんですか?」
「あー、それ、空港で買ったの。」
…おまえ…パンダ見に韓国行っただけだろ!
「お客さん、ご注文は?」
「あー、どうしよ…。おすすめってあります?」
「そうねぇ…マッコリ飲まれてるから、豚キムチとチヂミなんていかがかしら?」
「じゃあ、それお願いします。」
女将は冬〇ナの主題歌を鼻歌で歌いながら手際よく調理している。
冬〇ナって…古すぎないか…?
などと思いつつも、マッコリで酔っぱらっていい気分になっていたせいか、目を瞑って顔を少し上げ、〇ン様スマイルの真似をしてみた。
はっ、私はアホか…。
急に我に返って目を開けた。
すると、目の前のタヌキ女将も同じように〇ン様スマイルで調理していた。首にはいつの間にか、どこに隠し持っていたのか、マフラーを巻いている。
…アホがここにもおった…。
「どうぞ!」
差し出された豚キムチとチヂミは格別だった。
「美味しい…」
「でっしょ~! 本場に赴いて修行してきましたからねっ!」
タヌキ女将はドヤ顔だ…
「…パンダ見た帰りに空港でチャチャっと食べただけじゃないんですかぁ?」
「シャァァァァーーーーーー!」
タヌキ女将は両手の爪と牙を剥きだし、目をひん剥いて威嚇してきた!
「…な、なるほど…、さすが本場の味だ…」
喰われるっ!
私は身の危険を感じ、とっさに女将の話に合わせた。
「そなのよぉ~。」
女将はいつの間にかマフラーだけではなく〇ン様眼鏡もかけていた。
そしてゴリ押しの〇ン様スマイルで私に無言の圧をかけ続けた。
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