小料理 タヌキ屋 3

まんまるムーン

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 リコを幼稚園に送り出して駅に向かうと、里香とばったり会った。

「美咲! ちょっと時間ある? お茶していかない?」

今日の里香はどこかハイテンションだ…。何故か嫌な予感がする…。

「ちょっとさ…話したい事があって…」


運ばれてきた抹茶オレを飲みながら里香は話し始めた。

「里香はさ…その…好きな人とかいないの?」

「え?」

「気になる人とかさ?」

「そんなのいるわけないでしょ! 結婚してるのに。…まさか?」

「うん。」

「マジで? 誰なのよ?」

「…実は…」


里香の話によると、なんと相手は遥の夫なのだった!

「ダメでしょー! 友達の旦那なんて一番やっちゃダメでしょ!」

「私だってそう思ってるよ! だけどしょうがないじゃん」


遥の娘も里香のピアノ教室に通っていて、送り迎えを遥の旦那さんがすることが多く、最初は世間話程度だったのが、次第に遥の旦那さんの相談を聞くようになって、そういう関係になってしまったらしい。

遥の夫は同年代だが、見かけよりずっと若くてセンスもいいので、何も知らないと独身に見える。
遥と同じく一見人当たりもよくて爽やかだ。

幼稚園の他のお母さんたちにも秘かに人気があって、里香が惹かれるのも無理はないかも…。

だけどやっぱりどこか嘘くささを感じる…。
とにかく似た者夫婦だ。

里香が言うには、間違いを犯したのは一度だけらしい。

それにしても…それにしてもだよ!


「美咲は、正直…遥の事どう思ってる?」

「どう思ってるって…友達でしょ…」

「腹割って話せる?」

「…」

「でしょ。間違いを犯した私が言うのも悪いけど、正直前から遥には距離を感じてたんだ。こっちがぶっちゃけてんのに、あの人絶対本心言わないじゃん。てか逆にさとされるし。遥と話していると、すごくバカにされてるような気がしてたんだ。」

「確かに…。私も本当はそう思ってた。…にしても友達の旦那と浮気しちゃダメじゃない!」

「仕返しとかじゃないよ! 復讐してやりたいなんて思ってもないもん。ただ、遥の旦那の愚痴を聞いてたら、可哀そうだなって思ってきて…そこからだんだん気になっちゃって…向こうも同じ気持ちだって言ってきてさ…」

「愚痴って遥の事? 愚痴言うようなことないような感じだけどね。なんだか完璧そうだし…」



「それがさ!」

里香は前のめりになって話し始めた。



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