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6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!
44 夏子
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「…確かに。」
私は離婚届に印鑑を押した。これを役所に届けたら、私は桜井夏子ではなく、小川夏子に戻る。
「これからどうするの?」
夫、いや、元夫と呼んだ方がいいのかな…の尚之は私に聞いた。
「…地元に…戻りたいと思ってる。」
「そうか…。じゃあ、決まったら教えてくれ。荷物はそこに送るよ。」
「ありがとう。」
「それから…ちょっと頼みがあるんだけど…」
元夫は少し困ったような顔をして、言いにくそうにしていた。
「何? 最後なんだし、何でもきくわよ。」
「あのさ…」
とりあえず、送ってもらう荷物だけ整理して、スーツケースとバッグだけ持って家を出た。尚之が私の地元まで送ってくれると申し出てくれたが、私は自分の車で一人で帰ることにした。もちろんこの車は私の物なのでもらっておくつもり。田舎暮らしに車は絶対必要だからね。
元の体に戻ったら恐ろしい事になっていた。体重が2キロも増えていた!
菜々子のやつ、この短期間に何食べたらこんな体になるのっ!
さっそくトレーニング通い再開しなきゃいけないわっ!
そしてその他にも、いろんな変化があった。あの遥人が私に懐いていたのだ。あんなに私の事を毛嫌いして、私の姿を見ると隠れるように姿を消していたあの遥人が! でも、懐いてくる遥人は、自分でも不思議なんだけど、とても可愛く思えた。尚之がうちへ連れてきた当初は嫌で堪らなかったはずなのに。この間まで大輝を育てていたからかな…。頑なだった私が優しくなれたのも、あの子のおかげかもね…。
そしてお義姉さん! 何十年来の親友の如く、やたら私に連絡してくる。買い物に行こうだの、ランチ行こうだの…。半ば拉致されるようにお義姉さんのマンションに連れていかれたこともあった。
昔、結婚の挨拶で一度行ったことあったけど、その時は物が溢れかえって人間が住むような場所じゃなかったのに、今ではスッキリ整頓されていて、どこもかしこもキレイに掃除されていた。そして付き合っていたクズ男は完全に関係を絶ったようで、男の気配も感じられなかった。
何をどうやったらここまで変わらせる事が出来るのだろう…?
菜々子って…もしかしたらすごい女なんじゃない?
みんな変わった。優しく穏やかになった。いい人になってる。 …って、昔の私が悪い女だったんだろう…。周りの人間って、その人を写す鏡って言うからね…。
それに尚之…全くアイツ、呆れるわ!
尚之と二人でお義姉さんと遥人に離婚する事を告げると、遥人は泣き出し、真帆さんは殴りかからんばかりに尚之に激怒した。尚之は二人に説明をし続け、そうしてどうにかこうにか、やっと納得してもらえた。
「ねえ、尚之、今日で私たち夫婦じゃ無くなるんだからさ、最後は夫婦らしくこの部屋出て行くことにしない?」
「…それもいいかもな。君とはいろいろあったけど、今は感謝してる。ありがとう。」
「私もよ…。本当にありがとう。幸せになってよね!」
「…君もな。」
地元に帰って、とりあえず実家に戻った。両親は私をまるで腫物に触るかの如く扱った。離婚したとはいえ、別に悲しくもないし傷ついてもないし、元夫と揉めて別れたわけでもない。至って円満解決で、尚之は私にしばらく困らないだけの資金援助だってしてくれた。それなのに…親ってのは、いつまでたっても自分の娘は子供のように思っちゃうのね…。ま、ありがたい事なんだろうけどね。
しかし、早く他に住むとこ見つけなきゃな。当の私は傷ついてないけど、親を心配させたのは申し訳ない。私は両親を高級温泉旅館へ招待した。思い返せば、親孝行なんてしたことが無かった。そう言えば、働きだしてからも家に仕送りなんてしたことない。今まで散々面倒見てもらってきたというのに…。親が自分の面倒を見てくれるのを当たり前だと思い込んでいた。当たり前の事って…実は尊い事だったんだ…。そんな事もわからなかった…ほんと…クズだな…私…。
両親を旅行に送り出す朝、二人とも大袈裟過ぎるでしょっていうくらい感動していた。二人で仏壇に向かって手を合わせ、ご先祖様に私の初親孝行を涙ながらに報告した。どんだけ? そこまでされると、昔の私ってそんなに親不孝娘だったのって思えてくる…。ま、いいや…これから少しづつ恩を返していけば…。
二人を送り出して、私は光ヶ丘店へ向かった。ついこの間まで通いなれた道なのに、ドキドキして胸が熱くなる。その信号を右折したら、あのオシャレな光ヶ丘の街だ。少し行くと、店が見えてくる。見えた!
その瞬間、涙が頬を伝って胸に落ちた。懐かしい…。私は郷愁を感じた。そんな事今まで無かった。生まれ育った実家も、上京して住んだ部屋も、結婚して尚之と暮らしたマンションも、一度だって懐かしんだことなんか無い。だけど何、この気持ちは…。訳の分からない感情が溢れ出て自分でもどうしたらいいのか分からない! しばらく駐車場から出て行けなかった。
店舗前広場では、月に一度のマルシェが催されていた。私と企画広報の彼女たちで立ち上げたプロジェクトだ。ヨーロッパの朝市のような屋台がたくさん並んで、産地直送の食材がオシャレに販売されている。そこには山川夫妻の姿もあった。夫妻と一緒に働いている若い子たちも、みんな生き生きと輝いている。私は車を降りて、マルシェの中を歩いてみた。
…愛しい…
…愛しすぎる…
…全てが愛しすぎる~!
気が付くと、屋台に陳列されていた梨を握りしめて叫んでいた…。
店のスタッフは、この人いったいどうしたのだろう、その梨、買ってくれるのかくれないのか。とでも言いたげな困った顔で私を見ていた。
その時、私は見てしまった。奥から社長がこっちへ歩いて来ているのを…。社長は各店舗のスタッフに挨拶して回っていた。少しずつ、少しずつ、こっちに近づいている。ついに私が梨を握りしめている店舗にやってきた。
私は離婚届に印鑑を押した。これを役所に届けたら、私は桜井夏子ではなく、小川夏子に戻る。
「これからどうするの?」
夫、いや、元夫と呼んだ方がいいのかな…の尚之は私に聞いた。
「…地元に…戻りたいと思ってる。」
「そうか…。じゃあ、決まったら教えてくれ。荷物はそこに送るよ。」
「ありがとう。」
「それから…ちょっと頼みがあるんだけど…」
元夫は少し困ったような顔をして、言いにくそうにしていた。
「何? 最後なんだし、何でもきくわよ。」
「あのさ…」
とりあえず、送ってもらう荷物だけ整理して、スーツケースとバッグだけ持って家を出た。尚之が私の地元まで送ってくれると申し出てくれたが、私は自分の車で一人で帰ることにした。もちろんこの車は私の物なのでもらっておくつもり。田舎暮らしに車は絶対必要だからね。
元の体に戻ったら恐ろしい事になっていた。体重が2キロも増えていた!
菜々子のやつ、この短期間に何食べたらこんな体になるのっ!
さっそくトレーニング通い再開しなきゃいけないわっ!
そしてその他にも、いろんな変化があった。あの遥人が私に懐いていたのだ。あんなに私の事を毛嫌いして、私の姿を見ると隠れるように姿を消していたあの遥人が! でも、懐いてくる遥人は、自分でも不思議なんだけど、とても可愛く思えた。尚之がうちへ連れてきた当初は嫌で堪らなかったはずなのに。この間まで大輝を育てていたからかな…。頑なだった私が優しくなれたのも、あの子のおかげかもね…。
そしてお義姉さん! 何十年来の親友の如く、やたら私に連絡してくる。買い物に行こうだの、ランチ行こうだの…。半ば拉致されるようにお義姉さんのマンションに連れていかれたこともあった。
昔、結婚の挨拶で一度行ったことあったけど、その時は物が溢れかえって人間が住むような場所じゃなかったのに、今ではスッキリ整頓されていて、どこもかしこもキレイに掃除されていた。そして付き合っていたクズ男は完全に関係を絶ったようで、男の気配も感じられなかった。
何をどうやったらここまで変わらせる事が出来るのだろう…?
菜々子って…もしかしたらすごい女なんじゃない?
みんな変わった。優しく穏やかになった。いい人になってる。 …って、昔の私が悪い女だったんだろう…。周りの人間って、その人を写す鏡って言うからね…。
それに尚之…全くアイツ、呆れるわ!
尚之と二人でお義姉さんと遥人に離婚する事を告げると、遥人は泣き出し、真帆さんは殴りかからんばかりに尚之に激怒した。尚之は二人に説明をし続け、そうしてどうにかこうにか、やっと納得してもらえた。
「ねえ、尚之、今日で私たち夫婦じゃ無くなるんだからさ、最後は夫婦らしくこの部屋出て行くことにしない?」
「…それもいいかもな。君とはいろいろあったけど、今は感謝してる。ありがとう。」
「私もよ…。本当にありがとう。幸せになってよね!」
「…君もな。」
地元に帰って、とりあえず実家に戻った。両親は私をまるで腫物に触るかの如く扱った。離婚したとはいえ、別に悲しくもないし傷ついてもないし、元夫と揉めて別れたわけでもない。至って円満解決で、尚之は私にしばらく困らないだけの資金援助だってしてくれた。それなのに…親ってのは、いつまでたっても自分の娘は子供のように思っちゃうのね…。ま、ありがたい事なんだろうけどね。
しかし、早く他に住むとこ見つけなきゃな。当の私は傷ついてないけど、親を心配させたのは申し訳ない。私は両親を高級温泉旅館へ招待した。思い返せば、親孝行なんてしたことが無かった。そう言えば、働きだしてからも家に仕送りなんてしたことない。今まで散々面倒見てもらってきたというのに…。親が自分の面倒を見てくれるのを当たり前だと思い込んでいた。当たり前の事って…実は尊い事だったんだ…。そんな事もわからなかった…ほんと…クズだな…私…。
両親を旅行に送り出す朝、二人とも大袈裟過ぎるでしょっていうくらい感動していた。二人で仏壇に向かって手を合わせ、ご先祖様に私の初親孝行を涙ながらに報告した。どんだけ? そこまでされると、昔の私ってそんなに親不孝娘だったのって思えてくる…。ま、いいや…これから少しづつ恩を返していけば…。
二人を送り出して、私は光ヶ丘店へ向かった。ついこの間まで通いなれた道なのに、ドキドキして胸が熱くなる。その信号を右折したら、あのオシャレな光ヶ丘の街だ。少し行くと、店が見えてくる。見えた!
その瞬間、涙が頬を伝って胸に落ちた。懐かしい…。私は郷愁を感じた。そんな事今まで無かった。生まれ育った実家も、上京して住んだ部屋も、結婚して尚之と暮らしたマンションも、一度だって懐かしんだことなんか無い。だけど何、この気持ちは…。訳の分からない感情が溢れ出て自分でもどうしたらいいのか分からない! しばらく駐車場から出て行けなかった。
店舗前広場では、月に一度のマルシェが催されていた。私と企画広報の彼女たちで立ち上げたプロジェクトだ。ヨーロッパの朝市のような屋台がたくさん並んで、産地直送の食材がオシャレに販売されている。そこには山川夫妻の姿もあった。夫妻と一緒に働いている若い子たちも、みんな生き生きと輝いている。私は車を降りて、マルシェの中を歩いてみた。
…愛しい…
…愛しすぎる…
…全てが愛しすぎる~!
気が付くと、屋台に陳列されていた梨を握りしめて叫んでいた…。
店のスタッフは、この人いったいどうしたのだろう、その梨、買ってくれるのかくれないのか。とでも言いたげな困った顔で私を見ていた。
その時、私は見てしまった。奥から社長がこっちへ歩いて来ているのを…。社長は各店舗のスタッフに挨拶して回っていた。少しずつ、少しずつ、こっちに近づいている。ついに私が梨を握りしめている店舗にやってきた。
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