上 下
242 / 262
6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!

41

しおりを挟む

「…自分が本当にしたい事が、やっと見つかったの。私は…自分でも性格が悪いってわかってた。他人に意地悪をしている自覚もあった。周りが見えなくて、自分自身も見えなくなっていて、ずっと回り道をして、その度に人を傷つけたりして。それを何とも思わなくなっていた自分がいた…そんな自分が、本当は嫌いで堪らなかった…。」
「…ソウデシタカ…」

「でも、菜々子と入れ替わって、仕事に没頭して、信頼できる仲間が出来て、私…今、本当に生きているって実感できるの!」
「良カッタデス。夏子サンガ ソウ思エル 日ガ 来テ。デモ、時ニ 人生ハ 残酷デス。コノママ生キテ イク事ハ 偽リノ 人生ヲ 生キテ イクト イウ事ニナルノデス。夏子サン、アナタハ モウ 大丈夫。元ノ体ニ戻ッテモ、自分ヲ 見失ウ事無ク 真ッスグ 歩イテ ユケル…」
「…菜々子の体、そろそろ返してあげなきゃいけないしね…。わかった。」


 その時、駐車場にやって来ていた社長が私に気付いた。
「鈴原さん!」
社長はニコニコしながらやってくる。
「ナビ、私、ちゃんと元の体に戻るから、少しだけ時間をくれない?」
「ワカリマシタ! 了解デス。」

 私は車を降りて社長の元へ行った。
「今から社に戻るの? 今晩、みんなで打ち上げをしようかって言ってるんだけど、鈴原さんも来るよね?」
「…社長…、私、ちょっと行けそうにないんです。」
「都合悪い? じゃ、明日にしようか? 主役の鈴原さんが来られないんだったら意味ないからね! みんなから文句言われちゃうよ。」
「社長! 私、ずっと社長やみんなと一緒に仕事をしていきたかった…」
「え? 当たり前じゃない! いなくなってもらったら困るよ! あ! そうか! 人事の件でしょ? 僕、もうメタメタに叱っといたから! 鈴原さんがリストラ候補なんて有り得ないから!」
「…そうじゃ無くて…」

 私が言葉に困っていると、社長は心配そうに私の顔を見た。私は自分が歯がゆかった。これがもし本当の自分だったなら、気持ちを伝える事が出来るのに。

「社長の元で働かせてもらって、本当に幸せです。ここには信頼できる仲間もいるし、やりがいのある仕事もある。最高です!」
「鈴原さん、ありがとう。…でも…何でそんなに泣いてるの?」
「私は…私は…菜々子でいたかった…」
「え?」
「すみませんっ! 今日、ちょっと急用があって、このまま直帰しますね! では、お疲れ様です!」
「ちょっと、鈴原さん!」

 社長が呼び止めたが、私は車に駆け込み急いでエンジンをかけて発進した。

「ルート ガ 検出サレマシタ。夏子ルート。選択サレマスカ?」
「…お願い。」
「了解シマシタ。デハ 目的地ヘ ナビゲート サセテ イタダキマス。」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

凪の始まり

Shigeru_Kimoto
ライト文芸
佐藤健太郎28歳。場末の風俗店の店長をしている。そんな俺の前に16年前の小学校6年生の時の担任だった満島先生が訪ねてやってきた。 俺はその前の5年生の暮れから学校に行っていなかった。不登校っていう括りだ。 先生は、今年で定年になる。 教師人生、唯一の心残りだという俺の不登校の1年を今の俺が登校することで、後悔が無くなるらしい。そして、もう一度、やり直そうと誘ってくれた。 当時の俺は、毎日、家に宿題を届けてくれていた先生の気持ちなど、考えてもいなかったのだと思う。 でも、あれから16年、俺は手を差し伸べてくれる人がいることが、どれほど、ありがたいかを知っている。 16年たった大人の俺は、そうしてやり直しの小学校6年生をすることになった。 こうして動き出した俺の人生は、新しい世界に飛び込んだことで、別の分かれ道を自ら作り出し、歩き出したのだと思う。 今にして思えば…… さあ、良かったら、俺の動き出した人生の話に付き合ってもらえないだろうか? 長編、1年間連載。

一条春都の料理帖

藤里 侑
ライト文芸
一条春都の楽しみは、日々の食事である。自分の食べたいものを作り食べることが、彼にとっての幸せであった。時にはありあわせのもので済ませたり、誰かのために料理を作ってみたり。 今日も理想の食事を追い求め、彼の腹は鳴るのだった。 **** いつも読んでいただいてありがとうございます。 とても励みになっています。これからもよろしくお願いします。

桜吹雪と泡沫の君

叶けい
BL
4月から新社会人として働き始めた名木透人は、高校時代から付き合っている年上の高校教師、宮城慶一と同棲して5年目。すっかりお互いが空気の様な存在で、恋人同士としてのときめきはなくなっていた。 慣れない会社勤めでてんてこ舞いになっている透人に、会社の先輩・渡辺裕斗が合コン参加を持ちかける。断り切れず合コンに出席した透人。そこで知り合った、桜色の髪の青年・桃瀬朔也と運命的な恋に落ちる。 だが朔也は、心臓に重い病気を抱えていた。

魔法使いと繋がる世界EP2~震災のピアニスト~

shiori
ライト文芸
 ――人は生きる限り、生き続ける限り、過去の幻を背負い歩いていく ※当作品は長い構想を経て生まれた”青春群像劇×近未来歴史ファンタジー”長編シリーズ小説です。 イントロダクション 西暦2059年 生き別れになった三つ子の魂が、18年の時を経て、今、巡り合う。 それは数奇な運命に導かれた、少年少女たちの長い一年のほんの始まりだった。 凛翔学園三年生、幼馴染三人組の一人、樋坂浩二(ひさかこうじ)、生き別れとなった三つ子の長女、稗田知枝(ひえだちえ)のダブル主人公で繰り広げられる、隠された厄災の真実に迫る一大青春群像劇。 EP2~震災のピアニスト~ ~あらすじ~ 凛翔学園(りんしょうがくえん)では各クラス毎に一つの部活動を行う。 樋坂浩二や稗田知枝のクラスの仲間入りをしたクラス委員長の八重塚羽月(やえづかはづき)はほとんどのクラスメイトが前年度、演劇クラスとして活動していることを知っていた。 クラスメイトの総意により、今年も演劇クラスとして部活申請を行った羽月のクラスであったが、同じ演劇クラスを希望したのが他に二クラスあることから、合同演劇発表会で一クラスを選ぶ三つ巴の発表会に発展する。 かつて樋坂浩二と恋仲であったクラス委員長の羽月は演劇のための脚本を仕上げるため、再び浩二と同じ時を過ごすことになる。 新たな転校生、複数の顔を持つ黒沢研二(くろさわけんじ)を加えて 演劇の舞台の準備が進んでいく中、語られる浩二と羽月の恋愛の思い出 羽月が脚本化した演劇“震災のピアニスト” 主役に任命された転校生の”稗田知枝”と”黒沢研二” 演劇クラスを巡って立ち塞がる他クラスの存在 交錯するそれぞれの想いが、一つの演劇の中でかつてない最高の舞台を作り上げる。 ※エピソード2開始です!近未来の世界観で巻き起こる、エピソード1よりさらに濃密になった青春ドラマをお楽しみください! 表紙イラスト:麻mia様 タイトルロゴ:ささきと様

女装男子は百合乙女の夢を見るか? ✿【男の娘の女子校生活】学園一の美少女に付きまとわれて幼なじみの貞操が危なくなった。

千石杏香
ライト文芸
✿【好きな人が百合なら女の子になるしかない】 男子中学生・上原一冴(うえはら・かずさ)は陰キャでボッチだ。ある日のこと、学園一の美少女・鈴宮蘭(すずみや・らん)が女子とキスしているところを目撃する。蘭は同性愛者なのか――。こっそりと妹の制服を借りて始めた女装。鏡に映った自分は女子そのものだった。しかし、幼なじみ・東條菊花(とうじょう・きっか)に現場を取り押さえられる。 菊花に嵌められた一冴は、中学卒業後に女子校へ進学することが決まる。三年間、女子高生の「いちご」として生活し、女子寮で暮らさなければならない。 「女が女を好きになるはずがない」 女子しかいない学校で、男子だとバレていないなら、一冴は誰にも盗られない――そんな思惑を巡らせる菊花。 しかし女子寮には、「いちご」の正体が一冴だと知らない蘭がいた。それこそが修羅場の始まりだった。

日々の欠片

小海音かなた
ライト文芸
日常にあったりなかったりするような、あったらいいなと思えるような、2000字以内の一話完結ショートストーリー集。 ※一部、過去に公開した作品に加筆・修正を加えたものがございます。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

猫スタ募集中!(=^・・^=)

五十鈴りく
ライト文芸
僕には動物と話せるという特技がある。この特技をいかして、猫カフェをオープンすることにした。というわけで、一緒に働いてくれる猫スタッフを募集すると、噂を聞きつけた猫たちが僕のもとにやってくる。僕はそんな猫たちからここへ来た経緯を聞くのだけれど―― ※小説家になろう様にも掲載させて頂いております。

処理中です...