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6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!

37 菜々子→夏子

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「夏子! 俺、ケーキ取りに行こうか?」
遥人君が忙しくしている私を気遣いそう言ってくれた。
「ほんと? 助かる! お願い!」
「なっちゃん! こっちコレでいいのかな?」
ベランダで作業していた真帆さんから呼ばれた。
「今行きます~!」

 私たちが何の準備をしているかというと、今日は尚之さんの誕生日なのだ。本人は完全に忘れているようで、今日早く帰ってきてと言っても何故かは気づいていなかった。私にとってはその方が都合がいい。私たちは尚之さんの誕生日サプライズパーティーをしようと計画しているのだ。

 ただ普通にお店を予約してプレゼントを用意するんじゃなくて、自分たちで特別な何かをしたかった。遥人君もいつものお礼をしたいと言っていたし、真帆さんにとっても、これが姉弟の仲直りのきっかけに出来ればなと思う。

 尚之さんはこのところ仕事でとても疲れているようで、本当だったら転地療法を兼ねてどこか旅行にでも行ったらいいんだろうと思うけど、とてもそんな暇無さそうだし、いくら外見上は夫婦と言えども、本当の私は赤の他人なのだ。旅行に行って一緒の部屋に泊まるなんて、大問題でしょ…。

 でも、少しでも日常を忘れてもらいたくていろいろ考えていたら、たまたま見たテレビの情報番組で、最近自宅でキャンプというのが流行っているというのを知って、コレだ! と思った。遥人君と真帆さんに相談したら、面白そう、と言ってくれた。さっそく三人で計画を立てて実行に移した。

 広いベランダにテントを出して、大きな観葉植物を配置して、ガーランドを飾ってランタンを置いた。
「めっちゃキャンプ感!」
「いいよね~!」

 そこに尚之さんが帰ってきた。リビングのドアを開けた瞬間に三人でクラッカーを鳴らした。
「誕生日おめでとう!」
「…え、どうしたの? みんな…」
クラッカーのテープまみれになった尚之さんは戸惑いながら呟いた。
「さあ、さあ、こっちへどうぞ!」

 私は尚之さんにお誕生日の三角帽を被せて、彼の背中を押してベランダへ連れて行った。
「うわ! 何だコレは!」
目の前に広がるキャンプ空間に、彼は目を丸くして驚いた。

「ハッピバースデートゥーユー♪」
さっき遥人君が取りに行ってきてくれたバースデーケーキのろうそくに火をつけてベランダへ持って行った。
「さあ、さあ、吹き消して!」
尚之さんが吹き消そうとすると遥人君がそれを止めた。

「ちょっと待った! 尚之兄ちゃん! 願い事が先!」
「願い事ねぇ…」
「…無いの?」
「あるよ!」

 …あるんだ…。
 願い事なんて無さそうなタイプなのに…。
 ちょっと意外…。

 尚之さんはニタっと笑ってろうそくを一気に吹き消した。

 尚之さんの願い事って何だろ? 
 イメージ湧かないな…。

「おめでとー!」
「…ありが…とう…。ちょっとビックリしたけど…嬉しいよ。」
尚之さんはこういう事をされるのに慣れていないのか、かなり恥ずかしそうに戸惑っていたが、そう言ってくれた目は優しく微笑んでいた。

 それから私たちはバーベキューをした。ちょうど夕日が落ちてきて、空が赤く染まっていった。尚之さんはワインセラーからとっておきのワインを出してきてくれて、私たちはその美しい夕日を眺めながらワインを飲んだ。

 ちょうど尚之さんの横に真帆さんがいたので、姉弟水入らずで話をしてもらおうと、私は遥人君に食事の後片付けを手伝ってくれるようにお願いした。そしてベランダに尚之さんと真帆さんだけ残して後片付けを始めた。



「私さ、最初は正直あんたの女の趣味疑ったのよ。」
「夏子の事?」
「うん。何でこんな子選ぶかなって…。結婚するって連れてきた時、私一発で分かっちゃった。あ、この子演技してるわって。」
「…そっか。」
「でも…何だろ、まるで別人みたいじゃん。おせっかいだしさぁ。聞いた? 私が付き合ってた男にあの子がタンカ切ったの。カフェにそいつ呼び出してさ、怒鳴り散らしたのよ、あの子。弱いくせしてさ、手が震えてたもん。でも…私と遥人の為に、相当勇気振り絞ってくれたんだ。」
「…マジか…。」
「…尚之…ごめんね。私、バカだったわ…。」
「…俺も、姉ちゃんの事、長い事、見て見ぬフリしてきて…ごめんな…。」
「ううん、私が悪いのよ。いつも騙されてばかりで。そのせいで、あんた大学に行けなかったもんね…。本当にごめんなさい。これからは心入れ替えて、遥人のいい母親になるように頑張るわ。それからあんたにも償うつもりでいるから! もう、同じ間違いは絶対にしない! 私が見る目が無かったよ。男にも女にも…。でも、尚之、あんた、見る目あったんだよ。大事にしなよ、なっちゃんの事…。」
「…そんなの、分かってるよ。」

 尚之はキッチンで片付けをしている夏子を見た。横にいる遥人とふざけあいながら洗い物をしている姿を見ると、自然に目じりが下がる。遥人もこのうちに来た当初は、夏子に酷い事を言われたせいで、同じ家にいても口もきかなかった。だけど今では本当の家族、いや、それ以上の関係だ。遥人はもしかしたら実の母親以上に夏子の事を信頼しているのかもしれない。夏子も弟のように遥人を可愛がっている。まさかこんな日が来るなんて…。

「尚之! あんた、愛情が目から駄々洩れしてるよ…。」
「え?」
尚之は手で顔を押えた。
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