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5 赤い月が昇る頃、オッドアイの瞳は見つめている。トンネルの向こうに開かれた世界で私を待っているのは誰?
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しおりを挟む倉田はしがみつく蒼の体をさらにナイフで刺した。
何度も。
何度も。
それでも蒼は倉田から離れなかった。
「真子! 早く! 頼むから!」
私はトンネルの向こう側に向かって走った。
力の限り走って、走って、走って、その間、後ろからはずっと蒼のうめき声が聞こえていた。
心が壊れそう。
胸が粉々に砕けていく。
「向こう側の俺―――――――!」
蒼の叫び声がした。
「真子を…助けて…くれよ…」
それきり蒼の声はしなくなった。
蒼は…蒼は死んじゃったの?
私のせいで!
蒼!
蒼――――――――!
後ろからけたたましい足音が迫ってきた。
倉田が私を追いかけている。
靄は出口に向かうにつれて濃くなっていった。
トンネルの出口はもうすぐそこ!
あと10メートル!
あと8メートル!
出口が見えてきた。
あと少し!
出口で肩を掴まれた。
倉田は私を捕まえた。
「真子…逃がすわけないだろ。」
倉田はニーっと笑ってそう言った。
彼は私の腕を掴んで引っ張った。
もう…ダメだ…。
終わった…。
蒼が…命を懸けて私を守ってくれたのに…。
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