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5 赤い月が昇る頃、オッドアイの瞳は見つめている。トンネルの向こうに開かれた世界で私を待っているのは誰?
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しおりを挟む頭が真っ白になった。
真子との思い出が頭の中を倍速で駆け抜けていく。
嘘だ、そんなの。
今朝だって、目が覚めると横に真子がいた。
彼女の声も肌の温もりも、まだ感じられるっていうのに。
そんなの…受け入れられるはずがないじゃないか!
悲しみのどん底に落ちていると、今度は怒りが湧いてきた。
真子をこんな目に遭わせたのは…。
その時、視線を感じて振り返ると倉田がいた。
ヤツは僕に気が付いた。
するとニヤリと笑みを浮かべて走り去った。
僕は必死に追いかけた。
アイツだ!
アイツに違いない!
絶対に逃がさない!
倉田は路地をすり抜け、家の塀を飛び越えた。
僕も塀を飛び越えヤツを追った。
坂道を登り切った角を左へ曲がった。
僕もすぐ後を追うと、ヤツは消えていた。
そこは見通しのいい道路で、次の角まではかなり距離がある。
道路沿いにはびっしりとビルが建っているし隠れられそうなところは無さそうだ。
どこに消えたんだ。
辺りを注意しながら道路沿いを歩いた。
街灯は等間隔にあったが、その道は暗く感じた。
まだ8時くらいなのに、人通りは全くない。
普段ならもっと通行人がいてもおかしくない筈なのに…。
前方にトンネルがあった。
トンネルに近づくにつれて、益々辺りは暗くなっていった。
トンネルはどこか変だった。
中は白い靄が立ち込めていた。
事故でも起こって火の手が上がってるのか?
いや、そんなんじゃない。
靄は煙では無く、どちらかと言うと霧のようだった。
道路には車も全く走っていなかったので、僕は車道に出た。
そしてトンネルの前まで行ってみた。
普段はオレンジ色の灯りが灯っているはずなのに、トンネルの中は真っ暗だった。
停電でもしたのか?
靄は益々濃くなった。
トンネルの出口の方に微かな光が見える。
その光はどんどん強くなった。
眩しくて僕は手で光を遮るようにして目を細めて見た。
前方から誰か歩いてくる。
倉田か?
いや…違う。アイツの影じゃない。
…女?
よく知っている陰だ…。
真子!
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