上 下
167 / 262
5 赤い月が昇る頃、オッドアイの瞳は見つめている。トンネルの向こうに開かれた世界で私を待っているのは誰?

7

しおりを挟む


「あまり目立たない方がいい。私たちはもう行くから真子は帰りなさい。夏休みに入ったら、すぐに来るんだよ。」

「わかってるよ。」

「本当は真子も一緒に来た方がいいんだ…。やはり私は間違っていた…。」

「パパ、どうしたの? 何があったの?」

「悪いが…娘でも言う訳にはいかないんだ。君を危険な目に遭わせたくないからね。」

「え、私、危ない目に遭うの?」

「大丈夫だ。そんな目には遭わせない! 私がいない間、君を守ってくれるようにちゃんと考えているから。」

父はそう言うと私に紙切れを渡した。

「とにかく…今からここに行くんだ。どこにも寄り道せず、まっすぐにここに行きなさい。ルビーはしばらく彼に預かってもらいなさい。そして彼の言う事に従いなさい。そしてそこに着いたらこの紙はシュレッターにかけるんだよ。じゃあ、夏休みに。」

「真子ちゃん、本当に一人で大丈夫かしら。」

母は涙目だった。

「大丈夫よ。もう大学生なんだから。心配しないで! 気を付けて行ってきてね!」

何度も何度も私の方に振り返りながら、二人はゲートの中に入って行った。

私は父親に言われたように周りに注意しながら駐車場へ向かった。

見たところ怪しい人はいない。

単なる親心から娘を心配して大げさに言ったのかな? 

でも、常に冷静沈着な父が、そんな事をするようには思えない。

父は何か危ない事に関わってしまったのだろうか…。

私は車に乗り込み、父からもらった紙きれを開いて見た。

そこにはうちからそう遠くない住所と電話番号と店の名前が書かれてあった。

「…不破自動車…?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

佰肆拾字のお話

紀之介
ライト文芸
「アルファポリス」への投稿は、945話で停止します。もし続きに興味がある方は、お手数ですが「ノベルアップ+」で御覧ください。m(_ _)m ---------- 140文字以内なお話。(主に会話劇) Twitterコンテンツ用に作ったお話です。 せっかく作ったのに、Twitterだと短期間で誰の目にも触れなくなってしまい 何か勿体ないので、ここに投稿しています。(^_^; 全て 独立した個別のお話なので、何処から読んで頂いても大丈夫!(笑)

悪役令嬢は修道院を目指しますーなのに、過剰な溺愛が止まりません

藤原遊
恋愛
『運命をやり直す悪役令嬢は、やがて愛されすぎる』 「君がどんな道を選ぼうとも、俺は君を信じ続ける。」 処刑された悪役令嬢――それがリリアナ・ヴァレンシュタインの最期だった。 しかし、神の気まぐれで人生をやり直すチャンスを得た彼女は、自らの罪を悔い、穏やかに生きる道を選ぶ。修道女として婚約を解消する未来を望んだはずが、彼女の変化を見た周囲は「何が彼女をそこまで追い詰めたのか」と深く誤解し、過保護と溺愛を隠さなくなっていく。 「俺が守る。君が守りたいものすべてを、俺も守る。」 そんな中、婚約者のルシアン殿下もまた彼女を見守り続ける。冷静沈着な王太子だった彼は、いつしか彼女のために剣を振るい、共に未来を築きたいと願うようになっていた。 やがてリリアナは、王国を揺るがす陰謀に巻き込まれながらも、それを乗り越える力を得る。そして最後に殿下から告げられた言葉――。 「リリアナ、俺と結婚してくれ。」 「わたくしでよろしければ、喜んでお受けします。」 繰り返される困難を経て、彼女が辿り着いたのは溺愛たっぷりのハッピーエンドだった。

茜川の柿の木後日譚――姉の夢、僕の願い

永倉圭夏
ライト文芸
「茜川の柿の木――姉と僕の日常、祈りの日々」の後日譚 姉の病を治すため医学生になった弟、優斗のアパートに、市役所の会計年度職員となった姉、愛未(まなみ)が転がり込んで共同生活を始めることになった。 そこでの姉弟の愛おしい日々。それらを通して姉弟は次第に強い繋がりを自覚するようになる。 しかし平和な日々は長く続かず、姉の病状が次第に悪化していく。 登場人物 ・早坂優斗:本作の主人公。彩寧(あやね)というれっきとした彼女がいながら、姉の魅力に惹きつけられ苦悩する。 ・早坂愛未(まなみ):優斗の姉。優斗のことをゆーくんと呼び、からかい、命令し、挑発する。が、肝心なところでは優斗に依存してべったりな面も見せる。 ・伊野彩寧(あやね):優斗の彼女。中一の初夏に告白してフラれて以来の仲。優斗と愛未が互いに極度のブラコンとシスコンであることを早くから見抜いていた。にもかかわらず、常に優斗から離れることもなくそばにい続けた。今は優斗と同じ医大に通学。 ・樋口将司(まさし)愛未が突然連れてきた婚約者。丸顔に落ち窪んだ眼、あばた面と外見は冴えない。実直で誠実なだけが取り柄。しかもその婚約が訳ありで…… 彼を巡り自体はますます混乱していく。

キスで終わる物語

阿波野治
ライト文芸
国木田陽奈子はふとした偶然から、裕福な家庭の少女・小柳真綾と知り合い、小柳家でメイドとして住み込みで働くことになった。厳格なメイド長の琴音や、無口で無愛想なルームメイトの華菜などに囲まれて、戸惑いながらも新生活を送る。そんなある日、陽奈子は何者かから不可解な悪意を向けられ、その人物との対決を余儀なくされる。

一条春都の料理帖

藤里 侑
ライト文芸
一条春都の楽しみは、日々の食事である。自分の食べたいものを作り食べることが、彼にとっての幸せであった。時にはありあわせのもので済ませたり、誰かのために料理を作ってみたり。 今日も理想の食事を追い求め、彼の腹は鳴るのだった。 **** いつも読んでいただいてありがとうございます。 とても励みになっています。これからもよろしくお願いします。

猫のランチョンマット

七瀬美織
ライト文芸
 主人公が、個性的な上級生たちや身勝手な大人たちに振り回されながら、世界を広げて成長していく、猫と日常のお話です。榊原彩奈は私立八木橋高校の一年生。家庭の事情で猫と一人暮らし。本人は、平穏な日々を過ごしてるつもりなのだけど……。

出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人
恋愛
「なぜ助けを求めないんだ?」 あの時あなたはそう私に問いかけてきた。 「あなたの手を取ったらあなたは幸せになれますか、嬉しいですか?」 私がそう問いかけたらあなたは手を差し伸べくれた。 「お前は充分苦しんだ。もう充分だ。」 私をまっすぐに見てくれるあなた、帰る場所を私に与えてくれたあなたについて行きたい、その時、そう心から思えた。 ささやかな毎日を与えてくれるあなたのおかげでようやく私は笑うことも冗談も言えるようになったのに、それなのに…私を突き放したひとがなぜ今更私に会いに来るのですか…? 出てくる登場人物は皆、不器用ですが一生懸命生きてります(汗) 完璧な空想上(ファンタジーよりの)話を書いてみたくて投稿しております。 宜しければご覧くださいませ。

君がいる奇跡

トウリン
ライト文芸
虐待されていた過去を持つ笹本凌《ささもと りょう》は、十四の時に家を飛び出した。以来、相棒の虎徹《こてつ》と組んで、賭け試合でその日その日の糧を得る拠り所のない日々を生きていたのだ。ある日彼は深夜に立ち寄ったコンビニで、脚立から落ちてきた店員を受け止める。彼女は藤野響《ふじの ひびき》。それが二人の始まりだった。出逢い、そして想い合うようになった凌と響。支え、護るべき相手を見つけた凌は、やがて自らの生き方を変えようと決意する。次第につながりを深めていく二人。だが、そんな穏やかで幸せな日々を過ごす彼らの間に差し込んだ影は、固く封じ込められていた響の過去だった。探し、求めたその先に見えるのは、果たして――? ※他サイトとの重複投稿です。

処理中です...