上 下
90 / 262
2 閉ざした気持ち。言えなかった言葉。叶わぬ想い。止まった時間が動き出すまで

28

しおりを挟む


車は懐かしい街並みを走って行く。

「隼人…おまえ今天国から話しかけてるの? それともここに来てるの?」

シーナ君がナビの隼人に恐る恐る聞いた。

「…俺? 俺もなんかよくわかんねーんだけど…、多分あの世なのかなぁ…ここ。おまえらの事は見えてるよ。」

「さっきさ、生前の意識に同調するのキツイとか言ってたでしょ? それってどういうことなの?」

私はとっさに隼人に聞いた。

「何て言うか…死んだすぐ後は死ぬ前とほとんど変わらなくて、俺ほんとに死んじゃったのかなって思ってたんだけど…どのくらいだろ? しばらくたってから、自分と他の区別があまり無くなってきて…夢見ないで眠ってる状態って感じっていうか…ただ漂ってたっていうか…。俺も自分ってものを意識しなくなってたんだけど、そしたら突然電波みたいなのが飛んできて、そいつが言うんだよ。「矢野サン! 矢野隼人サン! 前世デ ヤリ残シタコトガアルデショ! チャント 終ラセナイト 次ノステージヘ行ケマセンヨ!」って。ああ、そうだ、俺は矢野隼人だ! 来佳とシーナに言わなくちゃって。」

「…そうだったんだ。」

「だけど、来てよかったよ。次に行けないのは俺だけじゃない。おまえたちもだからな!」

「…隼人…」

私たち三人は堰を切るようにお互いの事を話し始めた。

夢中になって話していたら、車は目的地へ到着した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神子創造逸文外典

夢野なつ
ライト文芸
「日本国の崩壊」を目指し、二人の復讐者は列島を北上する。 迎え撃つのは神子。 異能を持ち、国に「補導」され管理下に置かれる哀れな若者たち。 それぞれの想いが錯綜する中で、神子と復讐者は刃を交える。 その果てにあるものは、崩壊か救済か――。

ネットで小説ですか?

のーまじん
ライト文芸
3章 ネット小説でお金儲けは無理だし、雄二郎は仕事始めたし書いてなかったが、 結局、名古屋の旅行は行けてない。 そんな 中、雄二郎が還暦を過ぎていたことが判明する。 記念も込めて小説に再び挑戦しようと考える。 今度は、人気の異世界もので。 しかし、書くとなると、そう簡単でもなく

女装男子は百合乙女の夢を見るか? ✿【男の娘の女子校生活】学園一の美少女に付きまとわれて幼なじみの貞操が危なくなった。

千石杏香
ライト文芸
✿【好きな人が百合なら女の子になるしかない】 男子中学生・上原一冴(うえはら・かずさ)は陰キャでボッチだ。ある日のこと、学園一の美少女・鈴宮蘭(すずみや・らん)が女子とキスしているところを目撃する。蘭は同性愛者なのか――。こっそりと妹の制服を借りて始めた女装。鏡に映った自分は女子そのものだった。しかし、幼なじみ・東條菊花(とうじょう・きっか)に現場を取り押さえられる。 菊花に嵌められた一冴は、中学卒業後に女子校へ進学することが決まる。三年間、女子高生の「いちご」として生活し、女子寮で暮らさなければならない。 「女が女を好きになるはずがない」 女子しかいない学校で、男子だとバレていないなら、一冴は誰にも盗られない――そんな思惑を巡らせる菊花。 しかし女子寮には、「いちご」の正体が一冴だと知らない蘭がいた。それこそが修羅場の始まりだった。

一条春都の料理帖

藤里 侑
ライト文芸
一条春都の楽しみは、日々の食事である。自分の食べたいものを作り食べることが、彼にとっての幸せであった。時にはありあわせのもので済ませたり、誰かのために料理を作ってみたり。 今日も理想の食事を追い求め、彼の腹は鳴るのだった。 **** いつも読んでいただいてありがとうございます。 とても励みになっています。これからもよろしくお願いします。

桜吹雪と泡沫の君

叶けい
BL
4月から新社会人として働き始めた名木透人は、高校時代から付き合っている年上の高校教師、宮城慶一と同棲して5年目。すっかりお互いが空気の様な存在で、恋人同士としてのときめきはなくなっていた。 慣れない会社勤めでてんてこ舞いになっている透人に、会社の先輩・渡辺裕斗が合コン参加を持ちかける。断り切れず合コンに出席した透人。そこで知り合った、桜色の髪の青年・桃瀬朔也と運命的な恋に落ちる。 だが朔也は、心臓に重い病気を抱えていた。

猫スタ募集中!(=^・・^=)

五十鈴りく
ライト文芸
僕には動物と話せるという特技がある。この特技をいかして、猫カフェをオープンすることにした。というわけで、一緒に働いてくれる猫スタッフを募集すると、噂を聞きつけた猫たちが僕のもとにやってくる。僕はそんな猫たちからここへ来た経緯を聞くのだけれど―― ※小説家になろう様にも掲載させて頂いております。

マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム

下城米雪
ライト文芸
 彼女は高校時代の失敗を機に十年も引きこもり続けた。  親にも見捨てられ、唯一の味方は、実の兄だけだった。  ある日、彼女は決意する。  兄を安心させるため、自分はもう大丈夫だよと伝えるため、Vtuberとして百万人のファンを集める。  強くなった後で新しい挑戦をすることが「強くてニューゲーム」なら、これは真逆の物語。これから始まるのは、逃げて逃げて逃げ続けた彼女の全く新しい挑戦──  マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム。

七絃灌頂血脉──琴の琴ものがたり

国香
歴史・時代
これは小説ではない。物語である。 平安時代。 雅びで勇ましく、美しくおぞましい物語。 宿命の恋。 陰謀、呪い、戦、愛憎。 幻の楽器・七絃琴(古琴)。 秘曲『広陵散』に誓う復讐。 運命によって、何があっても生きなければならない、それが宿命でもある人々。決して死ぬことが許されない男…… 平安時代の雅と呪、貴族と武士の、楽器をめぐる物語。 ───────────── 七絃琴は現代の日本人には馴染みのない楽器かもしれません。 平安時代、貴族達に演奏され、『源氏物語』にも登場します。しかし、平安時代後期、何故か滅んでしまいました。 いったい何があったのでしょうか? タイトルは「しちげんかんじょうけちみゃく」と読みます。

処理中です...