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しおりを挟む「先生! 安藤先生!」
「あ、ごめん、どこからだっけ?」
安藤はノエルに呼ばれて我に返った。
「先生、大丈夫ですか? なんだか上の空ですけど…。」
安藤は何か考え込んでいるようだった。
「先生、何か悩みでもあるんですか?」
ノエルは安藤を覗き込むように聞いた。
「あのさー、俺って、どう見える?」
「どうって…、例えば女の子から見てとかですか?」
「うん。」
「…えっと~…。」
ノエルは言いにくそうにしていた。
「だから~、君が俺のことタイプじゃないの、もう十分わかってますから! 一般的な意見を言って!」
ノエルはそれを聞いて気が楽になった。
「先生は、モテるんじゃないですか? カッコイイし、背も高いし。」
「だよなー!」
安藤が急にノエルの方に向き直って大きな声で言ったので、ノエルは椅子ごと後ずさりした。
「…先生、もしかして…、旭ちゃんと何かあったんですか?」
ノエルはニヤニヤしながら安藤の顔を見た。
「…旭?」
「うんうん!」
「アイツめーーーーー! 許さん! 絶対許さん!」
安藤は立ち上がって拳を握り締めた。
「この俺がさ、わざわざアイツの高校まで行って門の前で待っててやったっつーのになかなか出て来ないで、用の無い類がやってきて学園のアイドルに俺のことうちの運転手だなんて紹介しやがって、そうこうしてたら旭が出てきたけど俺のこと完全スルーで、しょうがなく後付けたら助手席に乗ってきてロワイヤルホテルまで送ってけだのほざいて、送って行ってやったら超絶イケメンが出てきやがって旭はそいつに抱きついて、もー俺なんか意味不明の怒りが爆発しそうになったら、そいつが自分は旭の兄だとか言いやがって、安心したのもつかの間、俺の大学より遥かにレベルが上の海外の大学に行ってやがって、俺の事見下してんだろ! と思いきや、むっちゃ思いやりのあるやつで、またまた意味不明の怒りが湧いてきて、その後旭を家まで送って行って、なんとなく別れがたい気持ちになってたところにアイツは俺に(― 自分が大嫌いなあなたへ なりたい自分になる方法 ハンドブック ―)なんつーなんともバカにした本をくれたんだっ! ハァハァハァ…。」
安藤は肩を震わせてゼイゼイ言っていた。
ノエルはそんな安藤を、哀れみを込めた目でじっと見守りながら聞いていた。
「先生…、今日はこの辺でお勉強終わりにしましょうか?」
「…、そだな…。」
ノエルは温かいお茶を持ってきた。
二人は首をうなだれてお茶をすすった。
「でも、最近の先生、私は好きですよ。」
ノエルはニッコリ微笑んだ。
「…俺は自分が嫌になっていくばかりだよ…。」
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