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第17話 レーラさんは思わせ振りな人
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「魔王ちゃ~~ん!!」
食事を終えて食器を洗い、それぞれの部屋に戻ってくつろいでいると、隣の部屋からレーラさんの声が聞こえる。
その直前には何やら魔法の気配がしたから少し心配······いや、かなり心配だ。
レーラさんは真面目な人だけど、魔王ちゃんのことになると人が変わったようにデレデレになるから、その状態で部屋に突っ込んだとなると魔王ちゃんの貞操が······
「まぁ、大丈夫でしょう」
「大丈夫なわけがあるかーー!! シルバー、今すぐこやつを取り押さえむぅ」
バタバタと隣の部屋で大きな音が聞こえる。
けれど聞こえない振りをする。
「あーきょうのよるはしずかでゆっくりねむれそうだ」(棒読み)
「知らぬかもしれぬが、わしは心が読めるのじゃ! だからお主達の考えは筒抜けなのだ! レーラは服を脱がさない! シルバーはとっとと助けろ!」
切羽詰まった様子の魔王ちゃんの懇願にも似た願いを受け入れるのは簡単で、部屋を出て隣の魔王ちゃんの部屋に入ればいい。
普段の僕なら下心100いや、10%くらいの気持ちで向かうのだけど、今日は先客がいるからまた今度の楽しみにしておく。
部屋を出て魔王ちゃんの部屋の方ではなく、逆の階段の方を向き、2つ隣の部屋の前で止まってノックをする。
コンコン
「シルバーです。入ってもいいですか?」
「ああ」
部屋の主は短く返事をする。
許可を貰えたということだろう。
レーラさんと魔王ちゃんが一緒にいる今が僕たちにとって絶好のチャンスだから、拒否されるわけがないのだけど、礼儀は守らなくてはいけない。
「今なら邪魔が入ることはありません。例の話の続きをしましょう」
「そうだな。······なぁ、シルバー」
「······はい」
少しの間の沈黙。
嵐の前のような静けさは、これから起こることの裏返しのように思えた。
「レーラってエロくないか? あいつの身体だってそうだし、それによく勘違いさせるような発言をするしさ。俺だって男なんだぞ? 中途半端に期待させられると困るんだよな」
「そうでよね! 本当にレーラさんってなんであんなに勘違いさせるような発言をするんですかね? 今日だって、カップを見せてくれるって言ったからめちゃくちゃ期待したのに、見せてくれたのは優勝カップですよ? しかもわざとじゃなくて素でやってるんですよ?」
「ああ、そうだよな。あいつは天然だからたちが悪いってものだよ。この前なんてな、レーラがおにぎりを作ってくれたんだよ。それでな、塩を付けて食べたはずなのに甘いんだぜ? で、確認してみたら塩と砂糖を間違えたって言うんだぞ。どこの残念料理美少女だよ」
「あれ? レーラさんって家事ができるイメージだったんですけど」
「料理以外はな。それと、他にもな······」
つもりに積もったレーラさんに対する愚痴というか、身の上話を長々と語り合った。
主にシオンさんの愚痴だったけど。
そうこうしている内に夜も更けていき、日付も変わった。
僕たちはその間に魔王ちゃんの部屋で何があったのかは知らない。
─────────────────────
【シルバーとシオンが語り合っていた頃】
魔王ちゃんの部屋では魔王ちゃんが襲われていた。
「バインド!」
魔王ちゃんが魔法を唱えると襲撃者の体を鎖が縛り上げた。
魔力を込めれば込めるほど、その耐久性は上昇し、常人を越えた魔力量を誇る魔王ちゃんの全力のバインドは簡単に解けるはずがなかった。
「えい!」
レーラさんの軽い声と共に鎖が砕け散る。
まるで少し伸びをしたかのような動作で軽々と拘束を逃れてしまった。
「なんでお主はわしの魔法か効かないのじゃ~~」
魔王ちゃんの嘆きもむなしく、じりじりと距離を詰められていく。
「ほらほら~、悪いようにはしないからじっとして~」
涙を浮かべて壁に追い詰められた魔王ちゃんは心の中で、自分なんかよりもよっぽどレーラの方が魔王みたいであると思っていた。
そこからはすぐだった。
素早い動きで魔王ちゃんを捕まえると、目にも追えぬ速さで服を脱がし、どこから持ってきたのかフリフリのいわゆるゴスロリを着させる。
「きゃ~、魔王ちゃんかわいい~。結婚して!」
「断る!」
魔王ちゃんの姿を確認するために少し距離を空けたのをチャンスとみると、即座にアクセルを自分にかけて、一瞬で扉にたどり着きドアノブに手をかける。
「いいのかな?」
レーラはその場から一歩も動かずに何やら意味深な言葉を発する。
そのまま出ていけばいいというのに、聞かなければいけないと直感が言っていた。
「そのまま部屋を出て行ったらどうなると思う?」
一刻も早く部屋を脱出したい魔王ちゃんには言葉の意味が分からなかった。
「シルバーちゃんかシオン、もしくは他の町の人に見つかるよね。そうしたらさ『この子はなんて痛い格好をしているんだろう』ってなるんだよ」
「なっ!?」
体に衝撃が走ったようだった。
すでに部屋を脱出することで頭がいっぱいで正常な思考ができなくなっている魔王ちゃんは、このがばがばな考えを一切疑わずに受け入れてしまった。
シルバーに変人と思われるのが嫌だったのだろう。
しかし、この場に他の人が居れば、もう変なやつに思われている、と教えてあげたかもしれない。
でも、残念なことにここにはレーラさんしかいなかった。
「か、返してくれ。わしの服を返すのじゃ~~」
「いいよ」
あっけからんと言ったレーラだが、その顔は己の欲望に満ちた邪な顔をしていた。
その顔の意味はすぐに分かることとなった。
食事を終えて食器を洗い、それぞれの部屋に戻ってくつろいでいると、隣の部屋からレーラさんの声が聞こえる。
その直前には何やら魔法の気配がしたから少し心配······いや、かなり心配だ。
レーラさんは真面目な人だけど、魔王ちゃんのことになると人が変わったようにデレデレになるから、その状態で部屋に突っ込んだとなると魔王ちゃんの貞操が······
「まぁ、大丈夫でしょう」
「大丈夫なわけがあるかーー!! シルバー、今すぐこやつを取り押さえむぅ」
バタバタと隣の部屋で大きな音が聞こえる。
けれど聞こえない振りをする。
「あーきょうのよるはしずかでゆっくりねむれそうだ」(棒読み)
「知らぬかもしれぬが、わしは心が読めるのじゃ! だからお主達の考えは筒抜けなのだ! レーラは服を脱がさない! シルバーはとっとと助けろ!」
切羽詰まった様子の魔王ちゃんの懇願にも似た願いを受け入れるのは簡単で、部屋を出て隣の魔王ちゃんの部屋に入ればいい。
普段の僕なら下心100いや、10%くらいの気持ちで向かうのだけど、今日は先客がいるからまた今度の楽しみにしておく。
部屋を出て魔王ちゃんの部屋の方ではなく、逆の階段の方を向き、2つ隣の部屋の前で止まってノックをする。
コンコン
「シルバーです。入ってもいいですか?」
「ああ」
部屋の主は短く返事をする。
許可を貰えたということだろう。
レーラさんと魔王ちゃんが一緒にいる今が僕たちにとって絶好のチャンスだから、拒否されるわけがないのだけど、礼儀は守らなくてはいけない。
「今なら邪魔が入ることはありません。例の話の続きをしましょう」
「そうだな。······なぁ、シルバー」
「······はい」
少しの間の沈黙。
嵐の前のような静けさは、これから起こることの裏返しのように思えた。
「レーラってエロくないか? あいつの身体だってそうだし、それによく勘違いさせるような発言をするしさ。俺だって男なんだぞ? 中途半端に期待させられると困るんだよな」
「そうでよね! 本当にレーラさんってなんであんなに勘違いさせるような発言をするんですかね? 今日だって、カップを見せてくれるって言ったからめちゃくちゃ期待したのに、見せてくれたのは優勝カップですよ? しかもわざとじゃなくて素でやってるんですよ?」
「ああ、そうだよな。あいつは天然だからたちが悪いってものだよ。この前なんてな、レーラがおにぎりを作ってくれたんだよ。それでな、塩を付けて食べたはずなのに甘いんだぜ? で、確認してみたら塩と砂糖を間違えたって言うんだぞ。どこの残念料理美少女だよ」
「あれ? レーラさんって家事ができるイメージだったんですけど」
「料理以外はな。それと、他にもな······」
つもりに積もったレーラさんに対する愚痴というか、身の上話を長々と語り合った。
主にシオンさんの愚痴だったけど。
そうこうしている内に夜も更けていき、日付も変わった。
僕たちはその間に魔王ちゃんの部屋で何があったのかは知らない。
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【シルバーとシオンが語り合っていた頃】
魔王ちゃんの部屋では魔王ちゃんが襲われていた。
「バインド!」
魔王ちゃんが魔法を唱えると襲撃者の体を鎖が縛り上げた。
魔力を込めれば込めるほど、その耐久性は上昇し、常人を越えた魔力量を誇る魔王ちゃんの全力のバインドは簡単に解けるはずがなかった。
「えい!」
レーラさんの軽い声と共に鎖が砕け散る。
まるで少し伸びをしたかのような動作で軽々と拘束を逃れてしまった。
「なんでお主はわしの魔法か効かないのじゃ~~」
魔王ちゃんの嘆きもむなしく、じりじりと距離を詰められていく。
「ほらほら~、悪いようにはしないからじっとして~」
涙を浮かべて壁に追い詰められた魔王ちゃんは心の中で、自分なんかよりもよっぽどレーラの方が魔王みたいであると思っていた。
そこからはすぐだった。
素早い動きで魔王ちゃんを捕まえると、目にも追えぬ速さで服を脱がし、どこから持ってきたのかフリフリのいわゆるゴスロリを着させる。
「きゃ~、魔王ちゃんかわいい~。結婚して!」
「断る!」
魔王ちゃんの姿を確認するために少し距離を空けたのをチャンスとみると、即座にアクセルを自分にかけて、一瞬で扉にたどり着きドアノブに手をかける。
「いいのかな?」
レーラはその場から一歩も動かずに何やら意味深な言葉を発する。
そのまま出ていけばいいというのに、聞かなければいけないと直感が言っていた。
「そのまま部屋を出て行ったらどうなると思う?」
一刻も早く部屋を脱出したい魔王ちゃんには言葉の意味が分からなかった。
「シルバーちゃんかシオン、もしくは他の町の人に見つかるよね。そうしたらさ『この子はなんて痛い格好をしているんだろう』ってなるんだよ」
「なっ!?」
体に衝撃が走ったようだった。
すでに部屋を脱出することで頭がいっぱいで正常な思考ができなくなっている魔王ちゃんは、このがばがばな考えを一切疑わずに受け入れてしまった。
シルバーに変人と思われるのが嫌だったのだろう。
しかし、この場に他の人が居れば、もう変なやつに思われている、と教えてあげたかもしれない。
でも、残念なことにここにはレーラさんしかいなかった。
「か、返してくれ。わしの服を返すのじゃ~~」
「いいよ」
あっけからんと言ったレーラだが、その顔は己の欲望に満ちた邪な顔をしていた。
その顔の意味はすぐに分かることとなった。
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