日本隔離(ジャパン・オブ・デッド)

のんよる

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21章 朱里ちゃんの章

隠し事

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もうすぐ気を違えた人を治す薬が出来る期待を持って、私達は、研究をしている場所を後にして、船に戻ろうとしていた。
私には一つ不安があった。
私と重屋は東京から逃げてきた。
何故逃げたか、色々実験されていたからだ。
特に私は気を違えた人に噛ませて色んな薬を打たれていた。
でも、今は普通。前まではいつか私も気を違えた人になってしまうと思っていた。
だけど、塁達と行動して、私は安心して、一緒にいられた。
例え、気を違えた人になっても、塁達なら私を倒してくれると思っていたからだ。
そして、今、気を違えた人を治す薬が出来そうだと思うと私は凄く嬉しかった。
こんな事、塁には言えないけど、私と重屋は皆に内緒にしていた。

塁が私に言ってきた。
もうすぐ船に着くね!こんな事聞くの無かったけど重屋君と朱里ちゃんはどっから一緒だったの?
私は答えた。
別々のグループに居て気付いたら合流していたかな。皆、居なくなってしまったけど。
塁が謝る。
ごめん。嫌な事思い出させてしまったね。
私は言う。
いいの、今は私は幸せだから。
そう話しをしているうちに船に辿り着いた。
船に辿り着くと、金木が言う。
凄いなー、こんな所でこんないい船で暮らしていたのか!
谷川さんも続けて言う。
本当に凄い!東京の暮らしなんかより豪華なんじゃないの?
船の中に入ると様子がおかしかった。
塁が先に帰っていたはずの加藤さんを呼びかける。
船に誰もいないようだった。
加藤さん達が乗って来た車もあるし、何かがおかしい。
塁はどんどん中に入ってしまう。
私が塁に言う。
なんか様子がおかしいよ。一旦外に出ましょう。
塁が頷くと奥の扉の隙間に何かが見えていた。
私と塁はドキドキしながら近付いて行くと、そこには、優香さんが横たわっていた。
優香さんはもう息が無かった。
私は言った。
やばいよ!皆、外に逃げて!
皆で一斉に外に向かって走り出した!
外に出ると加藤さんがいた。
加藤さんが塁に言う。
良かった。塁、中は危険よ!何か得体の知れないデカい奴がいるの。私が帰って来た時はいなかったのに、朝起きたら、優香さんをそいつが襲っていたの。
塁が他の人は無事なのか確認する。
木林が答える。
優香さんの子と村田さんは無事だ。一緒に近くに逃げ込んだからな!今は二人はそこにいる。
私が聞く。
重屋はどうしたの?
加藤さんが答える。
重屋君は体調が悪いって言ってて優香さんが看病していたの。だからもしかしたらもう…
福山君が話す。
船の中にいるのはデカい奴が一人なの?
木林が答える。
俺達が見たのは一人だったがわからない。
ただデカい奴に殴りかかっても、攻撃が効いている様子が無かったから、ヤバいと思って、咄嗟に外に逃げて来たんだ!
加藤さんが続けて言う。
研究している場所に戻ろうと思ったんだけど、行き違いになって、他の人たちが何も知らずに中に入ったら危険だと思って。
塁が言う。
加藤さん、木林さん、福山君、金木君、オレと五人で中に入ろう。
私が言う。
ちょっと待って私も中に入る。それに皆で中に入ってしまったらそのデカい奴が外にいたら谷川さんが危ない。
福山君が言う。
俺は、妻と一緒に外にいる。デカい奴が、俺の思っている奴なら、前に松野さんが倒していたけど、普通には太刀打ち出来ない。だから、絶対に無茶をしないで、中を確認したらすぐに外に出て来てくれ。
金木君が言う。
僕も、外にいるよ!戦う訳では無いのなら、外にも何人かいた方がいい。
塁と私は納得し、四人で船の中に入る。

船の中に入ると、塁が重屋を呼びかける。
でも、返事はない。
優香さんが横たわっていた部屋に辿り着いた。
中の様子を見ると、優香さんの胴体がちぎられていて、とても目を向けられる状況では無かった。
それでも、塁は優香さんの遺体を抱えて、一旦外に出ようとした。
船の扉の前に何かが立っていた。
デカい奴だった。
私はすぐに気付いた。あれは重屋だという事に。
加藤さんと木林がデカい奴に攻撃するが、全く効いていない。
塁が言う。
コイツはヤバいぞ!外にも出れない!
私達は追い込まれていた。
デカい奴が木林に向かって襲い掛かって来た。
木林が車に跳ねられたように吹っ飛んだ。
塁が木林を気にしながらも、一旦奥に逃げるんだと、皆に呼びかける。
奥の部屋に入ると、塁が優香さんの遺体を置いて、木林が無事か見に行くと言い出した。
私は、塁に話しをした。
あれは恐らく、重屋だと思う。
私達が東京にいた頃に実験されていた事、私も気を違えた人に噛まれている事、重屋は何か、別の薬を打ち続けられていた事を伝えた。
塁は驚いた顔をしたけど、私に大丈夫とだけ言って木林を助けに行った。

木林は必死に逃げ回っていた。
口から血を吐いている。
塁が後からデカい奴に殴り掛かる。
全く効いていない。
木林が言う。
塁、俺はそろそろダメだー、加藤さんと朱里ちゃんを連れて外に出ろ!俺が囮になっているうちに外に出るんだ!
塁は涙を流しながらまた奥に戻り、加藤さんと私に伝えた。
塁は優香さんを抱えて、船の扉に向かった。
木林が叫ぶ。
塁!親父さんによろしく頼むわー!最後までついていけずに申し訳ございません!って。
木林は最後まで明るく、そして、塁のお父さんに忠誠を誓っていた。
木林にとっては命に代えても塁を外に無事に出て貰うことがそれだった。
私達は無事に外に出られた。

私達は一旦、村田さんと優香さんの子供がいる場所に向かった。
皆で、何があったのか整理を始めた。
私は皆に聞かれた事に全て正直に話した。
隠し事をしていた事を謝る事しか出来なかった。
そして、谷川さんが怯え始め言った。
私もなんだかわからない薬を打ち続けられていた。私もデカい奴になってしまうの?
福山君が谷川さんをそっと寄せて言う。
大丈夫だ。松野さん達が必ず、治す薬を持って来てくれる。
私もとてつもなく不安に襲われた。
塁が言う。
今のオレ達では、あのデカい奴を倒す事が出来ない。パパが船に来るのを待つか、研究している場所にオレ達が戻るか、どちらかだ。
福山君が言う。
松野さんは、俺と一緒にデカい奴と戦ったが、最初苦戦していたけど、弱点がわかったと言って簡単に倒していた。弱点があるなら、俺達でも倒せるんじゃないか?
金木君が言う。
入れ違いで松野さん達が来たら、子供達がいるから、凄く危険だ。だから、この場を僕達が全員離れる訳には行かない。
皆、満場一致でここに残る事になった。

私はやっぱりあんな奴になりたくない。
塁、助けて。

21章終

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