日本隔離(ジャパン・オブ・デッド)

のんよる

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8章 リーダー歴の章

船での生活

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もうこんな世の中になってからどれくらいたっただろう。
一年はたっている。 
船での生活も慣れて、皆で仲良く暮らせている。
相変わらず明子さんは、田中君とは口も聴かないけど。
塁は、加藤さんにベッタリ、田中君と優香さんは本当の夫婦になったみたいに仲良くしている。
明子さんの子供達も、僕を慕って楽しく暮らしていた。
一つ気掛かりなのは、明子さん。
あんなに元気が良くて、誰よりも一番うるさかった人なのに、パパが居なくなってからは、あまり喋らなくなってしまった。
もちろん、僕と塁と子供達とは普通に楽しそうに喋るけど、皆で居る時は何か羨ましそうに、見つめている感じだった。

船での生活の流れはこうだ。
朝、塁か僕が魚釣りをする。
お昼前には、戻る。
優香さんが、船の中で野菜を育てている。
明子さんは、食事の用意をしてくれる。
加藤さんと田中君が、外に出て必要な物を取りに行ってくる。
毎日、田中君、加藤さん、塁、僕で順番に見回りをしている。
凄く安心で安全な生活だ。
でも明子さんはずっと船の中にしか居ない。
心配だ。
僕なら気がおかしくなりそうだ。
でも、明子さんは母親だから、子供達が心配で外に出れないのだろう。
立派な母親であり、ちゃんとした大人だ。
でも、大人しい明子さんはなんだか、可哀想な感じがする。
僕は、決めた。
明子さんを連れて、外に出て見よう。
皆に協力して貰って、一日くらいいつもと違う日にしてもいいだろう。

明子さんは外に出るのが怖いと言う。
前はパパが一緒だから喜んで外に出てたのを僕は知っている。
僕は、明子さんに言った。
明日、僕とデートして欲しい。
明子さんが頬を赤くし言った。
何言ってんのよー、子供達を連れて外に出るなんて出来ないよ。それに外は怖いの。
僕は言う。
子供達は、明日は加藤さんにお願いして、料理は、優香さんにお願いして、外では、僕が必ずパパの魂で明子さんを守り抜くから。
明子さんは、すっごく喜んでくれた。
翌日、僕は明子さんと外に出た。
田中君が心配だから俺も一緒に行くよと言ってついて来ようとした。
明子さんが、久しぶりに田中君に話した。
それだけは絶対にやめて。邪魔しないで。と怒った。
田中君は、優香さんに言われた。
本当にあんたって空気読めないね。馬鹿じゃないの?
田中君は、動じずに船に引き返した。

外に出ると、僕は覚えたての車の運転で、明子さんにデパートに連れて行こうと言った。
明子さんが微笑む。
前から加藤さんに、車の運転を教えてもらう為にデパートの駐車場に通っていた。
そのデパートは、小さいデパートだが、洋服屋さん、靴屋さん、子供達の為にも玩具屋さんがある。
ここに入りやすいように事前に中にいた気を違えた人達を倒しておいた。
だから、安全に買い物?を楽しもう。
デパートにつくと、明子さんは心配していた。
こんな所に、二人で入って大丈夫なのか。
大丈夫!僕とパパで何かあっても守るから。
中に入ってからは明子さんは大興奮。
洋服屋さんは何処?アクセサリーは何処?と子供のようにはしゃいでいた。
僕は言う。
今日はなんでも買っていいからね。
明子さんが笑って言った。
パパはケチだったのにね。
明子さんの笑顔を見ると僕は、凄く嬉しい。
洋服を大量に持って行き、アクセサリーを身につけては、どう?と見せてくる。
こんな世の中になってしまったのが嘘のように幸せだ。
一通り、物を持ってデパートを廻っていると、1000円カットがあった。
扉はしまっている。
明子さんが、歴髪が伸び切ってるから切ってあげると言う。
明子さんも髪がボサボサだったから、僕は言った。
じゃあ僕も、明子さんの髪をすいてあげる。
ここの道具を一式持って帰って、皆も切ってあげよう。
明子さんは、そんな僕を見てギュッと抱きしめてくれた。
お店のドアを無理矢理こじ開けて、二人で中に入った。
先ず、僕が椅子に座ろうとした時、気を違えた人が襲い掛かって来た。
中に閉じ込められていたのだ。
僕は、簡単に三人の気を違えた人をやっつけた。
明子さんは、ちょっと震えて居たが、歴と一緒なら安心ねといい。
また僕を、椅子に座らせた。
バリカンを使えないからかもみあげの部分からだいぶ上の方までカミソリで剃った、少し短くして、はい完成と言われた。
髪を結うゴムを渡されて、これで髪を結いなさい。と言う。
言われた通りにすると、明子さんは僕を見つめて、何も言わずに交代と言った。
僕は明子さんの髪をすいた。
ここの道具も一式持って僕は、玩具屋さんに向かった。
明子さんの子供達、優香さんの子供の為に、あと塁も何か欲しいかもと思って色々持っていった。

車に戻って明子さんに、次は何処に行きたい?と聞くと。
もう、今日は帰りましょうと言った。
僕は、なんで?つまらなかった?って聞き返した。
明子さんは言った。
ううん。凄く楽しかったし、嬉しかった。でも一日でそんな思いをしたら、明日からが嫌になっちゃう。だからまた、私を外に連れ出して。
僕は、うなづいて笑った。
帰りの車の中、明子さんはずっと僕を見つめていた。
すると、明子さんが言った。
その髪型、前に歴のパパがその髪型だったんだよ。
本当に、魂が入っているようにパパとそっくり。
いい?歴は私と子供達をずっと、ずっと守ってね。
僕は答えた。
当たり前だよ。

船に戻って、僕は、真っ先に、明子さんの子供達の元に行って、玩具を渡した。
皆凄く喜んだ。
明子さんの長男が言った。
歴覚えてたんだ。この車の玩具。前に欲しいって言ってたのを。
僕は、答えた。
そうだよ。今度また明子さんを連れて外に行く時は、もっと持って来てあげるね。
明子さんの長男はうなづいて喜んだ。
明子さんは、子供達を連れて、髪を切った。
長男の髪型が僕と同じだった。
ちょっと嬉しかった。
僕は、塁に持って来た玩具を渡した。
塁はニッコリして、皆に見せてくる。と言った。
僕が、塁に持って来た玩具は変装グッズだった。
その日の夜は、皆でパーティのように楽しんだ。
明子さんが夜田中君に言った。
私はあんたが嫌いだし、信用もしてない。だけど彼の親友だから、ここにいる事は許す。
でも、私と子供達、歴と塁になんか変な事をしたら、絶対に許さない。その時は殺してやる。
田中君は、怯えながらわかったとうなづいた。

こうして、またいつもの船の生活が戻って来た。
一つ変わったのは、明子さんがよく喋るようになった。
田中君に対しても、文句ばかりだが、笑って話しをしていた。
この生活がいつまでも続けばと心から思った。

8章終
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